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夢幻界 望み叶えるモノ  作者: はぎの
第一部 了、編
13/84

第六話月の願い 後編

「ガアアアアアッ」


 しかし、葉月は切断されなかった。なぜなら月に行く前に用心して服に結界を施していたからだ。それにより地に伏せるだけですんだ。しかし菫の追撃は続く。


「オアアッ!!」


 菫は葉月の腹を蹴とばそうとする。が、その瞬間葉月は(ふだ)を投げ、菫に向かって投げる。普通ならば、攻撃中に受ける攻撃は回避することが困難である。しかし。


〔オートモード〕


 体を僅かにズラされ、簡単に避けられてしまった。菫の蹴りが葉月の腹に直撃した。葉月は蹴とばされ勢いよく吹っ飛び壁に激突。葉月は血を壁に彩り、地に倒れる。

 菫は攻撃を避けることが出来たが、無傷とは言えず、自動回避によって苦痛の声を上げた。


「…………」


 葉月は倒れながらも考えを巡らせた。


 (どうして避けられる。オートモードとやらの力か、しかし奴はそれを使うとそれの代償か動きが鈍くなる。現に奴は私に追撃ができたはずだがしてこない。菫は私を蹴とばした位置に(とど)まっている。使う度、体に負担をかけてしまうのか)


 考えながら刀を杖にし立ち上がる。


「イライラさせやがる……」


 葉月が立ち上がるの見て菫は少し焦り始める。 

 (封魔の奴まだ動けたか。 私は自動回避のおかげで体の負担がひどい、次で決着をつける。自動回避はあと一回だけだ。)


 菫の考えをよそに、葉月は刀を(さや)にしまって鞘に札を貼り付ける。札の力と霊力のによって、刀は雷を帯びていく。


「勝機は ……ある」


「クソクソが、イライラさせやがるなァ」


 葉月の行動に心底イラダつ菫。しかし菫にも勝算はある。


 (居合切りを狙っているが私には自動回避がある。避けてぶっ殺してやる。)


 そう考え葉月に向かい走った。パワードスーツのおかげで人間以上の速さだ。


「…………」


 葉月は構えを保ち、無心になっている。そして両者はデッドゾーンに入った。


「……!」


 鞘から刀が引き出される。

 勝った!菫は心の底から思った。しかし刀は菫を襲わなかった。襲ったのは雷の光であった。


〔オートモード〕


 光を攻撃と誤認識して、後ろに僅かに下がる回避行動をとってしまう。そして肉体にダメージを受けて体が一瞬だが硬直してしまった。菫は罠に仕掛けられたことに気がつく。


「しまったッ!」


 次の瞬間、菫を襲ったのは光で無く刃であった。ギギキンと音を立て火花が散った。葉月は菫の体を真一文字に斬ったのだ。


「ガアーー!!」


 菫はうめき声を上げて倒れた。倒れた菫のパワードスーツから音声が響く。


〔武装解除〕


 すると装甲が切り裂かれたパワードスーツは音声と共に消えた。中から現れたのは紫色のTシャツにジーンズを着た黒髪に金髪が混ざった、現代でいうギャルの様な少女であった。菫は死ななかったが痛みによって気絶している。葉月もまた戦いの疲れからか地面に腰を下ろしつぶやく。


「あとは、了にまかせるか」

―――


 そのころ、了は中華風の宮殿らしき建物にいた。宮殿の外装は朱色を基調に雅な色彩で彩られており、支える柱には鳳凰や竜など彫刻がなされていて、住むものを楽しませる作りにになっていた。

そんな中で一人呟く了。


「誰もいないのか」


 (さきほどから探索しているが、人っ子一人いやしない。)


「ん、なんだこれ」


 了が見つけたのは大きく描かれた絵画であった。読み込んでみると何処かの国の女性が何かを飲みそれによって月にいるらしい。


「私は馬鹿だからこれ以上はわからんな。しかしこんな物誰が……」


ゲコ …… ゲコ …… ゲコ


 了の後ろから、カエルの鳴き声が聞こえた。了は何故月にカエルの鳴き声が聞こえたのかと驚き振り向くと一匹のカエルが居た。そして不思議に思い、カエルを凝視する了。


「!?エルカードッ」


 カエルはエルカードを銜えていた。しかも盗まれたカードであった。


<ヒューマン>


 カエルはエルカードを使用した。すると辺り一面光が走った。たまらず目を閉じる。やがて光が止み目を開けるとそこには、絶世の美女がたたずんでいた。

 その者の髪は黒く美しい長髪で、顔のパーツも整っていた。肌は何一つ染みやあざがなく、透き通っている。唇には(べに)が引かれていた

 そんな美女が着ている服も豪華な刺繍が施されており、服のデザインは古代中国の妃が着る様な物で高貴な者でしか着れない服であった。

 彼女の美しさは、男に恋心を抱かせるものだった。

 そんな美女が急に表れたことに了は困惑しながらの話しかける。


「何なんだお前、カエルの精霊か」


「違います。私の名は|嫦娥≪じょうが≫。月を表す者」


 嫦娥とは中国神話に登場する伝説の登場人物である。了はこの事を知らない。生まれた世界が違うからだ。


「表す者……」


 了はいぶかしんだ。嫦娥(じょうが)は話始める。


「その昔、私はある事によって不死の霊薬を飲みました。それにより生と死の(けが)れから解き放たれました。しかし私が薬を飲んだ罪は重く、神にガマカエルさせられました」


 ホホホと笑い口を隠す。その笑いも男性にとっては刺激なものだった。


「そして私は、月の内側に身を寄せました。カエルになる前に都を建設出来てよかったです」


「ここは月の内側だったのか。どおりで星が見えないわけだ」


「カエルにされ、失意の日々しかし希望が生まれました」


「エルカードか」


「そうエルカード」


嫦娥(じょうが)はニコニコしている。この笑顔を男性が見れば間違いなく彼女に味方するだろう。しかし了は女。どこでそれを知ったと冷静に尋ねる。すると嫦娥はここで知ったと答えて、了はそんなわけあるかと否定した。

しかし、嫦娥(じょうが)は本当のことと言い、知った経緯を語り始めた。


「本当ですよ。いつものように涙でくれた日々を送っていると、目の前にアトジと名乗る方が現れました。」


「何!?」


 アトジの名が出たことで、奴は月にさえ現れるのかと了は大変驚いた、

 了の驚きを無視し、アトジについて語る嫦娥(じょうが)


「彼女は私にエルカードの力をみせ、そしてカエルから人間へ戻るカードがあると言いました。そしてそれがある地、夢幻界にあるとね」


「それで月兎に盗ませたたのか」


「ええ、私をあわれんで手伝ってくれる子たち」


 目を細める嫦娥、彼女は身の回りの世話をしてくれる兎たちに恩を感じていた。


「なぜこの(みやこ)に人がいる気配がない」


(けが)れ人を嫌って建物に結界を張り閉じ籠っちゃったのよ。私はいいけどね。貴方達には都合が良かったわね」


「ふーんそっか。嫦娥(じょうが)、エルカードは私たちの世界の物だ。返して貰いたい」


「聞こえ無いわ。(けが)れた者の言葉なんて」


「何だと」


 嫦娥(じょうが)侮蔑(ぶべつ)を含んだ声で拒否した。嫦娥(じょうが)の態度の了も険しい顔になる。嫦娥(じょうが)は手に持つエルカードを見ながら話す。


「夢幻界、そこははきだめが集まる世界。そんな所にこんな素晴らしい物があるなんて、それだけで罪よ、だから……」


「渡さないと言うわけか」


「勿体無いもの、私が持ってなきゃね」


 両者の間に、不穏な空気が漂った。


「なら力づくで取り返すぜ! それと言葉の撤回もな!」


 了は剣を構え襲いかかる。しかし嫦娥は余裕の表情である。


「あら、怖い」


 彼女は斬撃を宙に浮いてかわした。そして宮殿から空に向かって飛び出す。そして古都を見渡せる位置に来た。


「やはり、人の姿は良いわ。自分が素晴らしい存在だと分かるもの」


 嫦娥はそのまま古都を見渡し呟いた。しかし、エルカード<グリフォン>の力で翼を生やした了が嫦娥に対して、突撃を仕掛ける。嫦娥は了が翼を生やしたことに、まるで催物(もよおしもの)を見るかの様に驚いた。


「あら、貴方、妖怪だったの」


「返せッ!」


 了はスピードを出しキックを放つ。しかし嫦娥はそれをヒラリと難なく避ける。


「私が参ったと言えば返してあげるわ」


「そうかいッ!」


 了は反転し剣をでの攻撃を試みた。嫦娥は笑みを剣にわざと当たりに行く。剣は先ほどとは違い、嫦娥の頭を砕いた。顔は粉砕され血が飛び散る。しかし

 嫦娥の頭は一瞬で元に戻ったのだ。了は驚愕し、嫦娥はそれが見たかったと言わんばかりの表情を見せる。


「私は不死なのよ、頭を砕かれようと死なない」


「クソ!! わざと当たり行ってまで証明することか!?」


「うふふ。貴方は私に勝てないことを教えたかっただけよ」


 悪態をつく了を笑いながら、嫦娥は服の袖から新たにカードを取り出す。


 <ガルーダ> 炎の翼を得る 


 カードが発動したと共に嫦娥の体が炎と共に爆ぜた。そして再生する。


「うおおおお!?」


 了は爆風によって地面に叩きつけられた。痛みに耐えながら飛んでいる嫦娥を睨む。


「グウ。それは盗んだカードじゃないな」


「ええ、アトジにもらったのよ防犯用としてね」


 嫦娥の背には<ガルーダ>のエルカードで得た光り輝く炎の翼が存在した。了はその姿を嫦娥の容姿もあってか美しいと一瞬だが見惚れた。だがそれを振り払って、戦いの思考へ戻す。


「いくぞ!! 嫦娥」


 了は再び空を飛び嫦娥に接近する。先ほどと変わらぬ攻撃と判断して、炎の翼を使い炎風を起こして、ドームの様に自らを守る。嫦娥はつまらなそうに言葉を発した。


「バカな子」


 しかし了は嫦娥の言葉を否定して新たにカードを発動する。


「そうかな」


<フェイク>


 音声が鳴り、了とうり二つの分身が出現。そのため翼は消えて飛行能力は失った。だが勢いは消えていない。分身と共に嫦娥に突撃。炎風に接近したところで分身を盾にし、炎風を防ぐ。

 分身は火だるまになったが、了を無傷で嫦娥の斜め下に届けさせた。だが、距離が僅かに届かない。

 突撃は失敗。嫦娥はそう思い込んだ。しかし了は違う。


「セイッ!!」


「何!?」


 分身を踏み台にして嫦娥に迫ったのだ。流石の嫦娥もこれには目を剥いた。


「デヤーーーーー!」


 剣を左手で逆手に持って、了は嫦娥の頭に突き刺した。剣は嫦娥の頭を貫く。しかし嫦娥は死なず、余裕を保っている。了をあざける嫦娥。


「無意味なことをッ!」


「意味はあるさッ!」


<ドラゴン>


 分身を消し新たにカードを発動する了。剣を持ってない右手にドラゴンガンドレッドが出現。

「オラッ!!」


 再生中の嫦娥の腹を右手で殴りそして、ガンドレッドのドラゴンの装飾にある口部分を開けて、腹に喰らいつけた。嫦娥の腹は食い破られてしまう。


「グ……」


 了の行動に彼女はイヤの予感を感じ、何とか離そうとするが剣とガンドレットが離れさせない。


「炎でなら!」


 爆風によって引きはがそうとしたが火の勢いが弱くなっていて出来なかった。動揺する嫦娥。


「な、なぜ!?」


「悪いな。ドラゴンの力は水を操るそれに……」


「? ……ゴバア!?!」


 嫦娥の口から大量の水が吐き出た。了がドラゴンの口から大量の水弾を撃ち込んで嫦娥の体を水で満たしていたのだ。通常の人間なら体の異変に気がつくが、不死者は死なないため肉体の異常に鈍感である。ゆえに、了の攻撃をモロに受けてしまった。

 不死者であるがゆえの慢心、これを了は利用した。嫦娥は一気に劣勢に追い込まれてしまう。


「落ちろッー!」


 了は嫦娥を下にし地面へと落ちる。嫦娥は空に飛ぼうとしても大量の水によって意識が集中できない。

そして地面に落ちた。嫦娥の体は落下のダメージで凄惨な状態になる。しかし嫦娥は不老不死、再生していく。


「これで終わりだ」


 了は再生していく嫦娥の体にさらに大量の水弾を送り込む。これによりいくら再生しても水による溺死、大量の水による内臓圧迫からの内臓破裂。

 そして大量の水による再生の阻害。嫦娥はもはや身動きが取れなかった。了は嫦娥に問いかける。


「嫦娥、何か言いたいことはあるか」


「参ったわ…… ごめんなさい」


 それを聞き了は剣を引き抜き、カードも解除した。了は立ち上がり服の汚れを払った。


グス…… グス


「ん?」


 了は嫦娥を見た。嫦娥は大粒の涙を流していた。


「せっかく人に…… 戻れたのに……」


「…………」


 了はそれを見て少し考える。そして嫦娥に提案した。

――――


 夢幻界 暗闇の森


「どうなるかな……」


 森の中で月兎は空を眺めながら時間をつぶしていた。途中、人狼やろくろ首にあったが何とか元気にしていた。月兎は泣き言をつぶやく。


「早く帰りたいな……」


「少しまってくれないかしら?」


 月兎は突然の声に驚いた。声の方に向くとそこには了、葉月、菫、嫦娥がいた。驚きで声を上げる。


「嫦娥様なぜここに!!」


「少し話がありましてね」


 嫦娥の様子は落ち着いてた。月兎たちは嫦娥に何もなかったことを安堵した。隣にいる了は葉月の怪我について尋ねる。


「なあ葉月その怪我って」


「ああ菫と戦った」


 了の言葉に葉月はバイクの上で気絶している菫を指さす。


「助けた月兎が怪我の手当てをしてくれた」


 葉月の体には包帯がまかれていた。

「そうか」


「だが妖怪すべてに気を許したわけではない」


 葉月はぶっきらぼうに話す。彼女はそう言うが妖怪を助けたことが、了にとって嬉しかった。

 もしかしたら、妖怪を許し少しでも歩み寄れればムクとの関係も良くなるだろうから。


「私を半殺しにしておいてかあ?」


 話している横で目を覚ました菫が茶々を入れる。


「まあ、お前はやり過ぎたみたいだし」


 了はそう言って菫をなだめる。そして嫦娥の方を見た。


「では嫦娥さん管理所へ行きましょうか」


――――


 管理所 所長室

 了と嫦娥が今回の騒動を話した。了の提案とは嫦娥がアサキシに謝りに行って、エルカードを譲ってもらえ得るように頼むというものだった。アサキシは了と嫦娥の話を聞き盗んだことに納得する。


「それが嫦娥さんが盗んだ理由ですか」


 嫦娥はその言葉に肯定し、頭を下げる。


「どうか、ヒューマンのエルカードを譲ってくだいませんか。勿論ただでとは言いません」


「私からも頼むよ。アサキシ」


 了も頭をさげアサキシに頼み込む。嫦娥の涙を見て同情したからだ。元の人間の姿からカエルに戻るのは誰だって嫌だろう。


「了は黙ってろ。嫦娥さんはエルカードの代わりに何かくれるのか?」


「はい。それは月の情報・技術の一部提供そして友好です」


「ふん。悪くはないな」


 嫦娥の言葉に手を顎に当て思案するアサキシ。そんな彼女に頼み込む嫦娥。


「望むものは人になるエルカードだけなのです。どうかお願いします……」


 それは嫦娥の心からの願いだった。アサキシは少しの沈黙の後、


「……わかった、譲渡しよう」


 譲り渡すことに決めた。嫦娥はその言葉に喜びの声を上げた。


―――


 その後

 嫦娥と月兎は月に帰った。そのうちまた来たいと話した。葉月と菫は診療所に通院することになった。怪我がひどかったためである。


 夜

 了は自宅の丘の上で月を眺める。


「月の内側といえど、あそこに行ったんだよな」


 夜の空に浮かぶ、月を見つめる。月は変わらず美しくあった。

続きが読みたいや、おもしろいと感じたら、評価やポイントしてもらえると嬉しいです。

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