第三十七話 ありきたりな幸せ。
安奈が向上と丸いテーブルを囲んで食事をしているとき、安奈がふとあることに気が付き向上に尋ねた。
「わたしがやってきたとき、ひどい異常気象だったしょうなぜ。ここには食料がたくさんあったんです?」
「それは村長の特別な力のおかげさ」
「特別な力のおかげ?」
安奈は首を傾げた。夢幻界に住む彼女だが、そういった特別な力を持つ存在にあったことはなかったため、不思議に思った。
「本当のことだよ。その村長のおかげで、僕たちが住む村はひどい飢饉にはならないのさ」
「それはすごいことですね」
「ああ、村長は年老いた老人だが、みんな尊敬している」
安奈はもしその村長が、家族のもとにいたのならとかんがえてしまった。
―ーーー数年後
夕方
小さな子供が楽しげに友達と遊んでいると、遠くから安奈の声が響いた。
「きの。もう夕方よ。早く帰ってきなさーい」
その言葉に子供たちの中の一人の少女が反応して声を上げた。
「お母さんわかったー」
そういって少女は安奈のもとに駆け寄り、手を握った。安奈は向上との間に子をもうけたのだ。安奈は子供にやさしく声をかける。
「友達と遊ぶの楽しかった?」
「うんたのしかった。次はみんなで西にある暗闇の森に冒険しに行くんだ」
「あの森は危険よ、狼が出るから行ってはだめです」
安奈は困った顔をして、子供を制した。子供はかるい返事ではーいと返事をした。
二人は向上の家に着くと大きな声でただいまと発した。その言葉に、向上が出迎えた。
「おかえりなさい。きの。今日はどんなことをして遊んだの?」
「えっとね鬼ごっやかけっこ」
向上の問いかけに、きのは目を輝かせながら話した。そう話す彼女を見て、安奈と向上は幸せな気持ちになった。安奈はきのの頭をなでて、
「お風呂にしましょう」
「お母さんも一緒にはいろうね」
「もちろんよ」
アンナは優し気に語り掛けて、子供とともに風呂に向かった。そして風呂からあがって、食事を一家団欒で楽しんだ。そうして夜には、家族三人。川の字に眠る。人間世界ならどこにでもある光景。しかし安奈はこれを尊いものだと感じ取っていた。
そんな彼女は、毎晩目をつむりながら、神様に願っていた。
「神様。どうかこの平穏を奪わないでください」




