三夜目2
廊下を曲がる。
これで同じ方向に三度曲がった。
なら、もと来た場所へ戻りそうなものだが、最初いた場所にそんな分かれ道は存在していなかったし、距離的に通り過ぎている。合流していないのか。
(地図なんか作れないな)
「なぁ、どこまで行きゃいいんだ?」
「……嫌なら組むの止めるか?」
「チッ!」
お互い気に入らない同士だが、独りで行動するのはためらわれる。
梶原 悟みたいな奴がいないとも限らない。
……ィャァァァ
遠くから悲鳴らしい声が聴こえてきた。
「お?誰かいるんじゃね?」
「行くぞ」
オレ達は声のする方へ走る。
前方に懐中電灯を向けると、何か蠢いているのが浮かびあがった。
「た!助けて!」
若い娘が、こちらに気付いたのか駆け寄って来た。
その後ろを、男が追い掛けて来る。
娘はオレの後ろに隠れる様にしがみついてきた。
「おい!ソイツをよこせ!」
「……おいおい、穏やかじゃないな?」
「うるせぇ!やっと見付けた獲物だ、取るんじゃねぇ!」
マジか!?
この男は娘の事を『獲物』と、ハッキリ言った。
つまり、殺す気満々って事だ。
「お、おいあんた?どういう事か解ってんのか?」
ユウイチがドン引きの様子で男に声をかける。
「この夢を終わらせるには点を稼がないといけねぇんだ!邪魔すんな!」
確かにそうだが。
オレは男に言った。
「冷静になれよ。この夢で人を殺すって事がどういう事か、知らないのか?」
「知るかそんな事!こっちはあと1点で終わるんだ!」
なに!?
……あと1点!?
「もぅいい!手前ぇでも構わねぇ!死にやがれ!」
男がでかいバールを振り上げる!
咄嗟に鉈を叩きつけ、バールを弾く。
「この!死ね!」
男とオレは絡まり合い、床に転がった。
互いに相手の得物をかわし、空いた拳で殴りつける。
気が付けば男がオレに馬乗りの格好になっていた。
不味い!
マウントを取られた状態は不利だ!
オレは必死にバールをかわし、無茶苦茶に鉈を振る。
と。
オレのポケットに何か固いものがあるのを感じた。
空いている片手でポケットを探り、男の喉へ突き出す!
「ごっ!?」
喉を刺された男の力が弛む。
オレは鉈を叩き付けた。
返り血を浴びながら男の身体を横に転がし、オレは起き上がった。
男の喉には、以前手に入れたペーパーナイフ。
荒い息を吐きながら、ふと、壁を見る。カウンターが赤い。
【03】
【02】
【01】
【00】
────────