【勇】他愛もない話。主に女子の話。
はじめはゲームの話だったのが、マイペースな哲平があっという間に女子の話にすり替えた。
でも本人に自覚はないんだろーなー。
で、すり替えた本人いわく。
「え? 僕は気になる女子とか居ないかなー」
じゃあ話変えんなよ!!
たぶん光明も同じこと思ったんじゃねーのかな。一瞬お菓子食べる手が止まったし。
「でも佐久間さんってカッコいいよね。みんなを引っ張ってくれてさー」
哲平は【異性の話=好きな子の話】っていう方程式は成り立っていないらしい。
フツーにクラスの女子の世間話を始めた。
「あ、あと有沢さんって動きのキレがいいよね。さすがダンス部。カッコいいよねー」
コイツの女子の話って『カッコいい』しか出てこないんじゃね?
「あ、矢沢さんも僕らと同じゲームしてたよね?」
ソレってもう女子の話じゃなくない?
「岡本さんもだっけ?」
え? 俺にフラないでほしい。
「あー、そのゲームって【阪本ドラゴンの森】?」
「そうそう!」
あれ、光明が乗ったな。
わかったぞ。そのまま話を変える作戦か。
「そーいえば哲平と光明は今回のピックアップガチャ引いたか? 俺は全然関係無い『きりたんぽ竜』が出たぜ。」
「俺も引いた引いた! でも十連して爆死! そのあと単発で『饅頭竜』出てさ。ピックアップのヤツだったんだけどなんかフクザツ」
「僕も引いたよー。単発で『蟹味噌竜』出た」
「ええ!? 今回のイベント『阪本ドラゴンの中華国放浪日記』の一番レアなやつじゃねーか!!」
「しかも『坂本ドラゴンの森』にある数少ない女性キャラ!!」
あっ馬鹿...
「そういえば『蟹味噌竜』って浅岡さんに似てない?」
光明の馬鹿!! でも似てる!!
「そ、そぉだねぇ...」
あ、光明メッチャ冷や汗流してる。
光明、哲平を誘導した罰だ。
「なぁ光明ってさ、好きな子いんの?」
答えてもらうぜ!!
「えっ、ええ!? そんな...い、居ないよ...」
「嘘だぁ」
「いやいやホントホント!!」
「じゃあ気になる子は?」
「え...い、居ないし。」
「絶対居るな。」
「え。」
「絶対居るね。」
「哲平まで何を言い出すかと思えばそんな...」
居るな。
「よし哲平、クラスの女子挙げてけ。」
「有沢さんとか矢沢さんとか...池山さんとか...岡本さんとか...」
「いやだから居ないって」
「駒沢、秋元、亀甲」
「大西さん、川崎さん、青山さん」
「金沢、中村...あと誰居たっけ?」
「あっ、佐久間さん忘れてた! あと黒地さん! それから...」
「黒地さんってあんまり人と話してるとこ見ないよね。」
「え、なに光明、黒地のこと気になんの?」
「そっ、そんなんじゃないし。」
あれ、これってマジのヤツ?
「でも黒地はやめとけ。中学の時はあんまり友達居なかったみたいだし、小学生の時はメッチャ狂暴だったし。」
「え、なんでそんなの知ってるの?」
「勇君もしかして...」
「違う!! 近所だから知ってるだけ!! 小中一緒だっただけ!!!! 事実あんまり喋ったことないし!!」
ヤベェ墓穴掘った...
いやホント黒地って無表情だしなに考えてるかわかんねーし小学生の時メッチャ男子蹴ってたの見たし、ゼッテーろくなヤツじゃねー。
ってか『?』って顔してるけど哲平、お前も同じ中学だったからな!!
「と、とりあえず! 黒地はやめとけ!!」
「でも少し喋った感じじゃ面白そうな人だったけどなー」
「そうか?」
「んー」
ま、相手が黒地ってことを除いたら面白い話が聞けた。
俺はちょっとニヤニヤしてしまった。