第三十八 人狼へ至る
冷害に起きて安奈の身に再び飢饉が襲った。いつもなら村は村長の加護により難を逃れていたが、今回はそうはいかなかった。
冷害は作物をだめにした。そのうえ暗闇の森から、食料を欲する動物たちが村にやってきた。そのせいで獣害が頻繁に起きるようなってしまった。
これらが長く続いたため、村長は村住む者に対して、家にいるようにと伝えて、幾人かの人を家に招き入れて秘密の会談を行った。
村長の部屋には、若い男が数人、村長の話を聞ける位置に座り、話を聞いていた。ある男が村長に尋ねる。
「村長、今回の冷害に加えて、獣害の被害がひどいです」
「うむ 獣害により出た死者は何人だ」
「4人です。村長どうか貴方のお力でこの災厄を解決してください」
それを聞いた村長は深く考えて、重い口を開いた。
「今回の災害は私の手から、離れている。どうしようもない 生贄を捧げて天に祈るしかない」
「そんな!?」
話を聞いていた男たちはざわめき、同様した。しかし次の村長の言葉で場は静まり返った。
「生贄がいれば、この災厄は解決できる」
「生贄ですか」
「そうだ」
そう言って村長は背後から、あみだくじを男たちの前に置いた。
「このくじには村民の名前が書かれている。くじを引き名前が書かれている家族を天に捧げる生贄とする」
この残酷な提案に同様して、周りの男たちは息をのんだ。
「もちろん私の名前も書いてある。ここにいる者たちの名前もな さてどうする。この私の提案を受け入れるか」
「ほかに何とかできないんですか?」
「これだけしか解決できん」
その言葉で場は沈黙した。そして村長は皆にやさしく語りかけた。
「私は家族を守りたい。それはここにいる者たちみなそうであろう。ならばくじを引いて決めなければならない」
その言葉に、周りは目をつぶりうなづいた。
「では、くじを引くぞ」
村長くじを混ぜて、引いた。皆自分と家族に当たらぬように願っていた。そしてくじに書かれていた名前は―ーー
安奈の家族だった。
「向上の家族か……。むごいことになる。……儀式を今から説明する。 まず向上の子供を拉致して殺す。そうしてそれを向上達に食わす」
「なぜそのような恐ろしいことを」
「生贄を特別なものにする為だ。さあ始めようか」
―ーー
次の日
安奈と向上は遊んでいる子供が行方不明になったことに気づき村中を探し回った。しかし見つからずにいた。それもそうである。安奈たち以外が結託して、知らぬふりをしているのだから。
探し回る安奈たちに、村長が呼び止め、自分の家に来るように伝えた。
それを不思議に思いながらも、二人は子供の手がかりが見つかったと思い、急ぎ足で向かった。
二人は村長の家にたどり着くと使用人に案内されて、居間に連れていかれた。そして村長は腹が減っておるだろうと話して、二人の前に、『肉料理』を差し出した。二人は不思義に思いながらも、腹が減っていたため、『安奈が先に手を伸ばした。』向上もそれにつられててを伸ばした。二人は、久しぶりの肉の味に喚起した。食べている間安奈はこの肉を食べたことがある気がした。いつだったか、山賊がくれた『謎の肉』と同じ味のような気がした。
やがて二人が食べ終わると、今に複数人の男が籠をもってやってきた。
そして、肉の正体を明かした。
「お前たちの子供は今食した肉だ」
「「え」」
男は籠の中にある、子供の頭部を見せた。その瞬間向上は茫然として安奈は思わず吐いた。そして村長が居間にやってきて、事の真意を話した。村長が話している間、二人はただ茫然として、固まってしまった。そして村長の口から二人の処遇を口にした。
「これからお前たちを、村の外暗闇の森に追放する。これも私たちの家族を守るためだ」
その言葉とともに安奈と向上は縄で縛られて動けぬ様にされた。二人は抵抗することもなく、ただ茫然としていた。
そして幾人かで二人を担ぎ上げて、居間から姿を消した。
村長は自分の家族に会い、自身の孫の頭を優しくなでた。
ーーーー安奈は気が付くと森の中にいた。
そして自分の身に何が起きたのか改めて理解した。
「私は……子供を食べた」
彼女の心に重い罪の意識と現実ではないという否定したい心が混ざり合う。
そして彼女は木の幹に自分の頭を何度もぶつけた。
「どうして!! どうして!!」
安奈は点に向かって泣き叫ぶ。しかし答えは返ってこない。ただわかるのは、自分が子供の肉を食したということだけだ。安奈はしばらくの間ずっと泣き続けた。
そうしてしばしののち、安奈の心のうちにこのような考えが浮かんだ。
(私は子供を食べた、その罪を背負って生きなければならない)
そう思って向上を探しに回った。
向上を見つけられたが ひどいありさまだった。彼は縛られた縄を使い首を釣って死んでいた。木の幹にすまないと刻まれてた それを見た瞬間、安奈は膝から崩れ落ちた。そうし彼女はあることに気が付いた。
なぜ自分が自殺してないのかと。自分は罪を受け入れ生きるというの口実で、自分は死から逃げているでけではないのかと。
「ちがう!! 私はちゃんと罪の意識がある!!」
しかし一度始めた考えは、止まらず加速してゆく。安奈の心は剥離して、自分自身を痛めつける
(ならなんで、子供の肉を差し出されたとき、手を伸ばしたんだ?)
「違う違う違う。私は子供の肉とは知らなかった‼」
(私は人肉を一度食べていた。山賊のところで‼ なら口に着けた瞬間人肉だとわかっていたはずだ)
「私は人肉なんて食っていない‼」
(いいや、喰った。昔から食人願望があったろう。妹のこともあった。お前はいつだって自分の命しか興味なかったのさ だから向上のように 自殺もしない)
「ちがう!! 私は向上を子供を愛していた!!」
(母親は子供を食べたりしない)
その問いかけに安奈は泣き崩れた。
「ううう じゃあ私はいったい何。」
(お前は人なんかじゃない。狼だ。あさましい人肉をあさる狼だ)
「そうだ私は狼だ 子供を食べたのは安奈じゃない……」
そうして意識が消えていった。木漏れ日がさし、小鳥のさえずりが聞こえる森の中。彼女にとってそれらは攻める言葉や事象に聞こえて彼女の存在を否定した。安奈はただ狂い朝と夜を何度も迎えた。
―ーー
しばらくの時がたち、暗闇の森には狼のような女が存在している噂が流れた。




