一夜目5
「一緒に?」
「あ、あぁ……怖いんだよ……こんな……」
言いたい事は解る。
夢の中だろうが人と仮面の獲り合い……殺し合いなんか誰だって厭なはずだ。それが実在しない相手でも。
しかし。
「ルールは覚えているだろ?」
「『協力するとペナルティ』だったよな?でもペナルティってなんだよ?」
そう言ってユウイチは自分のペンダントを持ち上げた。
「『0』だぜ?0点。まだ仮面を手に入れてない。あんただって」
オレのペンダントの『0』を指差す。
「ペナルティなんて……要は減点なんだろ?0は0のまんまじゃないか。マイナスが付くのかよ」
「まぁ、確かにマイナスが付いたからってそれがどうした、って話だが」
自分で自分の仮面を外すのは躊躇われるが、それ以外の『ルール』は、はっきり言って無意味なものだ。
点数を集められなかったからといって、この夢が覚めない訳じゃないだろうし、逆に謂えば集めたからなんだという話。
夢の中で賞品でも貰うのか?意味の無い話だ。
だが、これはオレの夢で、このユウイチという男は単なる登場人物。実在しない男だ。
行動を共にするメリットはあるのか?
「そうだな。少しの間なら」
「ホントか!?助かる!」
ユウイチは目に見えて安堵した様だった。
メリットがあるとすれば、今後襲ってくるかもしれない相手に二人で対処出来るという事。
いざとなれば……
「取り敢えず、少し歩こう。あっちから来たんだな?」
「あ、あぁ」
「じゃあ、こっちだ」
オレは廊下を戻り、T字路から先へ進む。後ろからユウイチが怖々ついて来る。
「……先を歩けよ」
「冗談だろ!?俺は明かり持って無いんだぞ」
ユウイチは明かりになるものを持っていなかった。先を歩かせれば何か急な事が起きた時に対処しやすいと思ったのだが。
オレは手近な扉に手を掛けた。
「そ、そこ、入るのか?」
「何か使えるものがあるかも知れないからな。明かりがあればいいんだが」
扉の向こうは洋間になっていた。西洋の邸宅なんかにある書斎といった風情だ。
棚に並べられた本にも、書き物机にも埃が溜まっている。床に敷かれた絨毯も、ずぶずぶとした感触を足に伝えている。
「ランプがある」
時代がかったランプが机に置かれていた。
「火、あるのか?」
「どうだろうな……あった」
引き出しの中にマッチがあった。灰皿とパイプが共にしまわれている。
マッチを何本か駄目にしながらランプに火を点した。
「ほら」
「あ、あぁ」
ユウイチにランプを渡す。
……これでコイツを前に歩かせられそうだ。
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