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夢幻界 望み叶えるモノ  作者: はぎの
第一部 了、編
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第二十話 かわりのかわり 中編その二

「いつになったら捕まえられるんだ」


 悪態をつきながら葉月は人里の通りを一人歩いていた。夕暮れ時あってか周りに人は居なかった。まるで人里から人が消えたかのようにと葉月に思わせ、不安にさせた。

 しばらく歩いていると人影を見つけて、誰だと声をかけた。すると声に反応して人影は葉月に近づいてきた。人影の正体はマフラーをした妖怪少女ムクであった。人影がムクであったことに葉月は硬直した。


「な、なんだムクか。早く家に帰れ夕暮れ時は危険だ」


「忘れ物をして勤め先に戻ってきたの。そういう葉月は何を?」


「見回りだ治安を守るためのな」


 葉月は内心辻切をした自分が言うべき言葉ではないと自嘲した。


「そうなんだ。気をつけてね」


「……ムクあの時は本当にすまなかった。謝っても謝り切れないものだが、本当にすまなかった」


 謝罪の言葉はムクの目を見て話した。葉月は決して許されない事をしたと思っていたのでどんな罰を受ける覚悟をしていたが、ムクの返答は前と同じものだった。


「そんなこと気にしていないよ」


 暖かい笑顔で答えるムクに対し困惑する葉月。


「でも……」


 困惑する葉月に対して、ムクは優しい言葉を投げかけた。


「いいって。葉月にも理由があったんだしさ。それに前謝ってくれただろう。だから気にしなくていいよ」

 その優しすぎる言葉に対して、葉月は涙を浮かべて、土下座した

「すまない…… すまない」


 ムクは土下座に驚きすぐ立ち上がらせた。


「だから気にしてないって。お仕事頑張ってね、怪我しないでね…… あれ」


 ムクはこちらに近づいてくるものを視界の端に捉え、そちらに顔を向ける。

 近づく者は銀髪で灰色のジャケットを着た褐色の女。葉月も気がつき相手を見て驚く。

 それは女の姿が、犯人の姿の情報と酷似していたからだ。葉月は相手に話しかける。


「お前は」

 しかし葉月の言葉は、女の威圧的な言葉で遮られる。

「お前に価値は無い。処分する」


「何!?」


 その言葉と容姿に葉月は今回の殺傷事件の犯人と判断して、ムクを守る様に刀を抜き構えた。これに対しラウラは一切動じず葉月を見据える。葉月はムクに告げる。


「ムクは早く逃げろ私が何とかする」


「う、うん。気をつけてね!」


 ムクは心配そうな顔しながらそう言って、逃げるようにこの場を走って逃げた。夕暮れの通りには葉月とラウラだけになり、互いに殺意を向けた。


(こいつは何らかの力を持っているはず、力を出す前に終わらしてやる!!)


 葉月は先手必勝、相手に何もさせず一撃でかたをつけるつもりだった。もし成功すれば怪我も少なく終わらせることが出来る。


「エルカード発動!!」


<アサルト>


 葉月の周りに雷が出現し具足に変化し葉月に装備されていく。その光景を見てラウラは僅かに目を細めた。


「悪いが死んでもらう!!」


 そう叫びラウラに斬りかかった。刀は霊力により電流を帯びていた。


「ゼア”---」


 葉月の刀はラウラを確実に重症を与えることができる距離に近づき、目にもとまらぬ速さで振り下ろされた。その瞬間にラウラは行動を起こす。エルカードを懐から取り出し発動したのだ。その動きは葉月を超えていた。エルカードが鳴り響く。


<ザ・ワン>相手の実力をわずかにうわまることができる。


 <ザ・ワン>のカードは発動すれば、相手の実力をわずかにうわまることができる。その力でラウラはわづかな動作で刀を避ける。そしてそのまま葉月の顔めがけ、裏拳を放つ。葉月は避けられたことに驚きながらも、裏拳を上体を僅かに後ろに反らすことで回避。そしてラウラの足を刀で切り払おうとする。しかし


「ふん」


「なに!!」


 ラウラは大きくジャンプし避け、葉月の顔めがけて蹴りを放つ。顔蹴られて葉月はのけ反る。そんな葉月にさらに追撃を仕掛けるラウラ。

 地面に着地し、さらに前蹴りを腹部に与える。葉月はそれを直撃したが、彼女は<アサルト>の力で生み出された鎧が守ってくれるそう思った。しかしその考えは甘かった。ラウラは新たにエルカードを発動。


<ハーフ> 力や性能を半分にする。

<クリティカル> 相手の弱点をつく。


 <ハーフ>の力は相手の持ち物や力を半分にする。それにより、葉月の力と武具の性能は、半分になり、<クリティカル>は相手の弱点を突くことができるようにするカードで、葉月の体の急所である腹の溝に蹴りが正確に食い込んだ。


 通常の人間は鎧の性能が低くなったとしても、鎧の上から、痛みを与えることは不可能だ。だがラウラはやってのけた。これは彼女が人間でない事を示していた。


「ギャアア!!」


 葉月はうめき声を上げながら、後方へよろよろと下がった。


(こいつはまずい……!)


 ラウラの力に、恐怖し、額に脂汗をながした。だがまだ戦うつもりだった。


(今ここでコイツを始末しなければ、犠牲者がさらに出る。ムクにも被害がいくかもしれない!!)


 残された気力で、刀に霊力を込める。刀は雷を帯び、激しくバチバチと音を立てて光った。ラウラはそれを警戒したのか、葉月には近づかずにたたずむ。


「何もしないか…… ならッ!!」


 刀で地面を斬りつけて、葉月はラウラに上段斬りの構えで斬りかかる。雷光が葉月の姿を消して、ラウラからの視線を防ぐ。雷と共に斬りかかる葉月を見ても、ラウラは微動だにせず。


「ウオオオオオ!!」


 雄叫びを上げて、ラウラに斬りかかる。その速度はまさに雷の如く。雷の熱がラウラの肌に伝えた。その瞬間ラウラは西部劇のガンマンが拳銃を取り出す様にエルカードを取り出して発動した。



<バンディット>


 刀は葉月の手元から消え、ラウラの手の中に瞬間移動した。そして、何も持たず斬りかかる葉月に対しラウラは奪った刀で切り返す。<バンディット>のカードは発動すれば相手の物を一人につき一つ奪うことができるカードだ。 それでラウラは刀を奪ったのだ

 そんなことを知らない葉月は何が起きたのか理解できず、防御態勢を取ることも出来ず自身の死を覚悟した。そのとき、


<インフィニティ>


<テレポーション>


 エルカードの音が鳴り響き、葉月は刀の間合いから姿を消しラウラから少し離れた場所に立っていた。この出来事に葉月が困惑していると葉月とラウラの間の空間がガラスの様に砕かれ、そこから黒いジャケットを着た女アトジが現れた。


「まったくこの子は殺さなくていいですよぉ」


 アトジは葉月を指さしながらラウラの方を向き、そう苦言した。その言葉に何故だと問いかけるラウラ。

 当の葉月は何が何やらわからず呆然として話に割り込むことが出来ない。そんな彼女を置いてあとじはラウラの問いかけに答える。


「それは彼女の事が気にいっているからです」


「それだけの理由か、こんな価値のない奴を生かすのは?」


「それだけです。さっ早く別の奴を終わらしに行きなさーい」


「わかった」


「私が送って差し上げます」


 エルカードを使い、アトジはラウラ共々この場から姿を消した。残された葉月は命が助かった事にどっと汗を流し刀を奪われた自分のふがいなさを嘆いた。そしてある事に気がつく。


「夜になっていたのか」


 空を見る葉月。太陽は沈み、月が昇る夜になっていた。


 その後葉月は先ほどの出来事を管理所の所長室いるアサキシにさきほどの事を全て話した。アサキシは椅子に座りながら、葉月の説明を聞き険しい顔になった。


「なるほど、アトジが関わっていたのか」


「アサキシは関わっていないのか?」


「ない断言できる。葉月は引き続き里の警護を頼む」


「わかった」


「奪われた刀も補充してやるよ」


「礼はいわない」


 そういい葉月は部屋を退出した。


 葉月が居なくなりアサキシだけになった部屋にエルカードの音が響く。


<インフェニティ>

<テレポーション>


 音声とともに部屋の真ん中にアトジが瞬間移動し現れた。それにアサキシは、


「うわっ!?」


 と声を出し驚いた。それを見たアトジはくすくすと笑う。アサキシは赤面した。


「うわってなんですか、おかしいですね。うふふ」


「うるさいよ何の用だ」


「今起きている夕暮れの殺傷事件に関するお話がしたいなぁと思いまして来ちゃいました」


「先ほど葉月からおまえとお前のお友達の話を聞いていた。タイミングが良いな。」


「タイミングよく来たんですよ」


「犯人はお前の身内か?」


「はぁーいそうです。誰かを殺す理由は―――」


 アトジは全てを話した。それを聞いたアサキシはなるほどと納得した。


「たしかに、そうなるのかもな」


「そうなんです。アサキシさんは価値のある人だから大丈夫ですよ」


「私が価値のある人間だと言う事は知っている。しかしそれを聞いたからにはこの事件、解決しない方いいかもな」


 ため息をつき、アトジに抗議の眼を向ける。


「そのこと早く話してくれないかな。無駄な心労を負ったよ」


「貴方そんなやわじゃないでしょう」


「こう見えても繊細なのさ」


 その言葉にアトジはクスクスと笑いおかしがった。


―――事件は続き、多くの悲しみを生み続ける。

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