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第三十二話 夢幻界と呼ばれる異世界で女が気が狂うまでの話。
暗闇の森と呼ばれる森の中に、気が狂っている女が存在した。女は赤いドレスを身に着けており、髪は足にとどくほどぼさぼさで長く。爪は獣のように鋭く伸びていた。そして女の片方の目はどこを見ているかわからず虚ろだった。
ふとそんな女の近くの茂みから音を立てて兎が飛び出した。それ女は虚ろでない片方の目で注目。そして腕を伸ばして兎につかみかかった。兎はあわれ逃げることかなわずに、捕まってしまった。
女の手の中で、兎は逃げようとするが手でしっかり捕まれていたため無駄だった。女は兎の腹にかみついた。
兎は鳴き声をあげて絶命した。女の鋭い歯は兎の腹部を破り、臓物を外に露出させた。女はそれを喜びの顔でむさぼり食らう。その様子はさながら狼のようであった。
女は気が狂っていた。
しかし、初めから女が狂っていたわけではない。彼女にも、かつては家族がいて愛する人も子供もいた。それらを失ってこうなってしまった。
気が狂った女の名前は「安奈」。彼女の人生の転機は15歳の時であった。




