二夜目1
「あっ!タクジ!?……えっ!?なんで?嘘だろ?俺は起きたはずなのに」
ユウイチが騒ぐ。
騒ぎたいのはこっちだ。
「……うるさいぞ、落ち着けよ」
「お、落ち着けって?おかしいだろ、こんな」
「落ち着けよユウイチ。カウンターを見ろ」
カウンターは既に【120】から少し減っている。
「ゼ、ゼロになったはずなのに……」
「どうやらあのカウンターは夢から覚めるまでのリミットを示してるみたいだぜ?」
「終わったんじゃ……無かったのかよ」
オレも終わったと思っていたさ……
「丁度昨日の続き、ってところなんだろうな」
「こんな馬鹿げた夢なんてあってたまるか?いつまで続くんだ!?」
「ルールを読めよ、既定の点数を集めれば終わるんだろう。それより」
オレはユウイチに訊いた。
「ニュースは見たか?」
「“アサミン”の話だろ……」
「そっちもだが、“梶原 悟”のニュースもだ」
ユウイチは意味が解らないらしく首をひねった。
「昨日化け物蜘蛛に喰われたヤツだよ」
「え!?マジか?」
「……顔くらい覚えておけよ。道理で2点持ってた訳だ、殺人の経験者なんだからな」
いくら夢の中でとはいえ、仮面を奪う事は殺人に繋がる。普通の神経なら躊躇うのが当たり前だ。
人間以外の生き物から手に入れたのかとも思ったが、ヤツ──梶原 悟──の場合、そうじゃないのかもしれない。
「夢の中で二人が死に、現実でも死んだ。どう思う?」
「ど……どうって、関係あるのか?」
「……ユウイチ、お前が『オレの夢に出てくる登場人物』ってだけなら、関係無いさ。お前は現実には存在していないんだからな?」
「な!?ふざけんな、俺は生きてる」
「その証明は?」
オレがそう訊くと、ユウイチは服のあちこちを手で叩き何かを探した。
……多分、免許証か何かだろう。夢の中でそんな物出してどうするつもりなんだか。
「何処に住んでるんだ?」
「お、俺は博多」
「……遠いな、オレは仙台だ」
「鹿児島だっけ?」
「それは川内……宮城だよ」
遠くないだろ、博多と薩摩川内じゃ。
「起きた後すぐ待ち合わせの出来る距離じゃ無いな……取り敢えずここから動こうぜ」
オレは立ち上がるとユウイチを促した。
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