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3:ゴーストと脅迫状

『この場にいる者は、彼女――芳川千世が殺された時間、同じく学校にいた者たちである。我、ゴーストは知っている。彼女が事故死したわけではないことを。君たち六人の中に彼女を殺した者がいることを。死よりも恐ろしい恐怖を与えられたくなければ、素直に彼女を殺したことを白状しろ。されば神の御温情が授けられるだろう。

 我はゴースト。お前たちがどこに逃げ隠れようとも、あらゆるものをすり抜け追いかけ続ける。無駄な抵抗はせず、素直に罪を認めたまへ』

 読み終わると同時に、急激な吐き気に見舞われる。

 僕たち六人を繋ぐ見えない糸。それがまさか千世の死に関わることだったなんて。それにこのゴーストと名乗る人物、僕が千世が死ぬ時に学校にいたことを知っている。勿論誰にもあの時学校にいたことは話していないし、千世以外の誰かと出会ったりもしていない。なのに一体どうして……?

 僕はふと、ゴーストという単語から『図書室の幽霊』とも呼ばれている栗栖を連想し、彼へと視線を向けた。この状況でも全く怯えた様子を見せていない栗栖。彼ならいつだって図書室にいるわけで、僕が校舎に入っていくのを見ていたとしても不思議ではない。

 そう考え彼こそが僕らをここに誘拐したゴーストなのではないかと疑うも、すぐに自分の過ちに気づき考え直す。

 この脅迫状に書かれていることが事実なら、今この場にいる僕と栗栖以外の四人もあの時間学校にいたことになる。なら彼ら全員がゴーストの候補と言えるのではないか。いや待て。この場にいる全員ということは、つまり友哉もあの時僕と同じように学校にいたということ? それはなぜ? 僕はそんな話、一切彼から聞いていなかったというのに。

 疑惑の視線を栗栖から友哉へと移す。と、氷室が神経質そうな声で「読み終えたか」と声を飛ばしてきた。

「これでこの場にいる全員がその警告状を読んだな。それじゃあ改めて聞かせてもらうが、その警告状に書かれていることは本当なのか。お前らも俺同様、千世が死んだあの時あの場所にやって来ていたのか」

「その発言からすると、氷室君は芳川さんが死んだとき学校にいたことは認めるわけだね。まあ、僕もその時間はいつも通り学校にいたんだけど」

 氷室の問いかけに対し、すぐさま栗栖が学校にいたことを認める。

 とはいえそれはそこまで驚くことでもない。いついかなる時でも彼が学校の図書室にいることは周知のこと。逆にその時に限っていなかったなどと言われればそちらの方が怪しく感じてしまう。

「俺もあの日は遅くまで学校にいた。普段から自主練で深夜まで練習することもよくあったからな。あの日が特別というわけではないが」

「ぼ、僕もあの日は夜遅く学校に行ったよ。図書室からどうしても取ってきたい本があってね。こ、こっそり忍び込んだんだ。その時、く、栗栖さんとも会ったよ。やっぱり図書室にいつでもいるって噂は本当だったんだって、び、びっくりした記憶があるし」

 栗栖があっさりと話したのを聞き、続々と同様の告白が行われていく。

 僕はあの場にいた理由を何といえばいいか分からず、すぐには言葉が出てこない。それ以上に友哉が何と答えるのかが気になっていた、ということもあったけれど。

 僕が友哉へとじっと視線を送っていると、友哉はどこか苦しそうな表情を僕に向けた。でも、それは一瞬のこと。すぐに他のメンバーに向き直ると、冷めた表情であの場にいたことを肯定した。

「俺もあの時学校にいたよ。ちょっと大事なものを学校に置き忘れててな。夜思い出して家から教室までひとっ走りしたんだよ」

「大事なもの? 次の日学校に行って取るんじゃダメなほど大切なものってのは一体何だ?」

「別にお前に教えてやる義務はないと思うけど」

「ふん。貧乏人の分際で生意気な態度を向けやがって。ここで大事なものが何か言わないなら、お前も黒覆面の仲間だと考えるぞ」

「勝手にしろ。大体他人のことを言う前に、お前はどうして学校にいたんだよ。金持ちのお坊ちゃまが、一体何の用事で夜遅くに一人で古臭い学校に来てたんだ」

「ちっ。そんなことはどうでもいいだろう。俺は千世を殺してないし、お前らを誘拐した犯人でもないんだ」

「はいそうですかって、素直に信じるとでも思ってんのか? そもそもお前、俺らのことは貧乏人呼ばわりしておきながら、どうして千世のことは下の名前で呼んでんだよ。いつあいつとそんなに仲良くなったんだ」

「……お前には関係ない話だろ。いい加減その鬱陶しい口を閉じろ」

 氷室と友哉の間に目には見えない火花が飛び交い合う。正直どちらも怪しい。怪しいけど、だからといってこの話し合いを続けさせてもろくな展開になりそうもない。

 僕は二人の間に割り込むよう位置を移動すると、やや声を上ずらせながら言った。

「僕もこの紙に書いてある通り、確かに学校にいたよ。ただ二人と一緒で詳しいことは言えないんだけどさ。あはははは」

 暗く険悪な雰囲気を少しでも明るくしようと、無理に笑い声を発するも逆効果。こいつ何この場で笑ってるんだよという冷たい視線が飛んでくる。ただ、全くの無意味でもなかったらしく、氷室と友哉は不満げな表情ながらも言い合いを止めてくれた。

 どこか白けた空気が流れる中、意外にも口を開いたのは根津だった。

「そ、そうだ。一之瀬さんもこの館を一応見て回ってきなよ。こ、ここに誘拐されるまでの流れは分かったことだし、この後はどうやってこの館から脱出するかをか、考えないとじゃないか。ぼ、僕らはすでに館内を見回ったから、一之瀬さんも見てきて何か脱出できそうな方法が見つかったら、ま、またここに集まって話し合おうよ。このまますぐに話し合いを始めるのは、ふ、雰囲気的によくない気がするしさ」

 意外にも、と言っては失礼なのかもしれないけど、かなり建設的な考えを言われて少し驚く。普段は誰かが話しかけでもしない限り、自分から何かを提案するなんて絶対にしてこないのに。もしかすると、今この状況が彼の好きな推理小説と似た状況だから興奮しているのだろうか。いつもよりも顔が明るく、目に生気が宿っているようにすら見えるし。

 何にしろ、この状況下ではすごく有難い申し出。「じゃあそうさせてもらうね」と軽く頷き、僕は近くの部屋に入ることにした。


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