三夜目1
……目覚ましのベルが鳴る。
昨日の目覚めよりも疲れの溜まる頭を振りながら起き上がった。
肉体的には休めたと思うが、寝た気がしない。覚醒夢は脳が半分起きている様なものなのだろう。
(こんなのがいつまで続くんだ?)
結局のところ、昨夜はあれから誰とも逢わず、点数は伸びなかった。
「まだ顔色が悪いな、病院行った方がいい」
課長が渋い顔で言う。
労災なんかになると企業としては面倒なのだ。自宅住まいならともかく、寮暮らしだと体調不良を周囲が見落としやすい。それが仇となって『隠蔽したのでは?』と監査に勘繰られる。
「そうですね……」
昼休み、クリニックに連絡をとり、オレは睡眠導入剤を貰った。
(ひょっとしたら)
コレであの夢を視ないで済むかもしれない。
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(くそっ!)
睡眠導入剤は効かなかった。
いや、眠れているのだから効いてはいる。単に覚醒夢が続いているというだけで。
「……おはよう、ってのも変だけど」
「あぁ」
オレ達は時間切れになる前籠った部屋にいた。昨夜の始めと同じ様に隠れたのだ。
夢の中だが目覚めた様なものだから、『おはよう』でもおかしくはないか。
部屋の様子は……
……いや、どうでもいいか。
内装が違ったり広さが違ったりしているが、それだけだ。
今夜もうろつかなければならない。
三日も同じ夢にいると、感情がマヒしてくる。睡眠導入剤のせいでは無いだろう。
「さて、と。出るか」
カウンターが動き始めるのを確認して、オレは立ち上がる。
「またウロウロすんのかよ……正直飽きたぜ」
「じゃあ、ここにいるか?ルールを考えたらこのままずっとこの夢が続くぞ?」
行動を──どんな行動でも──起こすか起こさないかは本人次第だ。
だが、何もしないで毎晩こんな夢を視続けたら……現実の方がおかしくなってしまう。たった二日で既に限界を感じるほどだ。
「くそっ、あんたの言う事は正しいんだろうさタクジ」
「突っ掛かるなよ」
「正直ウンザリだぜ……こんな、夢」
本当はオレにウンザリしてるんだろう?オレもさ。
しかしどんなペナルティーがあるのか判っていない状況、他にいい相棒がいないんだ。我慢するしかない。
オレは面倒臭い相棒を促して部屋を出た。
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