第一章⑤ 『見た目だけロリなお風呂回(ボロンもあるよ)!』
服を脱ぐ。
言葉だけ聞けば、なんてことはない。誰しもが日常的にやっていることだ。
いちいち自分の服を脱ぐことに興奮する人間など、いない。
風呂に入る。
これも、日常の一部にすぎない。
一日の活動で汚れた身体を清める。ただそれだけの行為だ。
……そう。そのはずなのだ。
なのに、どうして、俺は――
「――っだぁぁ! やっぱダメ! まだ心の準備ができてない!」
持ち上げかけた裾を、ぐいと戻し、俺はロリ声で叫ぶ。
二人が出て行ってかれこれ5分。ずっとこの調子だ。
だって仕方がないじゃん! いくら夢とはいえ、女の子の裸だよ!?
というかもはやこの夢、リアルすぎて、夢ってこと忘れちゃうレベルだし!!
「しかも……なんでこんな服……」
そう、問題は服にもある。
これがもし、スカートにTシャツといった普通の私服ならば。
俺は、一枚脱ぐごとにゆっくりと心を慣らし、最後は余裕を持って、パンツに手をかけられたに違いない。
しかし、俺が今身につけているものは、もはやただの布。
即ち……軽くぺらってめくるだけで、大事なところが全てさらけ出されてしまうのだ! 心の準備もクソもねぇ! ちくしょう!
「先に必要なもの用意しとくかな……」
最重要課題から一度離れ、丁寧に衣類等が入れられたかごを取り出す。
「身体洗うタオルと、バスタオルと……」
おぉ、下着までちゃんと入ってた……。
これって、シオン使ったやつかな……。
なんて罰当たりなことを考えていると……。
ふと、視界の端に人の気配を感じた。
「っ!?」
びっくりして気配のした方向をみると……俺のことをじっと見つめる、一人の幼女が。
「えっ、だれ……って、これ鏡じゃん」
ちょっと安心しながら、俺は鏡に歩み寄る。
そういえば俺、ロリになった自分の顔、まだまともに見てなかったな。
そう思い、改めてちゃんと鏡を覗いてみる。
――超かわいいじゃねぇか!!
サミュちゃんやシオンに引けを取らない、端整な顔立ち。それでいてきちんと残る、ロリ特有の柔らかさ。
こんなに美しいものが、こんなに汚れてていいわけがない!
一秒でも早く、このきれいな金色の髪をとかさなければ。
一瞬でも早く、この身体に付いた土埃を洗い落とさなければ。
不思議と、そんな使命を感じた。
ここで立ち止まっていることはきっと、この洗練された美に対する、冒涜だ。
俺は、やおら服の裾に手をかける。もう躊躇してる暇はないッ!!
そして――
「うおぉぉぉぉぉ!!」
雄叫びと共に、がばっ、と思い切りその手を持ち上げたのだった。
謎の責務感から、服を脱ぐという難関をクリアした俺は、極力見えないよう、シオンに借りたタオルで前を隠しながら、大浴場のドアを開けた。
「おぉ、広い!」
中は、まるで温泉のように、並べられたいくつものシャワーと大きな浴槽があった。
ひとまず、シャワーの前のイスに座る。
目の前に鏡があるのが、ちょっと難点だな。
付いてるのがあたりまえなのだが、いかんせん目のやり場に困る。
さて、ここからどうするか。
「たしか、青が身体って言ったよな……」
まずは、身体の前のタオルは離さないようにしながら石鹸を取り、別のタオルを泡立てておく。
それから、蛇口をひねってシャワーを頭からかぶり、目を瞑ったまま、さっきのタオルを全身にこすりつけた。
んほぉ! 幼女の肌ぷりぷりスギィ!
よ、よし。これでひとまず泡によるガードができたはずだ。特に大事な部分には、たっぷりと乗せたからな。
俺の技量を信じて、おそるおそる、うっすらと目を開ける。
「うっ……まぁ、多少は……」
泡の隙間から申し訳程度にのぞくくびれや、見えそうで見えない焦しプレイ感にちょっとキたが、全裸よりはマシか。
――見ようによっては、むしろこっちの方が扇情的かもしれないが……。
やはり直視は無理そうなので、必要最低限の視界で赤いボトルに手を伸ばす。
2プッシュしてシャンプーを手に出してみはしたが……長い髪の洗い方なんて、俺知らないぞ。
向こうで見たことがあるCMを思い出して、梳くように洗ってみるが、これ洗えてるのか?
とはいえ、それ以外にやり方も思いつかないので、慣れない手つきで一通りやってみる。
たっぷり5分は使って、なんとか洗い終えた。
途中でちらっと見えるうなじが妖艶で、あらためて、女の子のからだって、多感な思春期男子には凶器だと思いました。
「……だいぶ時間たったかな」
脱衣所でチキってた時間も含めると、結構過ぎているはずだ。
待たせちゃう前に早く済ませよう。
少し急ぎめでもう一度、今度はもっとしっかりと身体を洗う。シオンの貸してくれた柔らかめのナイロンっぽいタオルが、ちょうど気持ちいい。
目を瞑って上半身を何とかクリアし、次は問題の下半身。
あわあわタオルを持った俺の手が、理性と好奇心の間で揺れ動く。
夢なんだから許されそうな気もするが、あまりにリアリティありすぎて、背徳感がハンパない。
こ、ここは無難に、太もも辺りから攻めていくべきか……。
俺は、視線を天井に向けたまま、左太ももめがけてゆっくりと腕を伸ばす。
と、そのとき。
ぺちんっ! と、生ぬるいなにかが俺の右腕に当たる感触がした。
「ん? なんだこれ」
反射的に、俺の視線が下りる。
果たして、そこにあったもの。その正体は。
――泡の上に鼻先だけちょこっとのぞく、かわいらしい亀さんの頭、すなわち……
「……………………なんで?」
————ち〇ちん、だった。