一夜目4
男は自分の指、そこに付いた粉と目の前の粉の山を交互に見比べた。
仮面に覆われた奴の顔色は判らない。ただその仕草から信じられないものを見たと感じているのが解る。
それはオレも同じだ。
気持ちを整えようとしたのだろう、奴が溜め息をつく。
人型にわだかまった粉の山が、それだけの事で崩れてしまう。
「ひっ!」
驚いた男が尻餅をつく。
「厭な、夢だな」
「ゆ、夢?これがホントに夢か?こんな……リアルな」
「現実にこんな事あってたまるか」
慌てる男に、いや自分に言い聞かせる様に言った。
そうだ。
現実にあってたまるか、人が死んで……粉になるなんて。
妙にリアルなところがあるから、夢か現実か曖昧になっている。感覚がおかしくなっているだけだ。
だいたい、コイツだってオレの夢。ただの登場人物に過ぎない。
尻餅をついた男の胸にペンダントが揺れる。
「……そのペンダント、数字は変わったか?」
「え?……いや『0』のまんまだ」
『仮面一枚につき1点です』
本田あさみとかいう娘は、自分で仮面を外した。
その場合、点数にはならないって事か?あくまでも自分の手で相手から仮面を剥ぎ獲れ、と?
そして剥ぎ獲れば……本田あさみの様になる。
いや、自分が剥ぎ獲られれば、と考えるべきなのか。
「なんでこの娘は仮面を外したんだろうな?」
「さ、さぁ。『アサミン』って解れば味方が増えると思ったんじゃ……」
アサミン?あぁ、仇名か。
確かにアイドルと解れば助けてくれる奴がいるかもしれない。仮面が邪魔で外した、か。
(……いや、これ夢だろ。現にオレは本田あさみなんて知らないし)
夢は起きている時に知覚した事を整理する為にある。
と、聞いた事はある。
ではなんで『本田あさみ』なんて知らない名前が出てくるのか、見た事の無い女が出てくるのか。
ゴチャゴチャで雑多な記憶を、脳が練り合わせているからなのだろうか。
「あんた、名前は?俺はユウイチ」
男は立ち上がり尻を叩いて言う。
「タクジだ」
夢の登場人物に自己紹介もなんだが、礼儀は必要だろう。お互い……今殺し合いをする気にもなれない。
「な……なぁ、あんた。タクジさん、少し一緒にいないか?」
ユウイチはおずおずとオレにそう提案をした。
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