第十九・伍話 動くもの言わぬ物
深夜。人里にある質屋にて、店の男主人は恐怖に見舞われていた。それは客から預かった人形が入った箱ががたがたと動き出したのだ。
「なんなんだよゥ」
主人は箱の中で何が起きているのか確かめるく、恐る恐る箱に手をかける。その時。
箱の中から、人形が飛び出した。
「うああああ!!!」
それに主人は驚愕。叫び声を上げて。尻もちをついてしまう。
「…………」
人形はそれにかまわず辺りを見渡して、店から飛び出した。
「ま、まて」
男主人は飛び出した人形を追いかけようと店の外にでる。
しかし人形は夜の闇に消えていた。
―――[<第十九・伍話 動くもの言わぬ物>
昼下がりの人里、了は管理所の周りを真剣な顔をしながらぐるぐる歩いていた。しばしのち、彼女は足を止めて、管理所を眺めてため息まじりにつぶやいた。
「アサキシの行動に対処するにしても、ずっと見て回るのは無理があるよな」
そう彼女はアサキシの蛮行を止めようと、管理所をずっと見て回っていたのだ。しかしそれには限界がある。それは了にもわかっていた。だが何かしなければ心が落ち着かなかったのだ。
「はあ、いったん家に戻るか……」
そういって髪をかきながら、家に足を向けて歩こうとしたその時。
「ん」
了の尻に妙な感触が伝わった。その感触は人間の手だった。手は尻を掴み何度も揉む。了は不快に感じて、眉間に皺を寄せた。
(白昼堂々、痴漢とは。とんでもない奴だなッ)
その思考と共に尻に這う手を掴む。手から掴まれたことに動揺の反応が伝わる。そして了素早く振り返って叫ぶ。
「てめえ、何のつもりだ!! ……え」
叫ぶ了だが、相手を見て、あっけにとられた。相手の姿は、大人でも、人間でもなかった。身長は了の半分で、ゴスロリ衣装を着た、ブロンドの女の子の西洋人形だった。腕には人形の球体関節が見え、眼球はガラス細工でできていた。了は相手の正体に困惑しながら尋ねた。
「お前は一体なんだ?」
「私の名前は、メアリー。あなたは管理所の人? そうだったら相談したいの事があるの」
ガラス細工の眼球が了を見つめる。メアリーの言葉に了は掴んだ手を放して「私は管理所の人間じゃないぜ」と伝える。その言葉にメアリーは落ち込む。
「歩いている人から、管理所をぐるぐる回っている人は、管理所の事件解決人だって聞いたのに」
「困り事か?」
「うん」
そう頷いて、うつむくメアリー。その姿を見て了は、(困っている人は見逃せないな。人形だけど)そう思いメアリーの視線に合わせる様に、しゃがみ優しく話しかける。
「困り事なら、言ってくれ。助けになるよ」
「本当に!!」
了の言葉を聞いた彼女は、満開の笑顔を見せた。
「ああ、話は、落ち着いた場所でしよう」
「うん!」
「……ところで、何で私の尻を掴んだんだ?」
「? だって私の身長じゃ肩叩こうにも出来ないし、声をかけようにぐるぐる真剣な顔をして歩いているからできない。だからお尻掴んだの。お尻柔らかかったよ」
その言葉に、了は苦笑いしながら、「今度から声をかけてくれよな」と話した。
―――
二人は人里の中心にある広場に来ていた。二人は椅子に隣り合って座り、了はメアリーに尋ねる。
「何が、困りごとなんだ?」
「その話をする前に、私の事を詳しく話すね。私は人間じゃない。付喪神なの。あるお家に大事にされていた人形なのずっとずっと大事にされていたの」
「付喪神って、物が長い月日をへて、意思を持つことができた物の事か。どのくらいの期間、家に居たんだ」
「たしか、……100年ぐらい?」
「そんなに、だから付喪神になれたのか」
「ええ、ここからが私が頼みたいこと、話すね。 私の事を大事にしてくれたお家の人を探して欲しいの」
「探し者ね」
「ええ、私が付喪神になって、動けるようになったのは、つい最近の事なの。そしたら、大事にされたお家じゃなくて、質屋にいたの。私は元のお家に帰りたい。家族に会いたい」
家の事を思い出したのか、遠い目をするメアリー。家族に会いたいと言うメアリーの言葉を聞いた了は、アサキシや葉月の顔を思い出す。
(彼女たちも、家族に会いたい。メアリーと同じ。私にはないもの…… いや家族の様におもっていたアサキシがいたが、結局の所はアサキシの策略)
そう考えていると、了は改めて自分が、孤独な存在だとわかってしまった。了の心に寂しさが到来して、彼女を沈んだ気持ちにさせる。
「了? どうしたの」
了が考えていると雰囲気をメアリーが不思議がって話しかけてきた。それに対して了は「なんでもない」とはぐらかして、メアリーに尋ねる。
「良く人形の頃の記憶があったな」
「付喪神になったら、過去の記憶が頭の中に浮かんだの。 私の事を大事にしてくれた家族の記憶が」
満面の笑みで語るメアリー。その笑顔をみて、了は改めて彼女が大切にされた存在だとわかった。
「そうか、メアリーの家の人が住んでいた場所て、どんな所だった?」
「今いる里から、離れた所にあったの。でも」
「でもどうした?」
「私、そこに行ってみたけど、誰もいないどころか、家も無くて。 なんだかみんな消えたみたい」
その言葉を聞いた瞬間、了の脳裏に嫌な考えが、よぎった。
(今人が住んでいる区域は、この里しかない。もしかして、大災害の被害にあったのか!?)
了は俯きながらメアリーに「落ち着いて聞いてくれ」と前置きして、大災害について話した。それを聞いたメアリーは、震え声で否定する。
「大丈夫よ。お家の人は生きているよ。だってそんな……」
「メアリーおまえが目覚めた質屋に行くぞ」
「どうして」
「お前が質屋に来た経緯について、話を聞くんだよ。もしかしたらなにかわかるかもしれない」
了はそう言ってメアリーの手を握り、質屋に向かった。
―――
「ウオ逃げ出した人形が戻ってきた!?」
質屋の男主人はメアリーも見て、ギョッと驚いた。そんな彼の驚きを無視して、了はメアリーの事を話した。それに対して主人は、悲しい顔をしながらメアリーがここに来た経緯を語りだした。
「メアリーといったか。お前さんが来た日の事はよく覚えている。なにしろ大災害が起きて間もない頃だったからね」
大災害という言葉を聞いた、了とメアリーは顔を青ざめる。
「メアリーを持ってきた人は、大変な怪我をしていた。持ってきた理由を聞くと、家が焼けて、どうしようも無くなった。生きるため、一族が大事にしてきた人形を手放すことにしたと」
主人はメアリーを見て、申し訳なさそうに話した。
「その人はメアリーのことを必ず迎えに来ると言っていたんだがね。それ以来顔もみてない。だからこれ以上の事は俺にはわからん。メアリーの事は了にまかせるよ」
「そうですか、お話ししてくださりありがとうございました」
そう言って了は礼を述べて、メアリーと共に店の外にでた。メアリーは了に悲し気に尋ねる。
「どうして、私の事を迎えに来なかったのかしら」
それに了は、「きっと迎えるためのお金をまだ稼いでいるんだよ。大災害の被害は大変なものだから」
と答えた。その言葉にメアリーは多少の元気を取り戻して「私、お家の人に会いたい。きっと生きているよね」と了に目を向けた。了も頷く。
「そうだな。先ほどの話から、家の人に会える手掛かりがある事に気がついた」
「それは何処にあるの!?」
声を大きくして驚くメアリー、それに対して了は冷静に答える。
「それは、診療所だ。怪我をしたのなら、何かしらの治療をそこで受けているはずだ」
「本当!? なら早く行こうよ!!」
メアリーは質屋の悲しい話から逃げるように、了の手を握って、診療所へ走り出した。
―――
診療所についた了達は、診察室に行き、そこにいるミヅクに事情を話した。
「わかった。自室にあるカルテを見てくるわ」
そう言って自室に戻り、カルテを取りに行った。待っている間メアリーは家の者が元気にしていることを祈った。数分後ミヅクは悲しい顔して了達の前に現れて、メアリーに告げる
「メアリーさんの家族はもう、この世にいないわ」
「嘘よ 何言っているの」
メアリーはミヅクを答えを否定するも、ミヅクはより精細に語る。
「嘘じゃない。メアリーの家の人は、大災害の後遺症に苦しみ、自ら命を絶った」
「自らだって……」
家の者の死に呆然とするメアリー。そんな彼女に了やミヅクは何と声をかけていいのか、わからない。
重い空気が3人に纏わりついた。そんな中メアリーはポツリとつぶやいた。
「私、帰るわ……」
「帰るってどこになんだ !?」
メアリーの言葉に了が、反応するも、彼女は答えずに診療所から飛び出した。了はそれを追いかけようと、外に出る。しかし、外の通りには多くの人が行き交い、メアリーの姿を消していた。
「メアリー!! どこだー」
了は大声で呼ぶが、応答は無かった。
――――
「……どうしよう」
飛び出したメアリーは、人ごみの中を、俯きながら歩いていた。
(帰る場所もない。私を愛してくれた人もいない)
そう考えると彼女の心に、深い悲しみが湧き出た。気がついたら、全てを失っていたのだ。メアリーはこの夢幻界で孤独になってしまった。
「こんな事になるなんて…… ううう」
自身の境遇を、悲しむが、ガラスの瞳からは涙は湧き出ない。彼女は一人道を歩いていると、声をかけられた。メアリーは顔をあげて、声の方に目を向ける。
そこには女がエルカードを手に持って立っていた。
――――
メアリーが居なくなって数日が立った。その間、了はメアリーの行方を追っていたが、何一つ足取りを掴むことができなかった。またメアリーが居なくなった間、何者かによる墓荒らし事件が起きていた。
了はこの事件を解決するためにも奔走していた。
そんなある日の深夜、了はとうとう、墓荒らしを行う者の潜伏地を突き止めた。潜伏地は暗闇の森にある幻想花畑だった。幻想花畑とは一年中花や草木、果実が不気味に咲き誇っている場所で、美しくも不気味な場所だと、多くの者に認知されていた。
だが妖怪が多く住む暗闇の森に存在するため、来る人間は少ない。墓荒らしはそれを知って潜伏地にしたのだ。しかし、了は入念な聞き込み調査で居場所を突き止めた。
了は暗闇の森の中を走りながら、思う。
(死体を持ち去るのは、死者の冒涜だ!! 遺族への冒涜だ!!)
怒りともに彼女は走る。居場所を突き止められたのは、この思いがあったからだ。やがて彼女は幻想花畑にたどり着いた。
幻想花畑は、桜、チューリップ、タンポポ、薔薇、椿など多くの花々を咲かせて了を迎え入れた。
その花畑の中心地には、ばらばらになった腐った死体や骨だけになった死体が無造作に置かれていた。
しかしそれが了の関心を引いたわけではない。
了の関心を引いたのは、死体の前に笑みを浮かべている人形だった。その人形は了が探していた、ブロンドの西洋人形。メアリーだった。了は困惑しながらメアリーに声をかける。
「メアリーお前ここで何をしている」
「あれ、了? どうしたの」
声をかけられた彼女は了が居る方へ振り替える。メアリーの顔は穏やかだった。
「どうしたのじゃない。この死体はどうした!?」
「私が掘り起こしたの。願いを叶えるために」
「何ッ!?」
墓荒らしがメアリーであることに、了はショックを受ける。そんな彼女をメアリーは後ろめたそうな顔で見て、話しはじめた。
「いけないこと、しているのはわかっているけど、仕方ない事なの」
「何のためだ」
「私を大切にしてくれた家の人を、生き返らせるための」
そう言って、懐から、二枚のエルカードを取り出した。
「このエルカードは、<ネクロ>といって 死体を操ることができるの。これを使って死体を家の人の形にして、もう一枚の<メモリー>のカードの力は記憶を操る力で、私の中にある家の人の記憶を死体に植え付ける。これで死者蘇生完了」
「そんなことしても、記憶がある死体を作り出すだけだ。生き返ってもいない。お前が思い描いた操り人形なんだ!!」
「私だって人形よ。気にしないわ」
「気にしろ。メアリーこんな事はやめろ」
了の叫びにメアリーは怒りの表情を見せる。
「どうして、大切な人を生き返らせたらだめなの」
「お前ががやったことで、多くの人が悲しんでいる。死体を元の場所に戻すんだ」
「嫌よ!!」
叫び共に、メアリーはエルカードを発動した。
<ネクロ>
エルカードの音声が響き渡ると、地面に倒れていた死体たちが起き上がり了を見据える。その数およそ30体。そしてメアリーは了に向かって脅迫する。
「邪魔をするなら、ここで潰す!!」
メアリーの叫びと共に、死体たちは了に襲い掛かる。彼女の答えに了は悲しみながらも、エルカードを発動した。
<オーガ>
了の右額に鬼の角が出現し、拳は火を纏った。メアリーはそれを見て、驚きの表情を見せる。
「了って人間だと思っていた。けど違うのね!!」
「……いくぞ!!」
了は襲い掛かる死体の拳を避ける。そして腹部に拳を放つ。拳が命中した死体は大きく爆破して、他の死体たちを気付つけた。しかしそれを見ても他の死体は怯えない、了に向かってキックを放つ。しかし了はそれを予知していたかのように、高くジャンプして回避。
そのままキックしてきた死体の頭に蹴りを逆に喰らわせた。蹴りを喰らった死体の頭部は砲丸のようにふっとぶ。
その光景を見たメアリーは、了がとんでもない人物だと言う事に気がつき、戦慄した。しかし彼女は諦めない。家族を蘇らせるために
―――
「嘘でしょ……」
数分後、メアリーの視界に映るのは破壊されつくした多くの死体と、最後の一体を破壊する了の姿だった。
「これで終わりだ。メアリー」
了は戦いで服についた汚れを払い落としながら、メアリーを威圧した。メアリーは了に対する恐怖と目的が成功しなくなった悲しさで俯いた。そんな彼女の雰囲気を察してか、了はエルカードの力を解除して、優しく話しかけた。
「メアリーこれでお終いだ」
「……なんで邪魔するの」
了に涙声で問いかける。
「それは、お前がやっていたことが、他者を傷つけることだからだ」
「…………だれも傷つけていないわ」
「いやお前は、死体を掘り起こして、自らの欲望のために利用しようとした。お前が掘り起こそうとした死体には家族や親しい者たちが居た。お前と同じくな」
了の言葉にメアリーは死体に目を向ける。了と戦ってバラバラになった彼ら、メアリー起こさなければこうもならなかった。そのことを感じてかメアリーの心に罪の意識が浮かび上がる。もともとメアリーは死体を掘り起こす際に罪の意識を感じていた。やってはいけないことだとはわかっていた。
しかし、家族に会いたい一心で罪の意識を心の奥底に沈めていた。しかし、了の言葉によってそれが浮上した。
「私は…… ただ会いたかっただけなの」
「わかっているよ。だけどお前の行いはしては、いけないんだ」
その言葉にメアリーは地面に座り込み泣き続けた。
――――
「ごめんなさい。私が間違っていたわ」
数分後メアリーは泣き止み立ちあがって、了に告げた。
「そうかならいいんだ。さあ死体を元の場所に戻そう。……しまったな派手にやり過ぎた」
大きく破損した死体たちを見て、了は自信の行いに恥を感じ頭をかいた。それを見たメアリーは「ネクロのエルカードで、綺麗な状態に戻せるよ」と話した。それを聞いた了はほっと胸をなで下ろした。そして心の奥で、死体をバラバラにしたのは、〈エンド〉のエルカードの影響であること気づいていた。
「そうかよかった。ところでお前エルカードを持っていたんだな」
「うん、了と別れてからもらったの」
「もらったって誰に?」
「教えちゃいけないていわれたの」
メアリーは申し訳なさそうな顔で答えるが、了は頭を下げて「頼む。どうしても知りたいんだ」
と頼み込んだ。その姿を見てメアリーは渡してくれた者に申し訳なさを感じながらも話すことにした。
「それはね――――」
―――
後日、メアリーは了の付き添いの元、死体を元の場所に返却して、遺族たちに謝罪した。遺族たちは、今回の騒動が死んだ人に会いたいというもののため、メアリーに同情してきつく罰せず、説教だけで済ませた。その後メアリーは、人里の道具屋で働き、看板娘となった。
メアリーは多くを失ったが、また得ることができた。
了は彼女の未来に幸福があることを祈った。
―――――
深夜。ある者が、メアリーから「渡してもらったエルカードを返却する」と言われて、メアリーからに指定された場所に赴いていた。指定された場所は、幻想花畑。ある者は悠々と暗闇の森の中を進み、幻想花畑に踏み入れた。幻想花畑は、変わらず花々を狂い咲かせていた。その花畑の中心に了が居た。了はやってきた者睨み話しかける。
「よう アサキシ」
「ふん、了か」
メアリーにエルカードを渡した者は、アサキシであった。了は威圧的にアサキシに尋ねる。
「なぜおまえがメアリーにエルカードを渡した」
「<ネクロ>と<メモリー>エルカードを使えば死者蘇生出来るかの実験をするためだよ。お前のせいで、実験は失敗に終わったが。だがお前の言う通り、渡したエルカードを使っても、死者蘇生は出来んな」
了の威圧的に、アサキシは怯まず、悪びれずに答えた。
「私とメアリーのやり取りを見ていたのか」
「まあね。万が一死者蘇生が出来た時、奪い返すためにね。しかし、ばれない様に幻想花畑でやれと教えたのに。お前の捜査能力には脱帽だよ」
「意識を持ったばかりのメアリーが幻想花畑の存在を知っていたのは、おかしいと思ったが、お前の入れ知恵だったか。何故メアリーにこんな事をやらした。お前のせいで彼女は墓荒らしの罪人になってしまったぞ!!」
了は言葉の最後、声を荒げて、アサキシに抗議する。それにアサキシは冷たく言い放った。
「奴にやらしたのは、墓荒らしで私の品位を落としたくないからだよ」
「そんなことで……」
「たとえ奴の犯罪行動が見つかり捕まっても私のせいじゃないし、奴が私の事を話しても、私の地位が守ってくれる。誰も人形の事を信じない。ゴミみたいな人形の事なんてな」
「貴様ァ!!」
アサキシの言葉に了は激高。エルカードを構えて発動した。
<オーガ>
了は鬼の力を宿して、アサキシに殴りかかる。それを見たアサキシは舌打ちをして、迎撃態勢に入る。
「装着」
その言葉で、アサキシが持つ黒のブレスレットが光り輝き、パワードスーツが出現してアサキシに纏いつく。スーツの腰にはドリルソードが備えられていた。
「オラッ!!」
了はアサキシの顔に目掛けて拳を放つ。しかし、アサキシのスーツがそれをさせない。
〔エルカード発動<アクセル>〕
機械音声が鳴り、アサキシは拳を即座に避ける。逆に了の腕をつかみ、てこの原理を使用して腕の関節をへし折った。骨はバキリと割りばしが折れる様な音をたてた。
「グウウ」
腕がおられた痛みでうめく了。しかしアサキシの攻撃はやまない。
「ふん」
へし折った腕をさらに捻じれきる様に引っ張る。了の腕から骨が砕ける音と筋肉がちぎれる音が鳴る。
「グオおおおお」
しかし、了もやられぱなしではない。自由がきく足でアサキシの腹目掛けて、前蹴りを放つ。しかし
「無駄だ!!」
〔エルカード発動<アクセル>〕
再び機械音声が鳴り響き、アサキシに素早さを与えて回避させた。そしてその速さを生かして了を投げ飛ばす。その時、了の腕はブチリと音をちぎれた。了は鮮血まき散らしながら、それに舞い上がる。
「グリフォン!!」
<グリフォン>
了は地面への衝突を防ぐために、鬼の力の解除して、新たに<グリフォン>のカードを発動。了の背に鷲の翼が出現。だがしかし、
「翼なんて生やすんじゃない!!」
〔エルカード発動<アクセル>〕
アサキシは高速で腰に携えた武器。ドリルソードを了の翼に目掛けて投げた。ドリルソードはアサキシの投げた速度も相まって、矢の如く、了に接近。そして了の片翼を射抜いた。回転する刃が翼の肉を抉り取る。
「バランスが!!」
射抜かれた片翼は大きく損傷して、了は飛行能力を失ってしまった。了は痛みにもがきながら、アサキシの居る地面に墜落していく。そして地面に直撃する瞬間。
〔エルカード発動<テンペスト>〕
新たな音声がスーツが鳴り響く。アサキシの脚に暴風がまとわりつく。<テンペスト>は暴風雨を発生させるカードだ。そして暴風をまとう脚で、落下する了に目掛けて回転蹴りを放った。
「グギャ!!」
蹴りは見事、了に直撃。了の口から痛みからの叫び声が飛び出し、了の体は蹴りによってくの字に曲がる。そして地面に勢いよく叩き付けられた。了は地面に倒れて動かなくなった。
「ううう……」
これだけの暴行を受けても了の意識は、おぼろげだがあった。倒れる彼女にアサキシは話しかける。
「カードの同時発動や<エンド>の力は使わないんだな。まあ当たり前か。おまえの育ての親でもある。私を殺すことなんてお前には無理だもんな」
了はその言葉を倒れながら聞いて、自分の甘さに涙を流した。
その後アサキシは幻想花畑を離れて、メアリーからエルカードを回収して自宅に戻った。
その後了は、ちぎられた腕を拾って、なんとか自力で自宅に戻った。妖怪の力を得る<オーガ>を使用して、腕をくっつけた。
くっつけた腕をじっと見て了は
「この腕の様に、アサキシと私は元に戻らないものか……」と思い悩み悲しんだ。




