二夜目5
「……なぁ、変じゃないか?」
恐る恐る近寄るユウイチが、そんな事を言った。
「コイツら……組んでいたんだよな?」
「みたいだな」
「なんであんなに言い争ってたんだ?」
ユウイチの云う通りだ。
オレ達の足許に転がる二人が、組んでいたのは確実だ。言い争いの内容から、お互いの行動に文句をつけていたのだから。
男が手斧を振ったのは、感情が殺意にまで高まったからだろう。そして女も激昂していた。先に男が手を出さなければ女の方が……
だが、何故だ?
いがみ合うほど仲が悪いなら、とっくに別れていてもおかしくは無い。ルールには他者と組めばペナルティーがあると書いてある。
仲違いにペナルティー。いつまでも一緒にいる必要は無い。
なのに行動を共にし続けた?
おかしな事はもう一つある。
男は自分がやった事を信じられない様子だった。
いや、我に返るのは解る。殺意が高まり、突発的に行動してしまったのだから。
『なんでこんな』
男はそう言った。
『なんでこんな事をしてしまったんだ!』
……と、普通なら続くだろう。
「『なんでこんな事になってしまったんだ?』なのか?」
「え?なに言ってんだタクジ?」
「あぁ……気にするな、なんでもない」
どうにも男の声のトーンが、そう続く様に感じられた。
女の死を、男は悲しんでいた?いがみ合っていた相手を?
まるで誰かにやらされた様な……
「あ、おい!女の方、4点持ってるぞ!?」
「マジか!?男は……5点!?」
ユウイチの声に驚いたオレは、男のペンダントを見て更に驚いた。
二人合わせて9点。
オレ達は初日に蜘蛛を倒しただけで、後は拾った点数。それでも3点と2点。
殺人鬼・梶原 悟の3点があってこそだ。
合わせて9点も、たった二日で取れる点数か?
オレ達よりも長くこの二人は『ムコ』の夢にいたのかもしれない。
数日かけて、この二人は9点を手に入れたと考えていいだろう。人間相手に戦ったかどうかは別として。
「ユウイチ、女の分を取れよ」
「……なんかエグい死体の分を押し付けてないか?まぁ、いいけど」
これでユウイチは女の仮面と合わせて5点、計7点。
オレは男の仮面を拾った。検証の為に。
男の仮面は粉になったが、ペンダントに5点が入る。点数は引き継がれる様だ。計8点。
しかし。
この二人は、いいコンビだったはずだ。
でなければ9点も取れる訳が無い。きっと協力し合って手に入れた……
……なのに、喧嘩?
男の『なんでこんな』という声が頭によぎる。
いくら考えても、この二人が争った理由がオレには解らなかった。
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