第十三話 たまには話でも
―――<第十三話 たまには話でも>
吸血鬼ブルーが起こした青月事件が終わった頃の出来事。了は菫と一緒に人里にある甘味処で団子を食べていた。
「で、青月事件は私が解決したわけ」
了は身振り手振りしながら事件の顛末を説明した。
「ほーん、吸血鬼ねえ。本当にいるもんだな」
それを聞いた菫は、わずかに驚いた。吸血鬼が来たと言っても、元々夢幻界には妖怪たちがたくさんいる。菫の反応も珍しいモノでは無かった。そんな菫に了はあることを尋ねる。
「菫、お前なんで事件解決に行かなかったの?」
「めんどうだったからな。月が青くなるだけで大騒ぎしすぎなんだよ人里の奴ら」
菫の言葉に了はあきれた。
「菫それでも、管理所の事件解決者かよ」
「別に好きでなったわけじゃねーよ」
「え、違うの?」
了はそれを聞いて驚いた。菫が自主的に管理所に入ったと思っていたからだ。菫は空をぼんやり見ながら話す。
「ああ、わけあってな」
「わけ…… じゃあ昔なにしてたんだ」
「個人記者やっていた。この世界の謎を調べたりな」
「何か意外だな。その調べていた世界の謎って一体何なんだ」
「それはだなあ、この世界に何故、捨てられたモノ不要となったモノなどが集まるのか、ここに来る条件はあるのかだとか。……先導師アカネについてだとかな」
「そうか、なぜ辞めたんだ」
「わけあって言ったろ。まあ大災害でな、色々あってな辞めた」
「家族が死んだとかか?」
「それもあるが…… 知ってしまったんだよ」
そう語り、菫は俯いた。菫の反応に、恐る恐る了は聞く。
「何を……」
「知らない方が良いこと」
菫は顔を上げて店員を呼び、お茶を持ってこさせた。お茶は暖かで湯気を出していた。そんなお茶を菫は飲み、先ほどの事を誤魔化すかのようにつぶやく。
「ここのお茶は美味いなあ」
「なあ知らない方が良いって何のことさ?」
しかし、了は尋ねた。了の言葉に菫は真剣な目つきになり聞き返す。
「お前幸せか……」
「? 今は幸せだけど」
菫の真剣なまなざしに困惑しながらそう答える了。それを聞いた菫は沈んだ声で話す。
「なら知らない方が良い。知ったら辛い」
「辛い?」
辛いその言葉が出てきて了は困惑した。その反応を見てあることに気がつく菫。
「……お前そういえば大災害の後にこの世界に来たんだよな」
「ああ……」
「…………」
菫は少し沈黙した。了はこんな菫を見るのは珍しいと感じた。
「?」
「……言おうと思ったけど止めた」
「なんじゃそりゃ」
菫の思わせぶりな態度に、了は思わずズッコケた。
「代わりに他の事なら教えてやるよ。お茶が美味くて気分が良いからな」
「うーんじゃあ、お前の性格ってどうしてそうなの」
了の言葉に菫は勢いよくブフッーとお茶を噴き出す。そして濡れた口を手でぬぐいながら答えた。
「性格かよ……昔からこうさ、生まれつき」
「本当かー、さっきの言えないわけと関係しているんじゃないか」
「……してないねー」
「嘘くさいねえ」
「ほかの質問にしろ」
それを聞き了は探偵や刑事のドラマの役者がする様に、額に人差し指を刺しながら考えて、尋ねた
「じゃあ、あれだ。騒ぎを起こした奴に必要以上の罰を与えるのはなぜだ? 見てて気分悪いぞ」
「この世界は犠牲の上で成り立っている。なのに面倒なこと起こす奴はおもいっきりやった方が良い」
「……もしかしてその考えもワケあり?」
「ああ」
「よくイライラしてるのも?」
「ああ、何も知らずに生きてる奴や死んだ方が良いやつに対してな」
菫は小声で、自分に対してもだけど、と付け足した。了には聞こえなかった。
「なら、ワケを周りに教えたらいいじゃん」
「……教えてもどうしようもない。不要な混乱が起きる。辛いことが起きる」
「わけわからんな」
菫の言葉に悩んで思わず腕を組む。その了のしぐさを見て菫は語る。
「誰にだって秘密ぐらいはあるさ、了にもあるだろ?」
その言葉に何も言えなくなってしまう了。そんな彼女を尻目に菫が、
「今日は無駄に話し疲れた帰るわ。じゃあな聞きたがりの了」
そう言って代金を置いて立ち上がり、別れを告げる。そんな別れ際の菫の言葉に了は反論する。
「最後のはいらねーだろ。菫!」
「そうかい、そうかい」
菫はへらへら笑いながら甘味処を後にした。了はもやもやした気持ちになり、気分を変えるためこの日団子をたくさん食べた。そのおかげで腹と生活が少し苦しくなった。
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