四夜目2
「そこの部屋に入ろう。少し話がしたい」
オレは二人を促して近くの部屋に入った。
他の部屋同様、カウンターとルールが壁に薄ぼんやりと光っている。
その壁をユウイチは蹴りつけた。
「くそっ!なんだよ、10点じゃ足りないってのかよ!いくつ取れってんだ!」
「騒ぐなよ、誰か来るかもしれないだろ」
部屋に入る意味ってものを考えてほしいものだ。
置いてある椅子の一つに腰をおろす。二人が落ち着くまで待った。
「話……ってなんですか?お二人は協力し合っているみたいですが」
ユミが切り出す。
「ユミ、オレ達と組むかどうかは取り敢えず脇に置いて……君はいつからこの夢を?」
「昨日から」
昨夜が最初か。
初日から掲示板で情報を得ようとしたとは驚きだ。
「そうか……オレ達は四日目だ、なるほどな」
「なにが『なるほど』なんだよ?」
「おかしいと思わなかったかユウイチ?仮面を集めろという割に、滅多に出会わないだろ?」
「……あぁ、お陰で全然点が増えない」
「それだよ。この夢を視ている人間は少ないって事さ」
オレは二人の顔を見た。オレが言った事を理解出来ているだろうか?
「一度に『ムコ』の中にいる人数が少ないんだろう。だからなかなか出会わない。そして欠員が出ると補充されるんだ、ユミは……」
オレはユミを見た。
「……ユミは補充されたのさ。二日前の欠員、その穴埋めに」
「それが?理屈は解るけどなんだっていうんだよ」
「ルールだよ。協力するとペナルティー、もし万が一全員が協力関係になったら、この『ムコ』は破綻する」
「あ」
……誰でも気付きそうなものだが、ユウイチはそうじゃなかったらしい。
「じゃ、じゃあ、ペナルティーって……嘘なのか!?」
「……いや、まだ解らん」
ペナルティーが嘘とは思えない。
ルールの、他の部分は嘘じゃない。それに『累積』ってのが引っ掛かる。
点数が減点されるものと思っていたが、ユウイチと組んで四日。
……いったい何が『累積』されているんだ?
「俺達は四日目だけどよ……昨日のアイツ、いったい何日いたんだろうな?」
ユウイチが扉を見た。正確には閉じている扉の向こう、粉の山を見るかの様に。
「結構以前から始まっていたのかもな『ムコ』は」
あの男は、だいぶ切羽詰まっていた。長く居過ぎて精神的に限界だったのかもしれない。
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