【外】セキニンとカコ
二十歳前後の女性が、青々とした空をぼんやりと見つめている。
窓から入り込んでくる風が、彼女の腰ほどまでの黒髪を揺らす。
その女性は微動だにしない。
「《せんり》、風邪をひくぞ」
体格の良い男性が、その女性に声をかけた。
女性は、少ししてから振り返り、言う。
「《うつつ》も、この空を見上げているのかと思いまして...」
そしてまた、窓の外を見つめるのだ。
「まだ、責任を感じているのか?」
「...何の事です?」
「《うつつ》を見つけられなかった事に、」
「それだけではありません!」
女性は男性に向き直った。
目尻には一粒の涙がたまっている。
「この計画を聞いて、参加すると判断したのは私です!! でも、今になって後悔している...本当にこんな事を始めて良かったのかと!!」
「それはお前一人の責任じゃない──」
「いいえ!! 彼らには家族が居たのです!! 友人も、夢も、憧れも!! その全てを、私達が奪った!!」
「それは違う!! それは...お前だけの、ゆず──」
「やめて下さい!! その名前は捨てたのです!!」
「す、すまん...」
「もう私は、貴方を兄の様に慕っていた幼なじみではありません!! もう、私を過去に戻さないで下さい... もう、戻れないのですから...」
「わかった... だが、これだけは言わせてくれ... あれは、お前だけの所為じゃない。」
その男は、いつの間にかこぼれていた彼女の涙を、そっとぬぐった。
「いつでも相談に乗るから、だから、お前だけの所為だとは、思わないでくれ...」
「...ありがとう」
彼女は儚い笑みを浮かべて、男と別れた。
そして、呟く。
「ねぇ、《またたき》? 私、まだ、そんなに子どもかなぁ?」
両開きの窓を開けて、眼下に広がる平野を見下ろす。
ふわりと髪が舞い上がった。
「でもね、あそこに残らないくらいには、私も、オトナなんだよ...?」
彼女の脳裏に、ふと、とある初老の男性がよぎった。
周囲は赤い、朱い、紅い、血...
横たわった、車、車、車...
彼女はその記憶を振り払い、地平線をキッと見つめた。
「始めてしまったからには、やり遂げます。私の役目を。」
そんな彼女を扉の陰から覗く、少年のような男の影が揺れる...




