第七・伍話 赤い果実の力
――― <第七・伍話 赤い果実の力>
鬼のイバラキと戦い、了がエルカードで入院してた時の出来事。
了は自室で、飯を食っていた。献立は五目御飯である。それをうまいうまいと言いながら食べていた。それも五杯も。そして、ここでお茶が欲しいと考えたそのとき、病室の扉が開かれ人が入ってきた。入ってきたのは葉月であった。
「見舞いに来たぞ了、体は大丈夫か?」
ベッドに近づき声をかける葉月。その言葉に了は笑顔で返した。
「もう少ししたら、退院できるってさ。それにしても見舞いに来てくれるなんて、ありがとうね」
了の感謝の気持ちに、葉月は後ろめたさと恥ずかしさを感じてか、了の顔から目をそらして、答える。
「……それはお前に助けられたし、一応戦った仲間だと感じたから」
葉月が仲間だと言ったのは助けてくれた感謝の思いと、心の底にある同年代の友人が少ない寂しさから来ていた。
また彼女が寂しいと言った感情を持っている事に不思議と思うかもしれないが、元々善良な少女であり、普通の感性を持った人間なのだ。それがある時妖怪によって歪められ、大きな傷として残ってしまった。
人生を傷つけられた少女。それが今の葉月である。過去は書き換えられないのだ。
そんな葉月の言葉に笑顔で返す了。
「そっか! ありがとね、仲間だと言ってくれてさ」
その了の言葉と笑顔に、了とムクに対しての強い罪悪感に襲われた。
葉月の心の内にある妖怪への憎しみは炎は了やムクによって少しずつ静まってきていた。だがそれにより過去の過ちが彼女の心を抉った。しかし、憎しみの炎事態は消えてはおらずこの事で素直に謝罪することができない。葉月は自分が嫌になった。
了の言葉を受け、葉月が少し沈黙していると、バタンと扉が勢いよく開けられた。二人は驚き、目をやる。
「よーう、見舞いに来たぞーおら果物だあ」
入ってきた者は菫で、手には赤いザクロが入った網が握られていた。葉月や了にとってザクロは見たこともない果物だった。了がザクロについて不思議そうな顔で問いかける。
「何の果物なの?」
その問いかけに菫が偉そうに説明する。
「ふっふっ、これはだなあザクロと言った果物でなあ、美容にも良くおいしいものだァありがたく受け取れェ!」
菫は了にザクロを投げ渡し、そして手を合わせて頼み込んだ。
「なあ了、河童退治に付き合ってくんねーかな、あいつらまじイカレテてさあ」
「白川の事か、たしか戦いは菫が勝ったじゃないか。もういいだろう」
了は菫の頼みに、苦笑いして拒否する。すると菫は子供の様に駄々をこねた。
「えーもっと叩きのめそうぜ!」
「馬鹿な真似はよせよな…… ん葉月?」
了は菫の話をいなしながら、葉月の方へ眼をやった。彼女は了が手に持つ、ザクロを凝視していた。
「なんだ葉月食いたいのか?」
「! 違う、断じて違う。食べたらどういう味がするかなんて気になってもいないぞ!」
そうザクロの様に顔を赤らめ否定するが、了はザクロを渡し、食べる事勧めた。
葉月は貰ったザクロをじっと見つめる。赤く見たことも食べたこともない果実、そして菫の言う美容にも良いと言う言葉それが心を躍らせた。そして口へと持っていき食した。口内に広がる酸味とうま味、そして未知の食感。葉月はザクロに感動して叫んだ。
「美味いぞッーなんだこれは! 」
急な叫びに二人は驚き、葉月に目をやる。葉月は目を丸くしてザクロの感動の言葉を口から発する。
「かなり気に入った! すごく気に入った! まじに気に入った!」
「「お、おう」」
二人は葉月の口から繰り出される言葉に少し引いた。菫が口を挟もうとするが言葉は止まらない。
「美味し! 美味し! ザクロ美味し!菫はすごいなあッこんな果物知ってるなんて!!」
「そそれはだな、あー果物屋が勧めてきてそれで……」
暴走する葉月の言葉に菫が少し恥ずかしそうに説明をするが、葉月の耳には聞こえない。
「いやーしかしうまい! うまい! かなりうまい! かなり気に入った」
この現象が起きた原因は葉月の人生、家族と居た頃は、貧乏で、あまりそう言った果物に縁がなかったためである。それ故にか甘味や食事などに対して興味が沸かず、舌もそうった食事に慣れてなかった。この事で ザクロを食したことでザクロ感想暴走を起こしてしまった。
暴走する葉月を無視して、菫は了にまた見舞いに来ると伝え、病室を後にした。葉月も感想を口に出しながら退出した。残された了は何がなんやわからなかった。
「あ…… 服に」
菫がザクロを投げ渡したせいか、了が着ている白装束にザクロの赤いしみがついた。洗えば落ちるかなと了が心配していると、またも病室の扉が開けられた。
「なにかございましたか!?」
入っ来たのは看護師である。廊下を歩いている葉月の感想と口元から滴る赤い液体を見聞きし、何かあったのではないかと勘違いして来てしまったのだ。そして了を見た。
了の白装束に赤い染みがついていた。看護師は慌てて叫ぶ。
「きゃああああああ、だ丈夫ですか!? しゅじゆつしますか!?」
「落ち着いてくれよ!? これは血じゃなくて果汁! あとしゅじゆつじゃなくて、手術ね!」
了は慌てふてめく看護師を何とか落ち着せ何ともないと話して病室に一人になった。
一人だけになり、喧騒から静寂にかわった病室で了はげっそりした顔で呟いた。
「疲れたぜ……」
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