第二十話 かわりのかわり 中編その三
妖怪の里にて、了と菫共に里を見回っていた。二人が何故いるのかというと了の友人が殺されたことを菫がアサキシから聞き、それで了の心が心配になり、一緒に見て回らないかと提案して今に至る。
カラスが鳴く夕暮れ時の妖怪の里を二人は歩く。妖怪の里は妖怪だけが住む場所であるが、妖怪たちも今回の事に怯え皆家に隠れて引きこもっていた。隣で歩く了に話しかける菫。
「今回の事件の犯人はどう思う」
「クソ野郎だ。間違いない」
「……そうだな」
了は怒りに燃えていた。了の口から暴言が出たことに菫は驚きながらも了の言葉を肯定した。歩きながら愚痴をこぼす了
「何であの子が死ななければならないんだ…… まだ若いのに」
「…………」
「なぜだよクソッ!」
怒りに身を任せ、道のはしに置いてあった桶を蹴った。桶は音をたてて転がり水をこぼした。普段の了からは考えられない行動に菫は、
(了を一人にさせた方がいいのでは?)
と考えた。そんな菫に了が申し訳なさそうに話しかけてきた。
「菫、すまない。一人にしてくれないか」
「ん、わかった」
「本当ごめん、誘ってくれたのに」
「気にすんな、私は里の外回りを見てくる」
「気をつけてね」
「おまえこそ」
そう言い菫は了とは違う方向を歩き出した。
―――
了は里を一人で見回っていると、背後から知った声が聞こえた。振り向くとそこには、黒いジャケットを着た代行者アトジがにやにやと笑いながら立っていた。
「なんのようだ」
眼を鋭くし構える了。それをみてもアトジは笑みを崩さない。
「あらあら、そんなかっかしてどうしたんです」
「……今回の事件はお前が関わっているのか」
「んんーどうでしょ。そんなことより了あなたこの事件から身を引いた方が良いですよ」
「なぜだ」
「あなたにとって残酷な真実が待っているからです。この事件は解決しない方が良いあなたに都合が良い」
「ふざけんな! 多くの人が死んだんだぞ。見てみぬふりが出来るものか」
「死とは必ず訪れるものですよ。私はあなたに忠告はしました。ではさようなら」
アトジは空間を切り裂き、この場から去っていった。
―――
菫は里の外に止めていたバイクに乗り、近くを見て回ろうと考えエンジンを起動させた。
最初に訪れたのは、河童の白川が住んでいる川辺だった。辺りには誰もおらず、川の流れる音が聞こえた。
「あの河童大丈夫か?」
そんな言葉をつぶやきながら、川を見た。その時川の水がごぼごぼと大きく音を立て乱れた。
「何だ!?」
菫の驚きと共に川の中から白川が飛び出し地面に叩き付けられた。叩き付けられた衝撃でうめき声を発した。そんな白川に菫は何があったと近づく。
白川の体には多数の打撲跡や切り傷が見て取れ、重症だとわかった。白川は川を指さしながらか細い声で菫に伝える。
「あいつにやられた…… 逃げろ」
「あいつ!?」
菫は指さした先見ると、川の中からざばんと水音をたてて、刀を持つ女が現れた。
女の姿は銀髪で灰色のジャケット来た褐色肌の女、ラウラだった。
ラウラは菫たちを凝視していた。
菫は相手がアサキシの情報と一致しているのがわかりブレスレットを触りながら警告する。
「お前が最近殺しまくっている奴だな!」
「そうだ。だからなんだ」
ラウラは淡々と答える。それに対し菫は怒りがこもった声で返す。
「なら世のために死んでもらう!」
「死ぬのは価値のない貴様らだ」
「装着!!」
パワードスーツを装備し戦闘態勢に入る菫。ラウラも菫に刀を構える。
「行くぞ!!」
勢いよく駆け出し右拳でラウラに殴りかかった。しかしそれを紙一重で避けるラウラ。そして刀で菫の胴を切り付けた。だが装甲が菫を守り金属音と火花を散らしただけだった。
ラウラの攻撃は失敗に終わり菫に隙を見せた。鎧を斬れるのは刀の性能ではなく葉月の力あってこそだ。
「オラッ!!」
隙が出来たラウラの腹部に拳を放つ菫。拳は命中しラウラの体をくの字に曲げた。菫の追撃は止まらない。
「シャア!!」
ラウラの折り曲がった体に前蹴りを放った。しかし、
「チッ」
ラウラは体を後ろに思い切り、のけ反って後方に飛んで避けた。そして着地の瞬間にエルカードを発動した。
<バンディット>
すると菫が着ているパワードスーツは解かれ、ブレスレットの形に戻りラウラの手の中に瞬間移動した。ラウラはブレスレットを身に着け起動させた。
「装着……」
その言葉にラウラの体は光に包まれ、光の中から現れたのは、パワードスーツを着たラウラであった。菫は武器を奪われ無力になったのだ。奪われた彼女は冷や汗をかきながら虚勢を張る。
「そのエルカードは葉月から聞いてんだよ」
新たに黄色のブレスレット取り出しを装着しようとしたその時、ラウラがパワードスーツの機能を発動させた。
「マキシマム」
〔マキシマム〕
ラウラの右足が赤く発光し爆発を引き起こす。その爆発の勢いにのり、ラウラは弾丸の様な速さで菫に接近し刀で襲い掛かった。
(死んだか!? 私!?)
余りにも素早い攻撃に、自分の死を予感した菫。しかしギリギリの寸前で装着がまにあった。菫は光に包まれ、装甲を纏った姿で現れた。装甲が刀の刃から身を守る。
菫が新たに纏ったパワードス―ツは重機を思わせるカラーリングとデザインで、スーツの各所にハイプが施されていた。右手には巨大なハサミのクローが、左手にはワイヤーフックが装備されており、足の底にはキャタピラが内蔵されていた。
「オラァ!!」
「!」
菫はクローで殴りかかる。ラウラはそれを受けて反撃しようとしたがき力負けして後ろに押しやられる。
「こっちのスーツはパワータイプだ!! お前のより力が上なんだよ!!」
そう菫は叫びながら殴りかかる。ラウラはそれを受けて、装甲どうしの鈍い金属音が川辺に響く。
「これでお終いだな!!」
「そうかな?」
菫の言葉にそうつぶやき、エルカードを発動するラウラ。
〔ハーフ〕
「何!?」
<ハーフ>の力で菫のスーツはパワーダウンし、拳は受け止められてしまう。突如のパワーダウンに困惑する菫にさらにスーツの力を発動して追い打ちをかける。
「マキシマム」
〔マキシマム〕
ラウラの片腕は赤く光り、菫の胸部を目掛けて殴った。赤く光る拳を受けたことにより、菫の胸部にある装甲は爆発して菫を吹き飛ばし地面に叩き付ける。
「グギャウ」
「ここで終わりだ……死ね不要な存在め」
ラウラは叩き付けられた菫にじりじりと近づきながら告げる。だがその瞬間を待っていたといわんばかりに菫は起き上がり、スーツの力を起動させた。
「マキシマム!!」
〔マキシマム〕
菫のパワードスーツのパイプから蒸気が噴き出し、スーツの力を倍にした。菫が今使用したスーツの力は、短時間であるが力を倍にすることができる機能であった。力があがった菫はワイヤーフックをラウラの顔面目掛けて発射。フックは砲弾の様な威力と速さで、ラウラに迫る。
(勝った!!)
菫は勝利を確信したが、それは幻想だった。ラウラは身を守るエルカードを発動。
<ミス> 失敗を誘発させる。
<ミス>のエルカードは指定した者の行動を失敗させる力で、その力でフックワイヤーはラウラ顔面のぎりぎりにそれ、直撃しなかった。さらに不運が菫を襲う。今菫が使用したスーツの力は、使用後、スーツが自動的に解除されてしまう物であった。菫はただ戦っただけだとこのままだと負けると考えて、不意打ちを狙おうとしたスーツの力を発動し、ラウラをしとめようとしたのだ。だが無駄に終わってしまった。
〔使用停止、解除します〕
(ここで死ぬのか!? 私はッ)
スーツの音声と、近づくラウラの足音を聞き、菫は自分の死を感じた。最後の菫の攻撃を避けたラウラは、倒れる菫に向かい刀をふりおろそうとした。その時。
何者かが横からラウラを蹴とばして、菫を救った。ラウラは蹴り飛ばされ地面に激突。菫は現れた者を見る。その者は黒い髪に白いジャケットを着ていた。その者は倒れる菫に声をかける。
「菫大丈夫か!」
「了か! 助かった!」
菫を救ったのはエルカード<グリフォン>使い背に翼を生やした了だった。




