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ムコ  作者: CGF
3/29

一夜目3


しゃがみ込んだ男は声を上げた。



「待て!待ってくれ、俺じゃない!」





『俺じゃない』


どういう事だ?


奴の前に倒れているのは女らしい。


パッと見た印象では奴がこの女を……




……違うという事か?




オレは慎重に男の許へ近付く。


奴はオレと同じ様にツルリとした仮面を被っていた。手には小振りの斧、薪を割るのに使う様な斧を握っている。


見たところ、倒れた女からは血が出ている様子は無い。



「アンタがやった訳じゃ無い、って事か?」


「あ、あぁ……俺じゃない。俺が来た時にはこんなだった」



濡れ衣を着せられずに済んだせいか、男は息を吐いた。


女は絶命している。


夢の中で絶命だの、弁解だの……妙に芸が細かい。



女は仮面を被ってはいなかった。呆気にとられた様な表情。


彼女のものらしい仮面は、その右手が握っている。丁度、顎の部分を摘まんでいた。



自分の仮面、その顎に指を添えてみる。なるほど、このまま上にずらせば仮面は簡単に外れるだろう。



「自分で仮面を外した……」


「みたいだろ?」






『自分の仮面を外してはいけません』





ルールの最初に書いてあった。



「仮面を外すと……まさか」


「……こうなるのかよ!?」



外傷はどこにも無い。


思わず自分の鉈を見る。仮面を集めるって事は……



「なぁ、この……本田あさみじゃないか?」



女の素顔をまじまじと見ながら男が呟いた。



「……誰だ?知り合いか?」


「知らないのかよ?KGB84だよ、入ったばかりで一気に人気が出た」



あぁ、アイドル集団の。



「ファンか?」


「いや知ってるだけだけどさ」



まぁ、夢の中の話だ。オレはアイドルには疎いし、目が覚めたら実在はしていないんだろう。



「仮面、獲らないのか?」


「俺が?」


「アンタが先に見付けたんだろ」



オレが促すと男は恐る恐る手を伸ばし、仮面に触れた。



「あ?」



奴の指が触れた途端。




仮面が……いや、本田あさみという女が粉の様に崩れた。







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