四夜目4
オレはルールの書かれてある壁から目が離せなくなった。
時間によって……
ペナルティー……
累積……
「まさか……」
思わず口にした言葉に、ユウイチが反応した。
「タクジ?」
「ユウイチ……正直に答えてくれ。オレの事を嫌っているだろう?」
「な!?」
「いつからだ?」
オレから目をそらし、ユウイチは辺りをキョロキョロと見回した。
「オレから先に言おうか、お前の事は最初の頃イラつくだけだったが、日を追う毎に腹立たしさが増してきた」
「……」
「昨夜、睡眠導入剤を飲んでそのイラただしさが少し治まった。寝不足が解消されたせいかと思ったんだが」
オレの話が進むにつれ、ユウイチはオレから目をそらせなくなった。
「……覚えているだろう?大喧嘩していた二人組」
「男が女をぶっ殺して自分も死んだあれか?」
「あぁ……おかしいと思っただろ?お前も」
ユウイチは両手を組み、椅子から前のめりになる。
「そりゃあ……あんな事になるなんてよ」
「オレは……もうユミに対しても軽くイラついている」
「え!?私?」
いきなり自分の事を言われて驚くユミ。
……そして、ユウイチの仕草からも、驚きが見てとれた。
やはり、オレと同じ様に感じていたか。
「このルール」
オレは壁を拳で軽く叩いてみせる。
「累積するのは、協力者に対する不快感……憎しみじゃないのか?」
「な!?」「え!?」
二人から同時に声が出る。
そう、極端な話、『ムコ』にいる全員が協力し合えば、『ムコ』は破綻する。
化け物蜘蛛の様な協力なんか出来無い相手はいるだろう。
しかしソイツらだけを倒す様にすれば、人間同士殺し合いをする必要は無くなる。その分時間がかかるとしても。
「この夢、『ムコ』とかいう夢は……誰かが創った。オレはそう思う。そしてソイツは」
「俺達に協力なんかして欲しくない……?」
「あぁ!だからお互い不快感が『累積』されるんだ」
……まったく。よく出来た夢だ。
最初読んだ時、穴だらけだと思ったが。
「二人とも、起きたら睡眠導入剤を手に入れた方がいい。多少は不快感が解消される」
オレがそう言った時。
ルールの四番目が、ぼやける様に消えていった。
「文字が消えた!?」
「な、なんで?」
「……意識されたら、対処方法が判った時点で、意味が無くなるルールだからだろう」
えげつない。
オレは壁を、四番目のルールが消えたところを睨みながら。
やはり『ムコ』には主催者が居る、と実感した。
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