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夢幻界 望み叶えるモノ  作者: はぎの
第一・伍部 幕話 殺人鬼幻想
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第二十六話 殺人鬼と狐と狸

 しみについては、第五話を読んでみてください。

 時系列は、阿藤が辻切を行った時期です。

「こんにちわ、しみさん」


「ええこんにちわ、いおりさん」


 休日、しみが街中を歩いていると、偶然いおりに出会った。しみは当てもなく散歩をしていただけだが、いおりは学校の教材に使える物を道具屋に探しに行こうとしているとのこと。そんないおりに彼女は

 散歩を止めて彼女についていくことにした。


 しみが、一緒に行ってもよろしいですかなんて言葉を並べたら、いおりは快く承諾した。しみがいおりについて行こうとしたのは、当てもない散歩よりこっちの方が良いと考えたからである。


 二人は人里にある、大きな道具屋に来た。店は大きく、日用雑貨から珍しい人間世界の物まであり、品ぞろえが良い。店は人で賑わっていた。

 陳列の中でしみは奇妙なモノを見つけ手に取ってみた。

 

 それは薄型の二つに重ねられた板だった。しかしそれは木材でできておらず、硬い物でできている。開いてみると、片方はガラスの用なもので、もう片方は碁石の様な形をした突起物が規則正しく並び、突起物には、人間の文字が書かれていた。


「これはいったいなんだ?」


 不思議に思い、置いてあった場所を見て名を確認してみると、人間世界からの一品、カチャカチャできる、用途は不明。としか書いてなかった。


 「えい」


 彼女は突起物の一つを押してみる。指によって突起物は押し込まれるただそれだけだった。しみは

何の役に立つのかこんなものがさと、奇妙な感覚を覚えた。そして元の場所に戻し店内を回った。


 すると、いおりが誰かとにらみ合っていた。


 睨んでいる相手は胸元をはだけさせながら、着物を着こなしたタレ目の美人だった。しかし人間で無く頭に狸の耳に尻には尻尾を生やしていた。しみは化け狸だと分かった。


 「…………」


 「…………」


 二人は睨んだまま動かない。これ以上あのままにさせていたら、確実に喧嘩が起きるとしみは判断し、割り込む。


「いおりさん、この方はどなたで?」


「お主こそ誰じゃ?」


 しみが入り込んだことで、化け狸が見つめてきた。しみは名を名乗り、いおりと共に学校で働いているものだと説明した。すると化け狸は笑った。


「まさか、狐組の元(かしら)が教鞭をとっているなんてなあ」


「ぐむむむむ」


 狐組。しみはそれを知っていた。狐組とは妖怪の里で賭場を取り仕切る者たちの事だ。荒くれ者が多い。それを聞いた彼女はいおりに本当ですかと尋ねた。するといおりは、はいとうなだれるように答える。

 狐組に関することはいおりにとって秘密にしておきたかった事だ。そんないおりの姿をみて笑う狸。


「はい、じゃと。ほほほほ」


 狸は甲高く笑う。それはあざけりの笑いだった。その笑いに不快に感じて、苦言を呈するしみ。


「何なんです。いおりさんが過去どうあろうとも、今のいおりさんをバカにすることは、私が許しません」


 その言葉はかつてしみがガキ大将に出生のことで馬鹿にされた時、雪梅が言ってくれた言葉であった。

 それをしみは雪梅同様に言い、狸に向かった。狸はその言葉に顔をしかめ、しみを睨みつける。


「お前さん、私が狸組の屋代だってしってのものいいかい?」


「知ったこっちゃないよ、偉かろうがな」


「ふん……」


 しみは屋代と狸組という言葉に聞き覚えがあった。狸組は賭場を屋代率いる化け狸が管理しており、暴力団の様な団体。しみは、

 (喧嘩を売った相手が不味かっか?。まあそれでいいか)

 と考えていた。


 それは相手の嘲りに怒れた事によりしみは、人間に近づけたと思ったからだ。人間とは誰かのために怒れる生き物である。しみがそう考えながら睨むと屋代は笑い、いおりに話しかけた。


「ふん、今日は事はこの嬢ちゃんに免じて、みのがしてやるぞい」


 そして店から去っていった。しみはわけが分からなかったが何事も起きなかったことに、安心した。するといおりがしみに対して頭を下げた。


「申し訳ありません、しみさんに危険な真似させてしまって」


「いえお気になさらず、あの……」


「しみさんが聞きたいことは分かります。私はかつて狐組の頭として働き、人を傷つけていました」


「それがどうして、今の様なあなたに?」


「……ある時山の中を散策していると、落石事故にあったんです。私は岩に直撃して大怪我を負ってしまいました。体は怪我で動かず。もうだめかと思いました。その場で倒れていると、狩猟に山に来ていた人が助けてくれたのです」


「良かったですね。どんな人だったんですか?」


「助けてくれた人は、私が傷づけた人でした」


 それを聞いてしみは不思議中を顔になった。


「……不思議ですね。普通なら恨まれているはずだ。なぜ男は助けたんですか?」


「しみさんの疑問は当然です。私もなぜ助けたのかと混乱して問いかけました。すると相手は『こんな世界だから、嫌な相手でも助け合うぜ。たまにはさ』と言い去っていきました。その言葉は私の心に深く刻まれました」


 「……」


 「それ以来、人とはいったい何なのか。妖怪との垣根とは、と考える日々を送って今に至りました。屋代は狐組の時から張り合っていた存在です。……申し訳ありません。醜聞をお聞かせしてしまって」


「そうですか。『過去なんて関係ない』ですよ。いおりさんは立派です」


「そんなことは……」


 しみの言葉に困惑するいおり。彼女はしみが自分の過去を知って、嫌悪かんをあらわにすると思っていたからだ。然し、しみはそうではなかった。


「そんなことありますよ。私はいおりさんのこと尊敬してますもの」


 その言葉にいおりは喜びの笑顔になり、頭を下げて感謝した。


「ありがとうございます……しみさん」


 しみの『過去なんて関係ない』という言葉はいおりに向けての言葉であるが、自分にも向けた言葉でもあった。今の生活の呪縛になっている過去を否定することは、しみにとっての救いだった。


 しみは過去なんて関係ないそう何度も心の中で自分に言い聞かせた。

 その後買い物を済ませ、いおりと別れた。


――――――


 屋代は店を出た後、しみにたいしての恐怖で冷や汗を流した。


「やつめ、いったい何人殺しているのやら。くわばらくわばら」


 屋代はいおりと違って人の残虐性を何度も見てきた。

 ゆえに、狸組という団体を作り人と共存することにしたのだ。


 そして今日、会ったしみは他の者よりたちの悪い残虐性を秘めていることを感じ取った。


 これは賭場を取り仕切ってきたことによる培われた感性であった。


 屋代はいおりが接している化け物に恐怖し、かつて張り合っていた好敵手いおりの身を案じた。


ポイント、ブクマお願いします。しみが触った物はパソコンです。

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