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夢幻界 望み叶えるモノ  作者: はぎの
第一部 了、編
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第十八話 了と菫

 ―――<第十八話 了と菫>


 了は菫の家に来ていた。彼女の家は人里の端に存在しており、家の外観はこの世界には似つかわしくない現代風である。菫が前に異世界からの者にリフォームを頼んだからだ。

 家の中は整理整頓が行き届いており清潔であった。了は木製の椅子に座り昨夜のアサキシの屋敷でのやり取りを話した。聞いた菫はため息をついた


「知ったのか」


「ああ、菫が秘密にしていたのはこれの事か」


「まあね」


 了は菫がアサキシ側なのか尋ねると首をふって否定した。


「じゃあ、なぜお前はアサキシの下についている」


「私はアサキシを止められなかった。それの償いとして世界を守るため管理所にいる」


 ハッキリとした言葉で答える。その言葉に了は菫が自分を責めているように感じた。



「日記を読んだかぎり、お前が罪の意識を感じる必要はない」


そう言って菫に罪はない事を告げる。だが菫は、


「そうだな…… そうだ。だけどなあ、知ってしまったんだ。」


 自身が罪深いと決めつけていた。調べていたのに何もできなかった罪人だと菫は感じていた。


「だけどそれは……」


 了は菫を擁護する言葉を口に出す前に、菫が話す。


「それに大災害で死んだ親に対しての親孝行? みたいなものでもある」


 その言葉に疑問を了は不思議に思って尋ねる。


「どういことだ?」


 菫は腕を組みながら話を始めた


「私の昔話をしてやろう。私と親は大して仲は良くなかった。私が記者になって独り立ちするという夢を持っていたからだ。それが気に入らなかったらしい」


「そんな過去が……」


「それと私が若いからという理由で外の村、いわゆる今の人里の元になった村に行くことを拒んだ」


「独り立ちして遠くへ行くのが、親として心配だっただろう」

 その了の言葉に菫は苦笑いを浮かべた。


「そうだったらいいな。で私は親の事をわずらわしく思い、何も言わず家を飛び出した。家出だな」


「そしてアサキシの村に行き、アカネの事を調べたと」


「ああ、アカネが作った兵器があると聞いてな。どんなものか調べるため、しばらくの間その村に留まることにした」


「で、大災害が起きた……」


「ああ、起きた。私は被害にあった所を調べたら私の村が被害にあっていた。村は影も形も無くなってたみんな死んでた」


「そうか……」


「家族の骨すらなかったよ」


 菫は手を組むのをやめてうつむき、頭を押さえながら話す。了は菫の顔を窺えなかったが、菫が纏う雰囲気が悲しみに満ちたものだと感じ取った。


「……仲は良くなかったんだが、私の親だったんだ。私は生きてる間、親に何もしてやれなかった、守れなかった。その事実に気がついた時は心がどうにかなりそうだった」


 大災害後、菫は毎夜毎夜、罪悪感にさいなまれて、悪夢を見ていた。その内容は家族や見知らぬ誰かが目の前で焼け死ぬというもの。そんな悪夢とアサキシによって作られた偽りの平和を見るたび、菫の心のストレスは途轍もないモノだった。そんなことを菫が了に語ると、了からどうやって負の感情を処理したのか尋ねられて、菫は答えた。


「わきだす負の感情を何とか処理するために、犠牲の上に成り立ってしまった、これからの世界を守ることが死んだ者や親のためになる。親孝行につながると思いこむことにしたんだ」


「……事件を起こしたり、騒動を起こした者へ重い罰を与えるのは、大災害の犠牲者の事をかんがえてか?」


「そうだ。多くの犠牲者を生み出して、偽りだけど世界は平和になった。そんな犠牲でできた世界の平和を乱す者は私からすれば、許せない存在だ」


「……もしかして普段からきつい言葉を使うのは、それらのストレスからか?」


「ああ。それに周りの者たちはアサキシの事を良い善人だと思っている。これもストレスでな。かといって、真実を話せるわけがない。これもストレスだ。まあ一番ストレスの元はなにもできなかった私自身だけど」


「きつい言葉を使うのは生まれつきじゃないじゃないか」


「ふふ、そうだな」


 菫は乾いた笑顔を見せる。了はいたたまれなかった。菫は虚ろな目でつぶやく。


「結局、全てが自己満足だ。でもいい事だろ? 世界を守ることは」


「……アサキシに思う所はないのか?」


 その了の言葉に、口調を荒くして答える。


「あるに決まってんだろ。奴は許せん。私が管理所にアサキシの下にいるのは世界を守るためとアサキシの動向を監視するためだ」


「監視してどうする。仇をとるのか?」


「そうだ。奴を苦境に立たせ、命を奪う」


「どうやってだ、大災害やアカネの事でも広めるのか?」


「それは今の平和の世界に悪影響を及ぼすから出来ない。他に影響を与えず、奴だけを敵にしなければならない」


「難しいな」


「ああ、暗殺も考えたが奴は強い。逃げられてもすればそくアウトだ。こちら側が悪になる」


「アトジとの関わりもあるしな」


 アサキシを倒すことの困難さに、了は腕を組む。アトジの名前に菫が反応して、アトジの事を了に尋ねた。それに対して了はこう答えた。


「私はアトジに関して何とかする。奴は駄目だ。自分の役目を理由に不用意に混乱を起こしている」


「そうか。だがアサキシは自らの願い叶えるまで、アトジが消されるのを防ぐだろう。どうするの?」


 菫の当然の疑問に、答える了。


「それを考え、アサキシに邪魔されぬ様に私は管理所から離れる。それに今アサキシの下にいるのは精神的に嫌だ」

 了がそう語り終えると、菫があることを聞いた。


「了から見て、人間を蘇生させるのは難しい事なのか?」


 菫の問いかけに了は腕を組み考えながら答える。


「私は『終わりの代行者』だから出来ない アトジは出来るかもしれないが、そう簡単にしないだろう」


「そうか。とんでもないな」


 話を聞いた菫はアトジの力に、冷や汗をかいた。自分と敵対しているであろう者が絶対的な力の持ち主であるからだ。そんな菫に了がアサキシについて尋ねた。


「アサキシは親のために大災害の様なことをまたするだろうか?」


「するさ。了お前はアサキシに対してどう思う?」


 菫は了の言葉にはっきりと答えて、逆に了にアサキシについてどう思っているか問いかけた。それに了は神妙な面持ちで語る。


「アサキシは多くのもの奪った。それを考えれば許せない気持ちがある」


「でも奴はお前を保護し人間性と人の心をあたえた」


 菫の言葉に了は顔をしかめながら、頷く。


「そうだ。だから何とか更生できないものかとも考えてしまう」


「お前がどう思おうが、私は何時かアサキシを倒す。邪魔はするなよ」


 了に指さしながら釘を打つ菫。それに対して悩みがあるモノのの、了は頷いた


「わかってる、私もそこは覚悟する」


「そうか。今後何かあったら話し合うぜ」


「……<エンド>のカードを使えとは言わないんだな」


 了は目を伏せながら菫に伝える。それに対し菫は


「嫌なんだろ。使うの」


 と簡単に答える。それに対し了は申し訳ない気持ちになってしまう。


「ああ、でも」


「<エンド>の力を使うことで、お前の人間性が失われたら厄介なことが起きる可能性が高い。それにあと何回持つのか分からないだろう?」


「ああ、わからない。あと何回持つのか、それとも次で全て失ってしまうのか……」


 じっと手を見る了。それを見た菫は何とか励ます。


「アサキシもアトジもその力を警戒して不用意な戦いはしかけないだろう」


「そうかなら、いいんだが」


「ま、今できることは特に無い。日々を過ごすだけさ。了お前は?」


「……私はこれからも事件を解決するよ。了として、個人でな」


 了はそう言いながら席を立とうとした。そんな了に菫は


「これから大変だぞ~」


 とわざとおちゃらけて笑いながら話す。菫がおちゃらけた物言いや行動をするのは、辛い現実に耐えるためだ。それに了は苦笑しながら答える。


「大丈夫だ。お前こそ大変だろう」


「……大災害からずっと大変だし構わない」


 菫のその言葉に了は悲しくなった。親殺しの元凶であるアサキシの下で彼女は何も言わず、この世界を守ってきたのを知ったからだ。そのうえで、菫にとって、かりそめの平和の中で生きなければならない。その苦悩はどれほどのものだろうか。了は想像できた。そして菫に言葉を伝えた。


「……これからは相談してくれよ。じゃあまたな菫。会えてよかった。」


「ああ私もだ、了」


 別れの言葉を交わして、了は菫の家を出た。


ポイント、ブクマ 良かったらしてほしいです。

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