四夜目5
壁から離れ、椅子に腰掛ける。
「なぁ、これってルールが変更されたって事なのか?」
「どうだろうな。オレ達に当てはまらなくなったのは確かだが……」
「……他の人は今のルール、変更されてないかもしれないんですか?」
「あぁ。オレ達の目には見えなくなっただけなのかもな」
『協力すると不快感が累積』
気が付いていない者ならまだ有効だろう。
この夢の主催者は、何故かは解らないが殺し合いをさせたがっている。不快感が積み重なれば殺意にまで発展するのを、オレ達は実際に見ている。
ユウイチがカウンターを見ながら言った。
「あと30分くらいか……考えてみれば最初はアレにもビビッたよな?制限時間かと思ったから」
「制限時間じゃ無いんですか?」
「あぁ。ユミちゃん、アレは目が覚めるまでの時間なんだよ」
ユウイチの説明に、ユミはそれでも慎重に口を開く。
「でも、ああして減っていくのを見ていると……なんか焦りますね」
確かに。
覚醒夢を視続ける事による寝不足感。
協力する事で累積される不快感。
更にカウンターの減りを見せられる焦燥感……か。
「この夢の主催者は、なんともいい性格をしているな」
「まったくだぜ。殺し合いをさせてるのも案外自分の手を汚したくないからじゃね?」
「お褒めに与り恐縮ですわ」
オレ達は三人同時に振り向いた。
オレ達以外誰もいなかったはずの部屋。
その奥に足を組んで座る人影……
オレの懐中電灯がその人物を照らす。
「眩しいわね」
女の声がそう言うと、部屋が明かりをおびた。ほんの少しだが。
「ぅ、うぇっ!?」
「ひっ!?」
「な!?」
思わず声が出た。
いつの間にか現れたその女の顔……
仮面を被らないその顔は歪んでいた。
いや、歪み続けていた!
目や鼻、口が異様に大きくなったり点の様に縮んだり……上下左右に顔の上を滑っている。
「き、キモッ!」
「なななにアレ!?」
「……お、お前が、主催者……?」
オレの問いを聞き、ぐちゃぐちゃに動く顔のパーツが、それでも微笑んだ様に見える。
「主催者……主催者ね、そういう呼び方でもいいわ」
長い黒髪を軽く掻き上げて、組んだ足を替える。
(スカしてやがる)
最初のショックから抜けると、女のわざとらしい仕草が鼻についた。
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