第二十四話 進むべき道 後編
夢幻界にて、葉月と菫はアサキシと死闘を繰り広げていた。
〔マキシマム〕
「マキシマム・パンチィイ!」
菫は叫び、アサキシに飛びかかる。だが彼女はそれを紙一重で避けて、ドリルで腹を突き刺し菫にカウンターを与えた。
「ゴブバァ!」
ドリルが装甲を貫き、回転刃は腹を抉り菫の肉体を傷つける。しかし、
「何!?」
菫はドリルを掴み、相手に組み付こうとした。アサキシはすぐさま引きはがそうとしたがドリルが掴まれ動かせない。
「チィ!」
〔エルカード発動<エコー>〕
アサキシはドリルから手を放し菫の頭を殴る。アサキシによってヘルメットは砕かれ菫の顔が露わになる。 当の菫はアサキシが武器を使用できない様に、すぐさま遠くへ投げ捨てた。がしかし、受けた攻撃により地に膝をついてしまう。そんな彼女にアサキシが追撃を与えようとするが、
「セイヤーーーーーー!」
葉月がアサキシの胴を斬り防いだ。スーツは斬られ、アサキシに痛みを与えた。葉月の妨害にアサキシは怒号を発する。
「クソッタレ共があああああ」
〔エルカード発動<アクセル>〕
アサキシはスピードを得て、葉月の刀を掴み砕こうとした。
<ハート> 精神力を力に変える
だが彼女はエルカードを発動し、刀と自身をより強化。二枚同時発動していることで常人の葉月への負担は重いが、アサキシを倒す思いが上回った。
掴まれた刀を強引に引き寄せ、アサキシの手に深手を与える。アサキシは自身の負傷に目を見開いたが、すぐさま追撃に思考を巡らせ、葉月の首をへし折ろうと手刀を繰り出だす。
余りにも早い攻撃に、葉月は死を覚悟したが手刀はすんでの所で停止。
「菫ッ! 貴様!!」
アサキシの怒声が響く。菫が背後から組み付き、手刀を防いでいた。
「この距離ならッ!マキシマム!」
〔マキシマム〕
「無駄だッーー」
〔エルカード発動<フリーズ>〕
菫の拳が、頭をたたき割ろうと光り輝く。しかしエルカードにより光は消えた。だが菫は拳をアサキシの頭へと落とした。
ガンッガンッガンッと雨音に鈍い金属音が混ざり何度も響く。何度も殴られたためアサキシのヘルメットにはヒビが走った。アサキシはこれ以上の損傷は危険と判断し背後にいる菫の顔を殴りかかった
「ギャアアアッ!!」
菫は何とか避け、死にはしなかったが拳が頬にかすり頬の肉が破け血が湧き出た。しかし痛みで叫んでしまう。アサキシは菫の痛みの叫び声を隙と判断し、菫を葉月の方へ投げ飛ばす。葉月はアサキシに攻撃しようとしたが、投げ飛ばされた菫を受け止めるために中止せざるおえなかった。
「大丈夫か!?」
「生きてる!」
声をかけあい葉月は菫を受け止めアサキシから距離をとる。距離を取る際アサキシの追撃が来るのではないかと恐れていたが不思議と追撃は来ない、二人はアサキシを見る。アサキシは鬼の様な形相でこちらを睨んでいた。そして怒声を発した。
「屑どもが!! 貴様らは私の親の復活を阻む屑!! いやそれ以下だ!! さっさと死ね!!!」
管理所で働いてる時のアサキシを知っている者が、今この場に居たら恐怖しただろう。それほどまでに普段の彼女から豹変していた。追撃を行わなかったのは怒りで冷静な判断が出来なかったためである。
「これで命を絶ってやるゥ……」
〔エルカード発動<テンペスト><アクセル>〕
アサキシの拳に暴風が吹き荒れる。そして葉月達に向け放った。暴風は大地を抉り、木々を根こそぎ引っこ抜き、全て破壊した。
―――二人を除いて。
「……なぜだ。なぜ避けれた!!」
攻撃を避けられた彼女は叫ぶ、自身の攻撃に絶対の自信を持っていたからだ。問われた二人もなぜ自分たちが生きているか分からない。そんな疑問に答えるかの様にある者の声が聞こえた。三人は声がした方へ顔を向ける。
「私が助けた…… <エンド>のカードを使ってな」
「了…… しくじったのか!? アトジ!?」
声の主は了であった。了の無事を見て、アサキシは顔を歪ませアトジの失態を呪った。葉月と菫は了が無事であることに喜び声をかける。
「大丈夫!? 了」
「勝ったのか!? 了」
それに対し笑ってああ、と肯定する了。そして申し訳なさそうに、
「葉月に菫、もう<エンド>は使えん。お前たちを助けて無くなった」
二人に対しそう伝えた。了の言葉を聞きアサキシは大声で笑う。
「お前は二人を助けるために<エンド>の力を使い、失うとは。アッハハハ! ……了! お前は間違った!!」
「いや、そうでもないぜ。私には今まで使ってきたカードがある。それに菫や葉月もいる。まだ戦える」
そう言いながら二人を見る。二人も戦闘意思を見せた。了はそれを見て笑みを浮かべて、エルカードを四枚同時発動した。
<オーガ><グリフォン><ドラゴン><アイアン>
了に翼、角、ガントレットが現れ、肉体は鋼鉄に変化した。これが了の最後の力だ。
「行くぞアサキシィィ!」
「愚図共がアアアアア」
四人は駆けた。葉月の刃がアサキシの首を狙う。
「ハアアッ!!」
〔エルカード発動<アクセル>〕
アサキシは速度を上げ、刃をしゃがみ避ける。しかし、葉月は自身の攻撃が避けられることを読んでいた。長刀での攻撃を囮にし、短刀での攻撃を狙っていた。
「喰らえやッー!!」
短刀をアサキシのヘルメットのヒビを狙い差し込む。短刀は突き刺さりヘルメットから大量の血が湧き出る。
「グギャアアアア」
余りの痛みに叫び声を上げた。人間ならば即死だが、アサキシは肉体改造を施しているため、死には至らず、重症止まりだ。ゆえに攻撃に怯まず、葉月を殺すため拳を放つ。拳は葉月の頭部に向かう。当たれば頭は砕かれて葉月は即死だ。
<フェイク>
〔マキシマム〕
「マキシマム・ダブルキックウウウウウ!」
しかし菫の攻撃がそれを許さなかった。分身と共にアサキシに飛び蹴りを喰らわせた。菫の足はアサキシの胴体に当たって赤く光り輝く。爆発すればアサキシは即死だ。だがアサキシは爆死しない。エルカードが彼女を守る。
「グオオオオッ!!」
〔エルカード発動<フリーズ>〕
爆発は抑えたものの、飛び蹴りにより大きくふっ飛ばされて勢いよく地面に叩き付けらる。
アサキシは地に伏した。アサキシの頭は疑問に満ちていた。
(ありえない…… なぜだ…… 私の行いは正しいはずだ! 父さん母さん!!)
そう信じて立ち上がる。そして向かってくる了を睨み、叫ぶ。
「エルカードよ!全ての力を!」
〔エルカード発動<テンペスト><アクセル><エコ->〕
暴風がアサキシの拳に纏わり轟音を響かせ、大地を砕く。
「ウオオオオオオオ!」
アサキシは叫び走り、拳を放つ。了も爆風を引き連れて拳を放つ。辺りに暴風が吹きすさんだ。アサキシの攻撃に菫は分身を盾にして、自分と葉月を守った。
拳と拳が激しくぶつかり合う。アサキシが了に問う。
「私がしていることは正しい!! 親を思うことはッ!!」
「アサキシの親への思いは正しい。だがそれを理由に誰かを殺めたり、傷つけてはならない!!」
「クソッタレ共がアアアアア」
了の言葉にアサキシは吼え、アサキシの拳は砕けた ……
「これだ終わりだ、アサキシ!」
了の拳がスーツを破壊し、吹き飛ばした。何度も地面に強く叩き付けられ、再び地に倒れた。スーツの装着は解かれ、アサキシが露わになる
「……生き返らせることが出来なくて、ごめんなさい。父さん、母さん」
アサキシは空に手を伸ばして絶命した。了はアサキシに近づき目を閉じてアサキシの安らかな眠りを祈った。
「終わったのか」
菫と葉月が了に近寄る。
「ああ、終わった…… さようなら、アサキシ。そして菫に葉月」
突然の言葉に二人は驚き、了に問いかける。
「何言ってんの!?」
「おいどういうことだ」
「私は私自身に<エンド>を使った。もう存在を維持できない」
了の体は光を放ち、少しずつ消えてゆく。その光景をみて動揺する二人。
「そんな……」
「おい! どうにかならんのか」
菫の言葉に首を振り否定する了。
「私は消える……」
「了!! お前に言いたいことが」
「何だ葉月」
「私はお前に迷惑ばかりかけた……」
「ああ、そんなこと、気にするな葉月…… 元気でな、ムクや妖怪とも仲良くしろよ」
「うん……」
葉月の目から涙が零れた。菫も長い付き合いがあり複雑な表情になっていた。
「何だ菫、お前らしくないな」
「うっせーよ馬鹿…… 了、お前に会えて良かったぜ」
「そうか、ありがとうよ…… 私は生まれてきてよかったな」
体が消える寸前、了は二人に満面の笑顔を浮かべ告げた。
「さようなら、元気でね」
その言葉と共に了は光となって消えた。全てが終わった。
アサキシの嵐は止み、雲の隙間から光が差し込んだ。
―――
嵐は止み、水害も収まった夢幻界。
人里と妖怪の里は嵐により大きく傷ついたが、人妖互いに協力し復興へ歩んでいた。アサキシを待つ者は多くいたが時間が経つにつれ嵐によって死んだものとされた。多くの者が悲しんだ。
管理所はアサキシと了が居なくなったことで力を落とした。彼女が居たからこその管理所でもあったのだ。
そして新たに所長に就任したのは副所長の推薦もあってか菫になった。推薦理由はアサキシに頼りにされていたと副所長の目に映ったとのこと。この推薦理由を聞いた菫は苦笑いを浮かべた。
アサキシが住んでいた屋敷は解体され、資材として復興に充てられ、金品は競売にかけられ、お金は被害を受けた者への補助金となった。
葉月は戦いの後、妖怪に対しての怒りは薄れ、妖怪の里の復興の手助けを率先して行った。
人間と妖怪は嵐を乗り越えたのだ。
夢幻界が復興し、落ち着いたある日。葉月は小さな丘にある小さな家の跡地、了が住んでいた場所に来ていた。家は嵐により跡形も無くなっていた。その場にしばしたたずむ葉月。彼女は了に会って大きく変わった。
(ありがとう……)
彼女は空き地に花を添えて何度も感謝し、こう思った
もしかしたら、いつの日か了に会えるかも知れない。
確証はないが何処かそう思えた。
(再び会えるその時まで世界を守ってみせよう、了みたいに)
葉月は人里にある自分の家へと向かう。
太陽の暖かな光が葉月の道を照らした。




