四夜目1
またあの夢に戻ってきた。
それまでと違うのは部屋では無く通路に立ち、足許にある男の死体を見ている事。
そして、ユウイチだけではなく、もう一人いる事だ。
「……よぅ、タクジ、ソイツ……死んだのか?」
殺したのか?と訊かないだけマシか。
「あぁ……お嬢さん、ちょっといいか?」
オレはへたり込んでいる娘に声をかける。
娘はおずおずとした様子で床から立ち上がった。
シチュエーションは繋がっているが、時間切れのせいで実際には半日過ぎている。オレだけではなくユウイチもこの娘も、そのせいで衝撃が抜け冷静になっていた。
「なんですか?」
「アンタをどうこうする気は無い、今のところ。ただ、掲示板にこの話を書いたか?」
「……少し。だめでしたか?」
娘はオレの言葉に身構えた。
「どうこうする気は無いと言っただろ……そうか、立証されたとみていいのか……?」
ユウイチがオレの言葉に反応した。
「立証?何が?」
「この『ムコ』って夢は……何人もの人間が同時に視ているって事がだ。もっとも、まだ可能性が高くなったってだけだから、確証とは言い切れないんだが」
実はやはりこの娘は実在せずに、夢の登場人物だから都合のいい事を喋っているだけかもしれない。
「現実には私がいないって考えてるワケ?」
「可能性だ。オレやユウイチが実在すると思うか?」
オレがそう言うと娘は黙った。
「さて」
オレは足許の男を仰向けにすると、ペンダントを確かめた。
『9』
……凄いな。
あと1点で10点。
『あと1点で』
男の声を思い出す。
この男は10点で『ムコ』が終了すると知っていたのか?
それとも希望的観測ってやつか?
「お嬢さん、名前は?」
「……ユミ」
「何点だ?ペンダント」
「……『0』よ」
よし。
「ユミ、コイツの仮面を獲ってみてくれ」
「おい!もったいねぇよ、タクジが」
「殺したからオレが獲れって?検証だよ」
オレはこの男の言葉を二人に思い出させた。『あと1点』
「もし本当なら、ユミがコイツの仮面を獲れば丁度10点。抜けられる」
「……いいの?」
「女の子がこんな夢にいつまでも捕まってていいはずがないからな。この機会を逃せば、誰かに殺されるだけだぞ?」
ユミはオレ達を交互に見た後、男の仮面に手を伸ばした。
仮面が外れる。
……残念ながら10点じゃ足りなかった様だ。
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