16:巡回と最終チェック
最初に向かったのは佐野先輩の部屋。
栗栖が僕を連れて部屋に入ってきたことには驚いた様子だったが、特にその理由を聞くこともなく質問を促してくる。
栗栖は以前僕に聞いてきたのと同じような内容を尋ねていく。先輩も既に一度同じことを聞かれていたらしく、「その質問にはすでに答えたよな?」と聞き返していたが、「新たな発見があるかもしれないので」と栗栖に軽く受け流されていた。
一通り質問が済んだあと、体調が悪くなったり体に異常がないかを尋ね、それで質問は終了。最後に僕が、栗栖に頼まれた『わざと転ぶふり』を先輩の目の前で実行。先輩は紳士的にあっさりと僕の体を支えると、「大丈夫か?」と僕の身を案じてくれた。なんだかとても恥ずかしい気持ちになりつつ、それで佐野先輩の部屋からは退散。
同じようにして氷室と友哉の部屋も回っていき、僕はその度に転ぶふりを行った。因みに氷室はさっと体を躱して僕が床と激突するのを静観。腕に刺さった矢のことを考えると当たり前と言えば当たり前のことなのだが、僕の中で彼の好感度は見事に下がった。友哉に関してはちゃんと僕の体を支えてくれたものの、捻挫した場所が痛んだらしくやや顔をしかめていた。僕としては友哉にあまり無理はして欲しくなかったので、避けてくれればよかったのになどと氷室に対して思ったことと真逆の感想を浮かべていた――全く人間という者は身勝手な生き物である。
と、それはともかく、合わせて三十分もしないうちに全員への聞き込みは終了。僕からしたら一体何の意味があるのか分からなかったお部屋訪問であったが、栗栖は十分目的を果たすことができたらしい。
無表情ながらも、コクコク、と何度も頷きどことなく満足そうな雰囲気を出していた。そして宣言した一時間まで残り十分となった頃。手持無沙汰に人形をいじっていた僕を手招きし、栗栖はこの後の計画を話してくれた。
問題編(?)はここまでで、次回は解決編です。人によってはトリックも犯人もすっかりわかってしまっているかもしれませんが、まあトンでもトリックです。いくつかそれっぽい推理をしておけば、その中の一つが当たっている可能性は高いと思いますので、適当に推理してから先に進んでみてください。




