表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢幻界 望み叶えるモノ  作者: はぎの
第一部 了、編
26/84

第十二話 祭りの下で

ここから大きく話が変わります。

 大災害、多くの者が死に傷を負った。生活が衰退した。だがアサキシが被災者たちに金や安全、仕事を与え多くの者を救済した。そう多くは―――。


 ―――<十二話 祭りの下で>



深夜 人里にある白の塀で囲まれた大きな和風の屋敷にアサキシは住んでいた。その屋敷に現在泥棒が入り、家は大騒ぎだった。アサキシと使用人が走り回り、黒ずくめで正体を隠す泥棒を追いかける。


「どこに行きやがった!! 早く探せ!!」


 アサキシの怒号が屋敷に響き渡り使用人たちをせかせる。アサキシは前回、月の民にる管理所侵入があったにもかかわらずこのようなことが起きて、なおかつ、捕まえられずにいる現状に怒っていた。


「どこだー!!」


 アサキシは庭を見る。庭は広く地面に白石が敷き詰められていた。中心には桜の木が一本植えられており、その下にアサキシが大好きな両親の墓が鎮座していた。その庭に泥棒がいた。泥棒は桜の木を支えに、塀を超え逃げようとしていた。それを見たアサキシが叫ぶ。


「てめええええ」


「!!」


 大声を上げたのには理由がある。それは泥棒の下には親の墓があるからだ。もし墓に何かあったら気が気でなかったからだ。叫ばれた泥棒は驚き、足を木の枝からわずかに滑らせ、靴についていた土が墓にかかった。


「……きゃああああ」


 それを見たアサキシは絹を裂いたような悲鳴をあげ、口から泡をブクブク―と吐き気絶した。泥棒はアサキシの叫びに再び驚きながらも、木を使い塀を超え無事逃げきれた。


―――


 次の日の昼頃、了と葉月はアサキシに呼び出され、管理所の所長室に居た。呼ばれた二人はアサキシの顔を見てギョッとした。アサキシの顔はやつれ、目にはクマが出来ていた。了が恐る恐る尋ねる。


「いったいどうしたんです……」


 思わず言葉遣いが敬語になった。アサキシは深いため息をつきながら昨日の事を話した。


「被害は少額の金と墓の汚れだ」


「墓の汚れ?」


 葉月が首を傾げ尋ねた。それにアサキシは早口で説明した。


「そうだ墓の汚れだ泥棒の靴の土とよごれが墓にかかったんだよ。これは悲劇だッ!! とんでもない悲劇だ!!」


 説明し終わるとアサキシはおよおよと床に泣き崩れた。そんな彼女に引きながら葉月は尋ねる。


「えっとお墓の汚れはとれたのか?」


「ああ!! 最高級の洗剤を使って最高級の羽毛の布で磨き、そして清らかな水で洗い流したッ!!」


「そうか後は、金だな」


 了はそう結論付けた。その言葉に勢いよく立ち上がり両手を広げ反論するアサキシ。


「金何てどうだっていい!! 金何て些細なことだ。いちばん超重要なのは墓の事だろう!! ……ああなんてかわいそうな私の父さん母さん。金の方が大事といわれて」


 話の途中にぽろぽろと泣くアサキシを見てさらに困惑しながらも了は話す。


「汚れはとれたんだよな。というか話を聞いたら泥棒もわざと汚したわけじゃない」


「汚れはとれたかもしれないけど、父さんと母さんが悲しんでるかもしれないだろ!! だから犯人を見つけ出して、メタくそにする」


 悲しみと怒りを子供の様に発散しながら了に反論するアサキシ。


「それで、なんで私たちを呼んだんだ?」


 アサキシの行動に唖然としながら聞く葉月。アサキシは涙を拭きながら答える。


「それはお前たちに泥棒を捕まえてほしいからだ」


「むちゃだな。当てはあるのか?」


 そう尋ねる葉月に、涙で目が赤いアサキシが手がかりを、了と葉月に伝える。


「昨夜吸血鬼が夜空を飛び散歩していたら、逃げる泥棒を見たらしい」


「「……それだけ?」」


 アサキシの言葉を聞いて、二人は声をそろえて困惑した。しかしアサキシは二人の困惑を無視して、命令を下す。


「それだけだ。さあ行ってこい!!」


 アサキシが呼び出しの理由にやべーなと思った葉月が、あることに気付きアサキシに聞いた。


「私たちだけか? 菫の奴は」


「あほの菫にこの事を話すと下らんといって家に帰った。あのクソ間抜けが!!」


「……さよか」


「それに今日の夜『夢災(むさい)祭り』を行うから、早期解決を願いたい」


「「はーい……」」

 アサキシの頼みに二人は力なく返事した。

―――

二人はどっと疲れながら、管理所を出た。葉月が了につぶやく。


「アサキシがあれほどまでに親思いだとはな」


 その言葉に了が困った顔で話す。


「そのとおり。アサキシは親の事になったら何でもするんだよ。菫曰く昔とんでもないことをしたらしい」


「大人がやる事ではないな。まあ、親思いなのはいいことか。でこれからどうする」


「私はブルーに泥棒について尋ねてみるよ。葉月は?」


「了がそうするなら私は人里で聞き込み調査でもしてみるよ。


「わかった。事件について何かわかったらいったん人里に合流な」


「あいよ。人里合流な」


 葉月はそう言い、歩き出した。了もブルーの館に向かった。


―――


 了が館にたどり着くと、ディナとブルーに快く迎え入れられた。ブルーは了を自室に招き入れた。部屋は前回と同じく、煌びやかなモノだった。その煌びやかさが了に生活格差を教えていた。それによって了はがっくりと肩を落としていたら、テーブルの椅子に座るブルーは、がっくりしている了に尋ねてき来た理由を聞いてきた。


「私に会いに来て何が聞きたいんだ」


「あ、すまん」


 その言葉で了はがっくりと落ちた肩の位置を元に戻し、咳払いして話をはじめた。


「お前が昨日の夜にアサキシの屋敷かた逃げる泥棒を見たと聞いてな。それの詳細を聞きに来た」


「詳細といってもなあ。遠目で見ただけさ」


 ブルーはその言葉と共に自身の目を指さす。ヴァンパイアは夜目が効くが、見ること事態は普通の人間と同様で遠ければ遠いほど、視界がぼやけてはっきりと見えない。


 ブルーの言葉に了は少し考えて、質問を変えた。


「そいつがどこへ行ったか分からないか? 方角とか?」


「方角ねぇー確か人里近くにある山にの方に行った気がする」


「そうか、ありがとう」


 了が話を聞き終えて立ち去ろうとしたが、ブルーに止められた。了は何の様だろうと首を傾げる。引き留めたブルーは自分の白くて美しい指どうしを絡ませながら話す。


「了に聞きたいことがある」


「なんだ?」


「アサキシについて聞きたい」


「なぜアサキシを?」


 意外な名前が出てきたことにわずかに驚く了。


「いいだろう別に。あくどい事は考えていないよ。大災害後の世界をまとめた人間の事が気になるだけさ」


「それならいいか。まずアサキシが善人か悪人かといえば善人だ」


「理由は?」


「アサキシの奴は大災害の被害者を私財をつかって助けて、里を作り人間や妖怪に雇用や福利

与え、教育施設や診療所を作り上げた。この事で人間と妖怪が仲良くなるきっかけを作った」


「たしかに聞けば善人だな」


 指を遊ばせながら真剣に了の話を聞くブルー。


「そのあと管理所を作って世の平和を守っている」


「すごい奴だなアサキシは。そこまでする理由は?」


「死んだ親のためらしい。親が居た世界を守り続けること、それだけ」


 その言葉を聞いたブルーは親のために行動する、アサキシに対して目を細める。


「美しい家族愛だねえ。家族思いなんだなアサキシは」


「ああ、とてもだ。家族の事になったら早口になるレベル。前に親の自慢話を延々と聞かされた」


 了も笑ってアサキシの家族愛について語る。


「フフッそれはご愁傷さま」


 それを聞いてブルーは口に手を当てて笑う。了はまったくだと笑い答えた。


「まあこんなところだ。アサキシは多くの者たちから慕われている。私が今の様なせ活が出来ているのもアサキシのお陰なんだ」


「なるほどねえ。話してくれてありがとう」


 そう言ってブルーは机からノートを取り出し 了の話の内容を書き留める。 ノートには『大災害』についての情報が記載されていた。それを了は見て何か尋ねる。

「なにしてんの?」


「お前の話をまとめているのいるのさ」


「一体何で?」


「大災害について知るために。知的好奇心さ」


「ふーん。見せてよ」


「構わんよ」


 ブルーは言葉とともに、了にノートを手渡す。了はペラペラとノートをめくり興味深そうに見る。

ノートにはこう書かれていた。


 『大災害にて空飛ぶ機械と機械の馬を見た』


 『大災害が起きる前、複数の村に赤いドクロの怪人が出た』


 『赤いドクロの怪人が出た所は、大災害の被害にあっている』


 『なぜアサキシの村だけ被害を免れた』


『大災害の影響か、アサキシの村に移民してきたものに身体の障害が発生していた。しかし不思議なことにアサキシの村の者たちは何ともなかった。この伝染病とも分からぬ事態にアサキシは石碑を立てて事態を鎮めた。


 『石碑が立てられたことにより、身体の障害は緩和され、多くの者が健康な状態に戻った。これにより人や妖怪の中にはアサキシを信奉するものが現れた』


『身体の障害の例としては、皮膚がむけ、肉体が損傷。髪が抜ける。目が見えなくなる。性機能が無くなる。酷い下痢をする。妊婦の中の赤子などに大きな障害が残る。肉体が再生しない』


『被害を受けたのは人間、妖怪と区別なしのものだった』


『妖怪と人間の中で特別な力を持つ者が、人間妖怪関係なく傷害を特別な力で取り除いた。この人間妖怪の垣根をこえた治療行為は、人間妖怪ともに歩む平和への大きな出来事であった』


 ノートの詳細に書かれた内容に了は驚いた。


「よくこんだけ調べたな。凄い」


 褒め言葉を告げ、ノートをブルーに返す。ブルーは褒められたことに、「ふふん、まあね」と鼻を高くした。そんな彼女に了は『無災祭り』について話す。


「そういやブルーは今日の夜の夢災祭りに来るか?花火とかあがるから結構楽しいよ」


「夢災祭り? 何だそれ」


 ブルーは聞きなれぬ言葉に首を傾げて、了に説明を求める。


「夢災祭りとは、大災害の死者を弔い過去を乗り越えようと盛大に騒ぐ祭りの事。人里でやるの」


「ふうん、祭りねえ」


「この祭りもアサキシが発案したんだ。気が向いたら来てみてくれ」


「わかった考えておく」


「そうか、今日はありがとう」


 そう感謝して了は館から去った。ブルーは一人になりディナを呼び出した。ディナは頭を下げて入室して、ブルーのそばに立つ。


「何でございましょうかお嬢様」


「いつもの大災害についての情報収集とエルカードの探索を頼む」


「わかりました」


 メイドは頷き、その場から離れた。


―――


「これはたき火の跡か」


 時間は進み夕暮れ時。了はブルーが教えてくれた山中にいた。あたりを探ってみると人が生活した跡を見つけた。さらにあたりを散策していると 大きな洞穴を見つけた。中を警戒しながら入ると、目の前に驚きの光景が、


「こ、これは!?」


 了の目の前には欠損した人骨と、体を大きく火傷した人間が複数人居た。火傷は骨を微かに露出させるほどのものだ。

 そんな負傷した者たちの近くの地べたに、多少の額の金銭が転がっていた。そんな者達の一人が了を見て恐怖の悲鳴を上げた。


「ヒィ! 何もしないでくれぇ」


「私は何もしない。それよりお前たちはなんだ!?」


 その言葉の発した瞬間、了は背後から殺気を感じ、振り返る。背後にいたのは木刀を持ち、頭にボロ布を巻いた少女だった。少女は睨み了に問い詰める。


「あんただれだ? 人の洞窟に入り込んで」


「私の名は了。管理所の者だ。昨日アサキシの屋敷に泥棒が入った。そいつがここいらに隠れていると聞き辺りを散策していた」


「そうかい。その泥棒がどこに居るか知っているぜ。外で話そう」


「いいだろう」


 二人は外に出た。了が少女に尋ねる。


「んでどこにいるんだ」


「それはなあ…… ここだッ!!」


 少女は叫びと共に木刀を了に振りかざした。了はそれを落ち着いて対処する。


<オーガ>


 了は鬼の力を得て、襲い掛かる木刀を掴みへし折る。了の力に少女は驚き、一瞬硬直した。それを了は見逃さない。少女に組み付き、相手の動きを封殺した。少女は恨めしそうな顔で話す。


「なぜ私の不意打ちに対処できた……」


「怪しすぎんだよ。いろいろな。何故襲い掛かってきた? なんのつもりだ?」


「言えない……」


 少女その言葉以降、何も言わず沈黙した。


「そうかいならば」


 了が少女を締め上げ管理所に連れていこうとしたとき、洞窟から先ほど了を見て驚いた怪我人が飛び出してきた。そして地面に跪いて了に懇願する。


「まってくだせえ。井戸さんは何も悪くありません」


「言わなくていい!!」


 井戸と呼ばれた少女は話を遮ろうとするが了が説明を求めた。怪我人は話始める。


「私たちは大災害によって治らぬ怪我をし、働けなくなったり人の目にさらすことができなくなったものです」


 それを聞いて了は驚きながらも、否定する。


「そんなことはありえない。アサキシは全ての者に治療をしたと」


「それはアサキシ様が騙されたからでしょう」


「どういうことだ?」


「怪我がすべて治ると周りの者はそう思っていましたが、そうじゃないとわかると家族は私の様な人間を山に置いていったのです。そしてアサキシ様にうその報告をしたのです」


「そんなことで周りの者はお前たちを捨てたのか…… 管理所の保護を受けたらよいのでは?」


 了は普通に尋ねたつもりだが、話の内容に気持ちが暗くなり、思わず声のトーンが沈んでいた。それにつられてか、怪我人も悲しい声色で話す。


「今後の生活に邪魔になるのと世間の目を気にして、家族に受けさせてもらえませんでした」


「そうか……」


 人間同士の外見で、いざこざは起きるそんなことは了も知っていたが、実際に問題に立ち会ったのは初めてだった。了は彼らの境遇を考えて悲しくなった。


「治らぬ怪我の介護というものは金銭と身体に大きな負担をかけますゆえ。そして捨てられた私たちを山に芝刈りにきた井戸さんが見つけて、境遇をしり同情して保護してくれたのです」


「そうか、立派だな井戸さん」


 了は井戸を見つめほめた。井戸は自分の事を話され恥ずかしそうに顔を赤くした。そんな井戸に尋ねる了。

「なぞどろぼうなんかを?」


「……はじめは私の金だけで介護していたが、そこをついてしまった。だから盗みに入った」

 

「何でアサキシの家に?」


「彼女は里で一番の金持ちだ。少しぐらいならバレナイかなと思って」


「まずどうして助けようとしたんだ?」


「困っている人が居たら助ける。それが人ってもんだろう」


「……そうか、そうだな」


 了はその言葉にしばし考えたのち納得した。助けた理由を話した当の井戸本人は自分への罰を想像して僅かに体を震わせていた。しかし、それを悟られぬ様に、強い言葉で了に言い放つ。


「煮るなり焼くなりすきにしろ」


 他者のためとはいえ、やったことは紛れもない犯罪。井戸にもそれはわかっていた。だからどんな罰で、恐ろしくても受け入れる。そんな覚悟をしていた井戸に、了は裁きを下す。


「んじゃあ。見逃すよ」


「ええ!?」


 了の言葉に死を覚悟していた井戸は目を丸くし驚く。そんな井戸に了は語る。


「泥棒したのは許されないけど、理由が理由だ。それにアサキシは金に関しては気にしていなかった。だから今回は見逃すよ」


 あまりにも寛大な裁きに、井戸は了に頭を垂れて感謝した。


「……ありがとう」


「だが盗みはするな」


「だけどそれじゃ生活ができない」


「そうか…… 少し待ってろ逃げるなよ」


 了はエルカードを使い、いったん場から離れた。そして大きな袋を持って戻ってきた。そしてそれを井戸に手渡す。


「なんだこれは」


「私の金、全てだ。かなりの額があると思う」


「何にィ!?」


 井戸は驚き、袋の中を見る。中には大勢の者が当分暮らしていけるほど多額の金が入っていた。

 この了の金は嫦娥の事件と風華の事件を解決した折、管理所からもらった金である。

「それを使ってしばらく生活しろ」


「あんたの金だろうッ!? いいのか!?」


「いいさ。金持って診療所にも行ってみてくれ。昔より医療が進歩しているはずだ。現状よりかは増しになるだろう。 あと金が無くなったり困ったことがあれば、気にせず管理所を頼れよ」


「どうしてそんなこまでしてくれるんだ?」


 泥棒が受ける好意ではないに困惑する井戸。そんな彼女に了は優しい笑みで語る。


「困った人を助ける。それが人ってもんだろう。だよな井戸」


「……ありがとう、ありがとう」


 了の言葉を聞き井戸は涙を流して感謝した。


「アサキシの奴には見つからなかったと話しておくよ」


「……本当にありがとう」


「いいってことさ。それじゃあ元気でな」


 そう言い、再びこの場を去った了。井戸たちは了が見えなくなるまで頭を下げ感謝した。

―――


 了が管理所に戻るころには、夕暮れと夜の境が見える時間帯で人里の通りは人がまばらだった。そして管理所の所長室でアサキシに泥棒は見つからなかった事を伝えた。それを聞いたアサキシはふてくされながら、文句を言う。


「ぬええええー絶対見つけてこいよーみつけるまでゆるさん」


「いいじゃないか墓の汚れは落ちたんだから」


 そういって了がなだめるが、アサキシは止まらない。髪の毛が乱れるほど頭を回す。


「嫌だね犯人に残酷な処遇を!!」


「勝手に言ってなさい、じゃあな」


「ぬーうぬーう」


 断られたことでアサキシは、その場でうずくまって、うめき声を響かせた。了はアサキシのうめき声を無視し後にした。了の今の気持ちは事件の内容が他者への悪意ではなく、誰かを助けるためだったことに安堵して穏やかだった。しかしそんな気持ちも管理所からでると、竜巻に飛ばされたかのように吹き飛んで行った。

 それはなぜか。それは管理所の外で怒りの形相をした葉月が立っていたからだ。


 彼女は了と別れた後手がかりすらつかめなかった。そのためひとまず了と合流するためずっと人里で待っていた。しかし今回了は情報を得た後、葉月と合流せず独断で事件を解決したのだ。つまり了が管理所に帰る今の時間帯までにずっと人里で了の帰りを一人待っていたのだ。葉月は了をにらむ。


「よう、了。私を置いて事件解決とは」


「……忘れていた。まじごめん」


「許さんなんかおごれ飯とか」


「今お金ないのさ。貯金も」


「……なんで、普段から金使い荒いのか」


「今さっき全額失った」


「……なんで?」


 了の言葉に葉月は困惑し、それに対し了は笑うしかなかった。

―――

 月が昇る夜。夢災祭りは盛大に開かれた。夜空には大きな音を立てて花火が咲き誇り、人間妖怪を楽しませた。

 里中には祭り提灯が飾られ、屋台が所狭しと並んだ。通りには人間妖怪で溢れ皆が笑顔だった。多くの者が過去をしのびながら、これからの未来に(さち)あるよう祈った。


―――

 夜空を明るく照らす花火。そんな花火を井戸たちも山の中で見て楽しむはずだった。しかし、「ぐうう……」井戸を含めた怪我人たちは酷い暴行を受けて、地面に倒れていた。そんな彼女たちをそんな姿にした者の姿が、夜空に咲く花火で照らされる。

「…………」


 花火によって照らされたのは、顔に赤いドクロを刻んだ『黒のパワードスーツ』だった。誰かがそれを着て井戸たちに暴行を仕掛けたのだ。暴行を受けた中で唯一、痛みで気絶してない井戸は、自分たちに暴行したパワードスーツを着た者に問いかける。


「……誰だ? 何の恨みがあって一体?」


「…………」


 しかし、相手は答えず、言葉を発した井戸に、思いっきり、蹴とばした。

「ギャアアアアア」

 彼女は悲鳴を上げた後、痛みで沈黙して、気絶した。パワードスーツの者はそれを見て、満足したのか目線を井戸が横たわる地上から、空に向ける。空には花火が音を立てて咲いていた。

―――


 後日、了は井戸が暴行を受けたことを知り、彼女たちが入院している。診療所に向かった。

了は診療所で、井戸が居る病室を聞くや否や、まっしぐらに向かい勢いよく、病室の扉を開ける。

病室に入った了の目にうつった井戸の姿は、顔には殴られた痣があり、手足は折られたていて、包帯で固定されていた。井戸の怪我に驚きながらも了は彼女に近づき、声をかける。


「井戸、どうしたんだ!? 一体何が」


 了の心配そうな声に、井戸は声を震わせながら答える。

「夢災祭りの夜に、変な奴に襲われたんだ」


「変な奴って、なんだ!? どんな奴だ!?」


「それは…… よくわからない。何か赤いドクロの怪人に……」


 要領えない井戸の言葉に困惑する了。井戸がパワードスーツを見ても、説明できないのは、時間帯が夜で全貌が見えなかった事と、井戸自身がパワードスーツの存在自体をよく知らないからだ。


「そうなのか…… でも井戸達の命があってよかったよ」


 了は井戸を見て心から、そう思った。井戸もその言葉に頷く。


「まったくだ。私も盗みとかやってるから、いつかこんな日が来るとは思っていたけど、まさか変な奴に狙われるなんて」


「私がそいつを見つけ出して、捕まえるよ」


その了の言葉に、井戸は否定の言葉を発する。


「別に良いよ。犯人は、盗みを働いていた私の事を、恨んでいる奴の仕業だろう。私の自業自得だ。殺されなかっただけましよ」


「しかし」


「この暴行は盗みを止める代償として、受け取るよ」


 そう言って、了に微笑んだ。それに了は「そうか お前が言うなら」と、戸惑いながらも納得した。

彼女は井戸と話を終えて、診療所を後にした。そして人里の通りを歩きながら、井戸の話の中で気になった所を思い出してつぶやいた。


「赤いドクロの怪人か。そんな妖怪いたかな?」


 井戸の『赤いドクロ』の怪人の言葉に、ブルーの大災害についてまとめたノートの内容を思い出した。


(そういやノートに、赤いドクロの怪人について書かれていたな。しかしなぜ怪人は井戸を襲った?)

 そう考えているうちに、了は井戸と怪人のつながりに気がついた。


(怪人も、井戸も大災害つながりか。 『大災害』について私も詳しくは知らない。調べてみるか)


 了は井戸の様な被害者をまた出さない様に、そう考えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ