5話 朝ゴハンの前に。
【プロフィール No.4】
夜宮 灯明
光明の兄。
頭は良い方。結構モテる。
でも彼女相手だとデレデレの馬鹿になるのが玉に瑕。
【阪本ドラゴンの森】の上位ランカー。無課金王。
「さぁ愛しの我が家へようこそ!」
思った以上にデカイ家だった。
あとついでに川からも大分近かった。
俺たち3人は雛さんに案内されて、彼女の家へとバケツを運んだ。
重い...腕が死ぬ...
「あっ、バケツもらうね。そこの椅子座ってて良いよ~」
そう言って彼女は、家の敷居を跨いだ辺りでバケツ2つを同時に受け取った。
ヤバい...手のひら感覚無い...
彼女はどこかへ姿を消し、少しして手ぶらで帰ってきた。
「いや~助かったよ! やっぱり男と女じゃ力が違うね! これからもヨロシク♪」
これからもヨロシクされたら俺の腕が再起不能になる...
なんて、この後朝食をご馳走になる予定なのに言える筈もなく。
俺は顔に笑みを浮かべるだけで精一杯だった。
彼女の家の敷地内には、昔ながらの大きな瓦屋根の家とそれよりも大きな四角い建物があり、俺たちが今居るのはちょうどその間の道っぽいスペースだった。
左手に瓦屋根、右手に花壇と四角い建物。
ん? なんか花壇に掘り返したような痕が...?
だけどそんな事を考えるより、もっと強烈な印象を与える物体が、そこにはあった。
バーベキューセット...
そしてその他諸々...
「もう少ししたら皆起きてくるから、そしたら紹介するね~♪」
そう言って雛さんは、バーベキューセットの上に置いてあったヤカンからコップに濁った色の液体を注ぎ、俺たちに手渡してくれた。
これ...お茶...?
「ウチの朝ごはんは昨日の残りなんだけど...足りるかな...」
雛さんはバーベキューセットの上の鍋の中をかき混ぜ、新たにフライパンを設置した。
そして屋根からぶら下がっている食材(?)の中から肉の塊を取り、近くの机の上に敷いたまな板の上で小さく切り始めた。
「近頃寒くなってきたから温かいお茶は身に沁みるねぇ...」
哲平の言葉で振り返ると、なんと哲平はあの得体の知れない濁ったお茶(?)を飲んでいた。しかも勇も頷いてる...
これ、飲めんの...?
意を決して飲んでみると、意外と美味しかった。
そうこうしている内に、雛さんは切り終えた肉をフライパンで炒め始めた。
「もしかしてそれってベーコン?」
哲平が雛さんに尋ねている。
「そうだよん♪」
「おっきな塊だったよね... あっ、あそこに吊るしてあるのもベーコン? あっ、あっちも!」
「そうだよ~ すっごく美味しいよ~」
「どうやって手に入れたの? こんな塊」
「ふっふっふ... 自家製さっ!」
「すごっ! 自分で燻製にしたの?」
「皆で頑張ったんだ~♪ ちなみにチーズとかゆで卵とか実験中~」
思った以上に哲平のコミュ力ありました。
ごめん、なめてた!
「っていうかなんで燻製なんて始めたの?」
「いや~、冷蔵庫の中身、そのままにしてたら腐っちゃうでしょ? ベーコンなら保存食にもなるしね」
「なるほど~」
哲平と雛さんの会話を聞きながらベーコンの焼けてゆく様を見つめていると、瓦屋根の家の方から複数の足音が聞こえてきた。
そして勝手口かと思われる扉が開け放たれ、予想以上の人数の子供たちが出てきた。
「おはよ~」
「...眠い」
「いい匂い~!!」
「誰か居る~」
「おはよーございまーす!」
「おはよ~...あれ?」
そして最後に子供たちを追い立てるように出てきたのは...
「あっ! ネット世代少年団!」
「「「謎のお酒少女!」」」
「なんだいそれは...」
雛さんのツッコミの元、俺たちは昨日スーパーで出会った謎のお酒少女と再会したのだった。