第九話 きゅうりとプリン
たわいもない日常編。伏線
「奴に復讐しなければならない」
川の中で白川が菫との戦いを思い出し、怒りに燃えていた。
―――<第九話 きゅうりとプリン>
昼人里
満腹屋の店内には多くの人たちが食事を楽しんでいた。その人たちの中に了と葉月と菫がおり皆髪が濡れていた 彼女たちは食事を終え世間話に興じていた。ちなみに了たちが食べたのは料理は川魚のソテー。菫が笑いながら了に話す。
「しかし、水かけでエルカードを使うのは反則時じゃねーのか」
「そういう菫もパワードスーツを使っていたじゃん」
「お前達はいいよなぁそんなの持っていて。私なんかびしょ濡れだ」
葉月も話に交じりながらそう二人を羨んだ。彼女たちは再び調査で海におもむき、また遊んで帰ったのである。もちろん仕事を終えてから。
水かけは前回よりエスカレートし了はエルカードを菫はパワードスーツを使用し水をかけった。葉月それらを持っていないため、二人より水に濡れていた。濡れた服は肌にまとわりつき、うっすらと葉月の肌が見えていた。そんな葉月が二人を羨んでいると、ある者がのそのそと了たちに近づき話しかけた。
「おいお前たち」
「「「ん」」」
三人は話しかけられそちらを向く。そこに居たのは白いバンダナを頭に巻き、潜水服を着た河童の少女白川であった。白川とは山の調査で菫と戦った河童である。その戦いは菫が勝利した。
河童をみた菫は眉を八の字にして不機嫌になり、威圧的に問いかけた。
「何の様だ」
「お前に再戦を申し込む!!」
白川は威圧的な菫に怖気づかず店内に響き渡るほどの声で答えた。それに店内の者が反応し菫と白川を注目する。白川の答えに呆れる菫。
「再戦だと。いやだねぇ負け犬の言葉を聞くの。おっと間違った犬じゃなく負け河童だったな」
「!!」
菫の言葉に青筋を立てながらも黙る白川。周りの者は喧嘩が始めるのではないかと緊張がはしった。
黙る河童に対し菫は挑発的な言葉を投げかける。
「何か言ってみろよお負け河童」
「おい言い過ぎだぞ、菫!!」
「黙ってろ了。これは私の問題だ」
菫の言い過ぎた言葉を了が諫めようとするが菫は言うのをやめない。
「きゅうりばっか食っているから負けるんだ」
「そこは関係ないと思う」
「うるさいぞ葉月」
菫の言葉に首を傾げ反応する葉月。
「……んか」
「んお。なんだ河童」
沈黙していた河童が言葉を発した。菫はそれを泣き言と思ったが違った。
「私に負けるのが怖いんか」
白川は菫をバカにした表情をし、挑発の言葉を発した。それを聞いた菫は声を荒げて反応する。
「なんだと‼」
「私は本当の事を言ったのさ。菫、菫、臆病者。スーツの力が無ければ喧嘩もできない。そのうえ髪の色が金と黒。プリンみてえな頭しやがって!! このバカプリン!!」
「ない言ってんだコイツ」
「プリンて何さ?」
了は河童のあからさまな挑発に呆れ、葉月はプリンという聞きなれない言葉に首を傾げるそしてプリンとバカにされた菫は、
「テメェエーーーー!!」
顔を真っ赤にし大声をあげて、ブチ切れた。菫の反応に河童はほくそ笑みさらに挑発する。
「ふんその怒りをぶつけたいのなら、私の戦いを受け入れろ!!」
「いいだろう! ぶっとばしてやるゥ!!」
「決闘方法は根性比べだ!!」
「例えばなんだ!!」
「それはお互い一発ずつ殴り合い、先に倒れたか、参ったと言った方が負けの勝負だ!!」
「よーーーし!! いいぜ外に出るぞ!!」
「オオ―ー!!」
二人は叫びあって店の外に出た。店内に居た者も根性比べを見ようと外に出る。店の前に菫と白川はにらみ合い対峙する。菫が叫ぶ。
「わたしからいくぞおおお」
最初の一発は菫が行った。菫は大きく振りかぶり白川の顔面に目掛け殴りかかった。拳は顔面に直撃し、見ていた周りの者たちから悲鳴があがる。
「グエーーー!!」
河童も痛みに叫ぶが、倒れずよろめいただけだった。そして挑発した。
「プリン頭の拳は甘いなあ」
そう言い何ともないアピールをした。それを見た周りは歓声をあげる。河童は気をよくして菫にボディブローを放つ。
「パンチはこうするんだ‼」
「げへぇ――」
拳はみぞを直撃し菫はうめき声をあげ地に膝をついた。白川は菫を見下し、馬鹿にする。
「ワッハハ、プリン頭は弱いなあ!」
「んだとぉーキュウリ野郎がッ」
河童の一言に菫は勢いよく立ち上がり、そのままアッパーを繰り出した。拳は顎を直撃し、河童の体を数センチ浮かせ地に落とした。
「すげー浮いたぞ!」
「人間なのに」
菫の力に周りは先ほど以上に歓声が沸き菫はにやにやと頬ゆるませ喜んだ。しかし、
「蚊にでも当たったかなー」
そう言いながらファイティングポーズをとり起き上がる河童。そしてにやにやと喜ぶ菫の顔に拳を与える。
「キャオラ!!」
「グべ!?」
殴られごろごろと転がり菫は地に倒れた。それを見て河童は冷や汗をかきながら勝利宣言をする。
「ふはあはああ。勝っ」
「オラッ!!」
しかしすぐさま菫が三度なぐりかかり、河童を吹き飛ばす。だが河童もすぐさま意地で立ち上がり殴りかかる。そして菫も殴り返し、それに対しまた河童も殴り返した。二人が殴り合うたび歓声があがった。
ーーーー
「おいまだ続くのか」
「みたい……」
「なげーな……」
周りの者たちは殴り合う二人を見てそう呟いた。それもそのはず殴り合いが30分経過しても続いているからだ。周りにいた者たちはずっと続く殴り合いに飽きまばらになっていた。
そんなことをよそに殴り合う二人は、
「まだまだいけるよな!? 負け河童!?」
「当り前だろうッ!! プリン頭ァ!」
そう叫びながら殴り合いを続けた。そんな光景に対し葉月は了に話しかける。
「いったいどこまで続くんだ」
「まったく」
「了は止めないのか」
「命の危険性が出てきたら止める。へたに今とめたら後で何か言われそうだし」
了と葉月も殴り合いに飽きて、世間話を話し始めた。葉月が了に対し疑問を尋ねる。
「なあ了お前に聞きたいことがある」
「なんだ?」
「私さお前の戦い疑問があってな」
「それは?」
葉月の言葉に首を傾げる。
「なぜ戦った相手を殺さなかった? 私や人里襲撃を考えた鬼たちや強盗をおこなった月の民たちになぜ慈悲をかけた? 危険人物なのに」
その疑問に了は真剣な顔をして、静かに答える。
「……私は戦うのはいいけど、命を奪うのはちょっと嫌だなあと思う奴なんだ」
「どうしてそう思う?」
「……命を奪う事は相手の人生をそこで終わりにしてしまうから。それに生きていれば次があるだろう、もしかすると戦った相手と友達になれるかもと思っているからだ」
「甘い考えだなあ」
その葉月の言葉に了はキョトンとし尋ねる。
「どうしてそう思う? 人としての大切な考えだろう」
「そうだが、力を持つ者ほど他者の事を気にしなくなるもんだ」
「そんなことはないはずだ」
その言葉を聞いて葉月は、否定するかのような話を了に話しはじめた。
「私は命を懸けて戦う時、相手の命の事を考えたことは無かった。それはおそらく菫も同じだろう。山で河童を殺そうとしたらしいからな」
「そうなのか」
菫の行き過ぎた行動に了は驚きながらも、葉月の話に耳を傾ける。
「戦いで命がかかったとき、心の奥底に相手を絶対に殺すという意思が生まれる。それは戦いが思わっても心に残る。憎しみがな」
この言葉は、葉月が封魔で殺し合いを経験しているから出るものだ。葉月は多くの戦いで、妖怪たちを殺してきた。
「そうだけども」
葉月の経験からくる言葉に了は悩む。そんな了をフォローするかのように葉月は言葉を付け加える。
「ま、これは憎しみで戦っていた私だからもった考えだがな。だがこの考えでお前は甘いなあと思った」
その言葉に、了は疑問を抱く様に反論する。
「だけど、相手も自分も命があったら仲良く喋れたり出来るじゃないか。自身を持って言えるかも」
「どうして思える?」
「私と葉月、戦ってもこうして喋ったり、一緒に海に行けてたじゃないか」
「……それもそうだが」
了の言う通り、葉月との仲の始まりは戦いであれ、互いに命があるから今こうして話ができる。今現在の二人の関係は了の言葉を表していた。了の言葉に葉月は、何と答えようかとまよい考えていた。そんな二人に近寄る者がいた。葉月がその者の気配に感づき、目をやった。
「ん!?」
葉月は近づいてくる者を見て、驚き、怯えた犬の様にこの場から走り去ってしまった。
「一体どうした?」
それに対して了が驚いていると、葉月が見て驚いた者が了に近づいて、残念そうにつぶやく。
「あ、葉月行っちゃった」
葉月が見て驚いた者は。マフラーをし、着物を着た妖怪少女ムクであった。了はムクに顔を向け声をかける。
「ようムク」
「こんにちわ了」
「どうした葉月に何か用か?」
その言葉に、ムクは悩みを事を打ち明けるかのように、了に話す。
「いやさ、呉服屋に行ってもそそくさと逃げるからそのことを会って尋ねたかったんだけど ……やっぱり妖怪と友達は嫌なのかなあ」
そう言って悲しい顔をし落ち込んだ。そんなムクに了は尋ねる。
「ムクは葉月の事どう思っているの?」
「友達だと思っているよ」
「なら葉月の奴もそう思っているさ。でも今は過去のせいでいろいろ複雑なんだ。許してあげて」
そう優しい声で語り、ムクに頼んだ。それを聞いたムクは頷く。
「わかった…… 葉月が私の事を友達だと思ってくれるといいな」
「きっと思っているさ…… お?」
ムクと了が話している途中で殴り合っていた二人が、グエエとうめき声を上げて地面に倒れた。両者口から血を流しながら
「お前よくやるなきゅうり」
「お前こそプリン」
そう言い褒めたたえ同時に気絶した。殴り合っていた時間は実に一時間だった。
「ようやく終わったか。よいしょっと」
了は二人を担ぎ診療所に向かった。
後日 診療所で目をさました二人は殴り合いの勝ち負けで口論になり再び殴り合いあおうとしたが、院内で暴れられたら困るミヅクが二人を一撃で気絶させ、安静にさせた。
勝者はプリンの菫でも、キュウリの白川でもなく、医者のミヅクだった。
ーーーー
逃げ出した葉月はハアハアと息をつきながら甘味処の長椅子に身を休めていた。そんな彼女に声をかけた者が居た。
「よう葉月。どうしたそんな息をからして」
「こんにちわアサキシ少しあってな」
声をかけたのは手提げバッグを持つアサキシであった。アサキシは葉月の隣に座り話かける。
「なにがあったんだ」
「アンタには関係ない事さ。なんかの買い物がりか?」
葉月は手提げバッグを見ながら問いかける。バッグは大きく膨らんでいた。
「ああ『ボウガン』という道具を買ったんだ。葉月、家族関連で悩んでるなら遠慮なく話せよ」
「なぜあんたに?」
「ミヅクの奴からお前の過去を聞いてな。私もお前と同じく『家族が死んでいてとても辛いから』」
アサキシは遠い目をしながら語る。そんな彼女に申し訳ないと葉月はおもいながらも否定する。
「……私が今疲れているのに家族は関係ない」
それを聞いたアサキシは冷たい目をし、「そうかい、話しかけて損したぞ」と告げて葉月の元を立ち上がり去った。アサキシの態度の葉月は驚きながらも、取るに足らないことだと思い忘れることにした。
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