【勇】まさかの畑仕事。
え、光明もこんなことしてんの?
時を遡って数分前。
黒地に案内されたのは、古そうな瓦屋根の家...の居間を通りすぎて庭。
庭?
いやこれ庭なのか?
「中西君にはここを耕して貰います。」
黒地に言われるがまま、長靴をはかされ鍬を持たされ...
「いやね、食材を自足しようと思って色々植えるために花壇を拡張したのね。で、土を敷き詰めて放ったらかしにしてたら、気づいた時にはこうなってたのよね。世界の神秘。」
いや世界の神秘とかじゃねぇだろ。
ただ単に土が乾燥して固まっただけだって。
「こうやって土を掘り返してくれたら良いから。こう、鍬を土にぶっ刺して、手前に土を引く? っていうか掻き回すというか... それでこんな風に一列の山というか山脈というか...作ってね☆」
実践して見せてくれるのはいいが、肝心の説明がなってない。
「まぁ良き感じにしてくれればいいから。」
晴れやかな笑顔でこっちを見ながら、手元狂わず花壇(?)に鍬をぶっ刺す。
こっわ。
その辺の不良女よりこっわ。
「で、そこに明石君が種を埋めていってね。」
「おっけー黒地さん」
俺の後ろにいた哲平は種を受けとっていた。
「既に肥料は埋めてあるから心配しないでいーからね!」
そう言って黒地は家に戻って行った。
肥料って埋めとくもんだっけ?
なぞい。
「勇君! ほうれん草の種だってさ! ほうれん草って種から育てるんだね!」
「へー」
「勇君はほうれん草食べれる?」
「いや、食えるけど。」
「光明君は怪しいよね~」
それな。
あいつ好き嫌い多そうだもんな。
「でも黒地さんはほうれん草の料理、出すつもりなんだろ~ね~」
「ってか哲平、お前、黒地だって知ってたんだな。」
「え? あぁ川のところで見た時からわかってたよ?」
「ふーん」
「えっ、勇君ひどいよ。そのくらいパッと見でわかるよ!」
「すまん。光明は気づいてなさそうだったから... 哲平も気づいてないのかと。」
「え... 光明君... 気づいてないの...?」
「多分な。」
「え~」
俺は鍬を振り下ろした。
「そこには何が植えてあるの?」
哲平が、既に何かが芽を出している部分の畑で雑草抜きをしている男の子に声をかけている。
確か...かとりって名前だったような...
「ここは...お野菜」
「へ~ 食べるのが楽しみだね!」
哲平って小さい子と話すの上手いのかもしれない。
俺と哲平はまだしも、光明...あいつ、ここでやっていけんのかな?
な...なんとか...間に合った...




