二夜目3
しばらく進むと分かれ道に差し掛かった。
右に行くべきか?それとも左か?
オレは左右それぞれの通路を懐中電灯で照らしてみる。が、どちらも同じ様にただ暗いだけだ。
(どうしたものかな)
カウンターが『目が覚めるまでの時間』である事が判った今、何処かの部屋に立て籠り時が過ぎるのを待つという方法もある。
しかしその場合、何らかのペナルティーがあってもおかしくは無い。
もちろん、ルールには書いていないのだから『立て籠り』にペナルティーは無いのかもしれないが、最悪これから先ずっとこの夢をさまようはめになるかもしれない。
ルールには既定の点数を集める事が、終了条件となっている。それ以外の方法でこの夢を終わらせる事が出来無いのだとすれば、毎晩この覚醒夢を視続ける事になるだろう。
昨夜一晩だけでも仕事に支障をきたすほどだ、『立て籠り』作戦なんて採れない。
「タクジ……人の声が聴こえた。あっちだ」
ユウイチが右手の通路を示す。
行くべきか?
行けば……戦う事になるかもしれない。
本田あさみと梶原 悟の顔が思い浮かんだ。
夢で死に、現実でも死んだ二人……
……相手の仮面を剥げば現実の何処かで誰かが。
いや……偶然という事は充分に有り得る。だいたいオレの隣にいるユウイチだって、実在する証拠なんてどこにも無いのだ。
二人の死と、『ムコ』というこの夢に因果関係は証明されていない。
しかし……
「どうする?」
「……行こう」
まずは様子をみる。
もしも組めそうな相手なら組めばいい。ペナルティーの件があるが、今のところ何も感じられない。ペナルティーがどういうものか判明して、それが酷いものなら別れればいいのだ。
オレ達は慎重に足を運んだ。
なるほど人の声が聴こえる……言い争っているのか?
声の調子から男と女の二人。それ以上いるのかは判らない。
少し行くと扉の開いた部屋があった。そこから声は聴こえてくる。
オレはユウイチに人指し指を口にあててみせた。
気付かれない様に部屋の中を覗く。
「だから!なんだって貴方はそうなのよ!?」
「お前が云えた義理か!?ふざけんじゃねぇ!」
……おいおい。
部屋には二人の男女が掴み合いになりそうな剣幕で騒いでいた。
(どういう事だ?)
どうみても今出逢ったとは思えない。お互いに相手の欠点をあげつらっている。
組んでいてこれか?
そんなに気が合わないなら、別れて行動するものじゃないのか?
思わずオレはユウイチと顔を見合わせた。
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