一夜目2
懐中電灯で辺りを照らす。
長い廊下も石造りだ、天井には電灯の類いは無い。
古臭く感じる壁には不似合いなデジタルの数字がうっすらと蛍光色に光る。
その光は廊下の輪郭がなんとか判る程度。
デジタル表示の数字はぽつりぽつりと等間隔にあるのが見えた。
(何の数字だ?)
見ていると数字は減っていく。間隔は1分毎に1……
(……タイムリミット?)
まさか時間内に決められた数の仮面を集めろっていうのか?
『規定の点数を集めればムコは終了です』
さっき読んだルールが頭に浮かぶ。
……だから規定の点数っていくつだよ!?
判らないクリア条件に時間制限、失敗したら何が起こるのかもルールには書いていなかった。
後頭部がむず痒くなる様な焦りを感じる。
壁の数字は【116】を、いや、今ちょうど1減った。
【115】……115分?
残り115分。
それまでにいくつ点数を取ればいいのか?
オレは頭を振って冷静になろうとした。
これは夢なのだ。
たとえ制限時間が過ぎたからといって、何が起こるっていうんだ?目が覚めれば終わりじゃないか。
(だいたい、仮面を被った奴なんかいないじゃないか)
暗い廊下にはオレだけが立っている。
歩かなければ誰にも会わないんじゃないだろうか。
さすがに夢だ、ゲームみたいに思えるが破綻している。目が覚めるまでさっきの部屋に籠っていても問題は無いはずだ。
顔に手をやる。
この仮面、これさえ外さなければ、つまり誰かに獲られなければいい話。獲られたところで何があるというのか。
【114】
また数字が減った。
それを見てまた胸が騒ぐ。じわりと厭な汗をかく様な……
(……取り敢えず歩くか)
そうだ、部屋に戻ったところで何が出来る訳でも無い。
懐中電灯の丸い光が歩調に合わせて小刻みに揺れる。
廊下には壁の両面に扉が見えた。間隔もまばらなら、扉も引戸だったりノブの付いたものだったりと不規則だ。
唐突にT字路が表れる。夢とはいえ、どんな建物なんだか。
(……なんだ?)
T字路に光を当てるとすぐ近くに何かが、いや誰かが居た。不意の明かりが眩しかったらしく、片手を上げて顔を影で覆っている。
しゃがみ込んだその足許には、誰かが崩折れていた。
────────