第六・七話 美しき月と理想の男性像
日常回
―――<第六・七話 美しき月と理想の男性像>
夢幻界にて、嫦娥は管理所の所長室でアサキシと対面していた。
エルカードを渡す代わりの情報交換を行うためである。アサキシと嫦娥は向きあ合うように椅子に座る。アサキシは嫦娥からアトジについて聞き出す。
「嫦娥さん。アトジとは何か話したか?」
その言葉に嫦娥は頬に指さしながら思案して答えた。
「エルカードという物が夢幻界にある事と、彼女についてかしら」
「アトジについて?」
「ええ、彼女が何者かについて」
その言葉を聞いて、アサキシは真剣な顔になって尋ねる。
「アトジは何者だ?」
「彼女は自分の事を、『世界の意思や力が具現化した存在』で、『代行者と呼ばれる高位の存在』と話していたわ」
「高位の存在か…… まあ、エルカードなんて物を作り出すからには人じゃなよな」
アサキシは嫦娥の話を聞いてため息をついた。それに嫦娥は首を傾げて不思議がる。
「あら、どうしてため息をつくのかしら?」
その言葉にアサキシは少し間をおいて答えた。
「……それは、アトジが高位の存在だと知ってのため息だよ。人間や妖怪なら退治できるけど高位の存在となるとそうはいかないからな。高位の存在ってようは神みたいな存在の事だろ?」
「ええそうね。それと彼女は自分の他に『代行者』がいると言っていたわ」
「へえ。まったくもって面倒だな。そんな奴らが複数いるなんて」
「また、ため息ついちゃう?」
嫦娥はいじわるな顔してアサキシを見つめる。その嫦娥の笑みは男を惚れ指させるには十分なモノだ。それにアサキシは、ため息を再びついた。
「あらまたでちゃったね」
「このため息は、貴方の容姿についてだ」
「あら?」
二度目のため息が、アトジの事でなく自分の事だと知り、目を丸くする嫦娥。
「私の容姿が何か問題でも?」
「いや、同じ女性として、嫦娥の美しさが羨ましいと思ったんだ。どうしてそんなに肌がきれいなんだ?」
「うふふ、特別な薬をのんだからね」
その言葉に手で口を隠し笑う嫦娥。その動作も気品が感じられるものだった。それに同じ女性として羨むアサキシ。
「ほんと羨ましい。まじで羨ましい」
アサキシ自身自分の美しい容姿に自信があったため、自分以上の美しさを持つ嫦娥を見て、ショックを受けた。そんなアサキシの雰囲気を察する嫦娥。
「あなたも美容について気になるのね」
「そりゃそうだ。私とて女ですから」
「貴方美人だから気にしなくてもいいのに。アサキシはモテるでしょう?」
「……生まれてこのかた、誰かと付き合ったことがない。妥協はしてるんだがなあ」
うなだれるアサキシに嫦娥は男性像を尋ねる。
「どんな男が欲しいの?」
その言葉に、腕を組みながらアサキシ。
「そうだな。私より強くて、背が高くて、頭が良くて、お金持ちで家柄もよくて。家族の事を考えてくれて、甲斐性もあって、おいしい料理も作ってくれて、家事手伝いも全部やってくれて、私の親に見せても恥じない男で……」
「まって」
アサキシの言葉にたいして、顔を引きつらせながら止めに入る嫦娥。それに対して、アサキシは
「まだ言い足りないんだが?」
「それは理想の男性像? それとも妥協の男性像?」
その言葉にアサキシはフッと笑い、
「妥協の男性像だぞ」
その言葉に嫦娥はアサキシへ呆れた目を向けた。嫦娥の目を気にせず愚痴るアサキシ。美しく権力を持ち、人々から尊敬されている彼女に言いよる男たちは多かったがこれを聞いて、みな去っていった。
アサキシは眉間を指で押さえながら愚痴る。
「なんで私彼氏ができねーのかな」
その言葉に対し嫦娥はこう思った。
(そりゃできんわ)
この後もアサキシの愚痴は続き、嫦娥を苦しませた。




