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夢幻界 望み叶えるモノ  作者: はぎの
第一部 了、編
30/84

第十四話 剣と憎しみ 後編

「夢ですよね、嘘ですよね」


震え声で尋ねるがそう尋ねるが、夢でもなく幻でない事を阿藤は葉月に優しく語る。


「夢でも嘘でもありませんよ。私だってしたくありませんでした。しかし、妖怪を殺すためです。仕方ないです。葉月ちゃんあなたも妖怪が憎いでしょう」


その言葉に葉月は、涙を浮かべて震えながら、訴える。

「……憎いです。だけどこんな ……い、今のあなたには従いたくない。お願いだから元の優しい阿藤さんに戻って、ぎゃあ!?」


 しかし、話の途中で阿藤に、顔を殴られ気絶させられてしまった。葉月はだらんと床に倒れた。

 阿藤は倒れた葉月を見下ろして、「命は見逃してあげるわ…… 思い出もあるしね」そう言いって家を出た。


―――


 葉月は夢を見る。

 暦と一緒に阿藤夫妻に世話になっていた時のことを。親が殺され、とても辛かった葉月たちを支えてくれて、阿藤を本当の親の様に感じられた。そして優しい笑顔も向けてくれたことを。


「だけどもう存在しない……」


 葉月の目の前に黒いジャケット来た女が現れる。


 (だれだおまえは、私の夢に入ってきて。……そうだ私にエルカードを渡した女だ)


「そうです。貴方の役立つ物を差し上げたものです」


(役立つ物…… エルカードか)


 葉月の言葉にやらしく女は笑う。


「そうです。戦う力ですよ」


 夢はそこで覚めた。


―――


 管理所の離れの保管庫 保管庫の中は広く、武器などの物が棚や箱に整理され置かれていた。

 本来ならだれもいないはずの部屋に、暦と阿藤がいた。阿藤は部屋のランプに明かりをつけて辺りを見渡す。部屋は暖かな光に包まれ内装をあらわにした


「暦ちゃんここよ。ここでいいわ」


「ううう…… やめようよこんなこと」


 暦の言葉に阿藤は平手打ちで答えた。暦の頬は赤くはれて暦は呆然とした。


「なにっているのかしら…… あら」


「何をやっているんだ! こんなところで!」


 警棒を持った管理所職員二名が保管庫に入ってきた。それにたいして首を傾げる阿藤。


「どうして此処にいる事が、ばれたのかしら、ああ暦ちゃんあなたの仕業ね」


 暦には考えがあった。保管庫へばれずに侵入するのと同時に、恩人の凶行をとめ無ければならない。それも、問題を限りなく小さくして阿藤への罪を軽くしようとしたのだ。そう考えて、外にいた警備の幻覚を解き、ここに誘導した。職員は警告しながら阿藤にじりじりと近づく。


「武器を捨て、おとなしくろッ」


「嫌です。これかしら……」


 阿藤は警告を無視して青いブレスレットを見つける。そして手に持った。それを見て再び声をあげる職員。

「おい、返事を!」


「うるさい、邪魔です」


 阿藤は持参した刀を警備員に振るった。


―――


「はあ…… はあ」


 葉月は気絶から目を覚まし、管理所に向かっていた。管理所につくや否や、侵入者が保管庫にいると職員に伝え、突如のことに困惑する職員たちをよそに、保管庫に向かった。


「嘘でしょ……」


 保管庫に入ると中には信じられない光景が葉月の目の前に広がっていた。阿藤によって切り殺されたであろう警備員の死体、涙を流して混乱している暦。

 そして赤と緑色が混ざったブレスレットを見て笑みを深べている阿藤の姿。そんな光景を見て、葉月は茫然自失となった。


「阿藤さん、あんたなんてことを……」


「あら葉月ちゃん、お目覚めね」


 葉月の言葉に反応し、彼女はこちらを向く。彼女の体には返り血が付いていた。葉月は震え声で、止めようと言葉を発する。


「あんたが侵入したことは他の職員に伝えた。……もう終わりです。どうか大人しく」


「終わり? 何も終わってはいないわ。今から始めるのよ」


 彼女はブレスレットに向かい、言葉を発する。


「装着」


 彼女の体は光に包まれた。光がやみ、現れたのは血の様に赤いラインが刻まれた緑色のパワードスーツを全身に纏った阿藤の姿であった。阿藤はスーツの機能を読み解く。


「えっとなになに、これには思考を読み取り、自動で戦闘を継続させる機能があるのね。凄いわ」


「やめてくれ阿藤さん。もうやめて……」


 そう葉月は懇願するが、阿藤の耳には届かない。


「えっと私の考えは、妖怪の排除と邪魔するものの殲滅ね」


〔設定完了〕


 機械音声が考えを読み込んだことを辺りに伝える。


「葉月は私を邪魔するんでしょう。なら、戦いましょう」


 そう言い葉月に殺意と刀を向ける。


「やるしかないのか……」


 葉月は心の中では混乱しながらも、相手を止めるため刀を抜き構える。


「……!」


 先に動いたのは彼女だった。葉月に対し、上段斬りを繰り出す。それを葉月は刀で受け止める。しかし、互角というわけではない。相手はパワードスーツで力が増し、葉月をジリジリと押していた。


「グうううううう」

 パワー差にに冷や汗をかき、うめき声をあげて食いしばる葉月。


「本当なら私の方が力負けするのにね」


 それと対照的に柔らかい声色の阿藤。


(このままでは、やられる!)

 葉月は今の状態は不利と考え、すぐさましゃがみ込み、足を狙い斬りにかかった。


「甘いですねッ!」


「がはっ!」


 だが相手は即座に反応し葉月の顔を蹴って攻撃を防ぐ。顔を蹴られ、うずくまる葉月を見下ろしながら阿藤は余裕の声で話しかけてきた。


「あなたに剣を教えたのは私ですよ。何をしようとするのか分かります」


「チィ!」


 装甲の隙間を狙い突きを繰り出すが、刀は突き刺さらず、相手は無傷。葉月に諭すように話す阿藤。


「あなたの力なら装甲の上からでも貫けたでしょうけど、私だって封魔の者、霊力でスーツの強度を上げる事ぐらいできます」


 そして、葉月に蹴りを入れた。葉月は腹部に蹴りを入れられて、壁に叩き付けられた。

 そして痛みで気絶してしまい夢の世界にいく


―――


 アサキシの屋敷に管理所の職員が駆け寄り、アサキシに侵入者の存在と葉月が何とかしていることを伝えた。それに対しアサキシは「放っておけ、手出しはするな」と言って、職員たちを下がらせた。そして一人になりつぶやく。


「時代に合わない封魔同士、共倒れしてくれることを祈っておくかな」


―――


 夢の世界はかつての阿藤を映していた。彼女は葉月や暦を助け、まるで自身の子供の様に守っていた。そんな夢の中に黒いジャケットを着た女が三度現れ、葉月に問う。


「なぜ、エルカードを使わないんですか」


「もし使ったら……」


「もうあなたの知っている人じゃないですよ」


 女は、にやにやと笑いながら話しかけてくる。その言葉を何とか否定しようと葉月は声を出す。


「ちがう。阿藤さんは私の家族みたいな人で、だれにでも優しくて……」


「彼女は人を殺していますよ」


「…………」


 女の言葉に葉月は切り殺された人ことを考える。


 (切り殺された人にも、家族が居たんだろう。夢があったのだろう。それを阿藤さんに奪われた。 ……復讐のために、自分の願いのために)


―――



 阿藤が眠る葉月に近づき、刀を向け。


「これで終わりですね」


 何の躊躇(ちゅうちょ)もなく振り下ろした。


 部屋に金属音が響いた。そう刀は肉を斬り裂けなかったのだ。目覚めた葉月が、振り下ろされた刀を長刀と短刀をつかい防いだからだ。命が助かった葉月だが顔は暗い。そんな彼女に阿藤は優しく話しかける。


「あらお目覚め」


「悲しい夢をみたんです」


「どんな夢なのかしら」


「貴方が優しかった頃の夢……」


 この言葉に阿藤は沈黙した。話を続ける葉月。


「貴方はやってはいけないことをやってしまった」


 刀を受け止めながらゆっくりと立ち上がる。交差する刀と刀は互いの力でギギと静かに鳴いていた。


「ッ!」


 阿藤は葉月が動けることに僅かに動揺したが、パワードスーツがある故に余裕の態度は崩さない。

 そんな彼女に葉月は言葉を伝える。


「それは人を殺した事だ……」


「それは仕方がないことよ」


「そんなことない!」


 葉月は刀をそらし後方へ逃れた。 相手を、阿藤を見据えた。そして「今のあなたはもう見たくない! ここで…… 終わらせるッ!」 と涙声で叫ぶ。そしてエルカードを取り出した。


「エルカード発動!」


 <アサルト> 


 葉月の周りに雷が降り注ぐ、雷は鎧に変わり葉月に装備されていき、そのうえ葉月の刀を青く染めた。<アサルト>の力は葉月に武具が与えて、武装を強化するものだった。阿藤は葉月がエルカードを持っていたことに驚いたが、戦う意思は消えなかった。


「びっくりしたわ、エルカードなんて、でも!」

 葉月に臆せず向かい、再び刃を向け斬ろうとする。葉月も刀を構える。互いの刃が交差した。


 

 火花が散って金属音が部屋に響き阿藤は驚愕した


「え」


 阿藤の刀は葉月の強化された刀によって、切断されたのだ

 葉月は動揺する相手にすかさず、心臓部分目めがけて突きを放つ。刀は装甲をギギと音を立てて貫き心臓を切り裂いた。パワードスーツ内に血液が溢れる。


 彼女は刀を引き抜いた。すると阿藤の体はゆっくりと膝から崩れ落ちて床に倒れた。阿藤は死んだのだ。

 抜いた刀は血で真っ赤に濡れていて、葉月が人の命を奪ったことを表していた。葉月はそれを見て、恩師を殺したことを認識し、とてつもない悲しみと吐き気に襲われたが、これで終わったと思った。しかし、


「……何っ!?」


 突如のことに驚愕した。阿藤の体が立ち上がり、声を上げたからだ。阿藤からは憎悪の声が聞こえる。


「妖怪は殺す殺す殺す殺す殺す」


「な…… ぜ、まさかスーツの力か!?」


 葉月は阿藤の言葉を思い出して青ざめた。そんな葉月に阿藤だった物が殺意と増悪を持って葉月に襲い掛かる。死んだ彼女を操り人形のように動かしているのはスーツだけの力だけではなく、妖怪に対する憎しみも含まれていた。


「殺すッ!」


「ち、畜生!」


 刀で阿藤だった物の左腕を斬りを落とす。だが阿藤はまだ止まらず、憎悪をぶつけてようとする。

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す」


「ああ、頭を斬り、落とせばっ……」


 再び刀を振るい、阿藤の首を斬ろうとするが、


「う、ううう」


 刀を手から落としてしまう。生前の阿藤の優しい笑顔が頭に浮かびできなかったのだ。葉月はもう阿藤を傷つけたくなかった。阿藤だった物は葉月に組み付き殴る。


「妖怪殺す!! 家族を返せ!!」


「もうやめてくれ!! そんな言葉もう聞きたくない!!」


 (阿藤さんは優しくて……)


 子供の様に涙を流し怯えて懇願する葉月に対し、阿藤だった物は怒りを吐き続ける。


「妖怪殺すうううううううううううう」


「うああああああああああ」


 憎しみの言葉に葉月は恐怖し、暦に助けを求めた。


「暦! 阿藤さんに幻覚を、妖怪の幻覚を壁に作り出せ!!」


「えああ、わわかかった!?」


 指示された暦は動揺しながら、阿藤だった物に幻覚をかけ、壁に誘導する。 もし阿藤が生きていたのなら霊力を使い幻覚にかからなかっただろう。


「妖怪いいいいいいいい!! 死ねえええええええええ」


 阿藤だった物は壁を妖怪と誤認識し、攻撃を加える、装甲に亀裂が入るほどに。何度も何度も壁を殴ったせいか、拳は砕け使えなくなる。すると頭を壁に叩き付ける、憎しみの言葉を吐きながら。


 装甲を叩き付ける鈍い金属音が保管庫に響く。葉月と暦は恐怖しながらその光景を見ていた。

 何度も叩き付けたせいか頭部の装甲が砕けて生身の頭が現れた。


 しかし動きを止めない。壁に叩き付けられる音が金属音から、トマトがつぶれるかのような音に変わる。叩き付ける行動は頭部の半分がグチャグチャになってようやくやめて、糸が切れた操り人形がごとく仰向けに倒れた。そしてスーツから機械音声が響く。


〔戦闘続行不可能、装着解除します〕


 機械音声と共にスーツが発光し、消えていく。現れたのはもはや彼女と認識できないほどつぶれた頭と砕けた拳、胸に赤い刺し傷を残したの死体だった。葉月は暦に尋ねる。


「終わったのか、本当に終わったんだよなあ ……暦」


「うん……」


 その後戦いが終わったことを職員たちに告げ、騒動は収束した。

 翌日殺された警備員たちの葬儀が行われ、亡くなった者の関係者は涙を流し、死を悲しんだ。

 阿藤の死体は灰にされ、人里の隅に存在する寺の犯罪者や不要な者が眠る無名の墓に埋葬された。


 その墓の前に葉月と暦、ミヅクの三人が立っていた。時刻はカラスが鳴く夕暮れ。墓は寺の敷地の隅でひっそりとたたずんでいた。ミヅクは手を合わせ阿藤の凶行に悲しみ帰っていった。暦もミヅク同様に帰ろうとし、葉月に声をかけてきた。


「私も帰るよ。葉月はどお?」


「もう少しここにいるよ」


「わかった…… 葉月はこうならないでね。あまりにも悲しすぎるから」


 暦はそう言い残し墓を後にした。葉月は一人墓の前でたたずむ。


「…………」


 葉月は妖怪を憎み死んでった阿藤の事を思い出す。妖怪を憎み死んだ、何も残らなかった。


「……私も憎み続けたら、ああなるのか?」


 葉月の疑問に誰も答えてはくれなかった。


―――


 後日、昼の人里にあるろうそく屋にて、ろくろ首の妖怪ムクがせっせと働いていた。すると、ちりんちりんと店の鈴が鳴り客が入ってきた。ムクは手を止め客の相手に向かう。


「いらっしゃいませ。……葉月」


「よう……」


 店に入ってきたのは葉月であった。 ムクは思わぬ人物に面食らった。ムクを見る葉月の体は震えていて、ムクはそれに気がつき葉月に何かあったのかと不安になった。


「えっと…… なにか」


「あの時はすまなかった……」


 葉月は震え声でそう言い深々と頭を下げた。突然の事でムクは呆然としたが笑顔で対応する。


「えっとその、いいってもうあの時のことは、私生きてるし元気だし」


 その言葉に頭を上げ、ムクを見る葉月。葉月の顔は悲しい表情だった。


「なぜお前は」


「友達だからさ」


「……!」


 その言葉に、葉月は泣き出しそうになって、店を飛び出した。ムクは一人になった。


「大丈夫かな……」


 彼女は葉月を心配してポツリとつぶやいた。


―――


「なんで…… なんで……」


 (ムクの言葉が心に来る。ムクは妖怪なのに、家族を殺した妖怪の仲間なのに!!)


 葉月は泣きながら人里を駆けていた。罪の意識から逃げるように。彼女は自分自身がどうしようもない事に気づいてしまった。

続きが読みたいや、おもしろいと感じたら、評価やポイントしてもらえると嬉しいです。

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