序章 『原初の願い』
復活しました、河ノ竜です!
やっと立ち直りました。よろしくお願いします!
今週は土曜日も更新します。
『かわいい女の子になりたい』
男子たるもの、誰しも一度は思ったことがあるだろう。
「はぁ~~、美少女に転生したい……」
ここ極東の島国、日本でも、例に違わず、そう嘯くティーンエイジャーがいた。
夜の2時過ぎ。
スマホ片手にベッドでごろごろ転がりながら、青年は続ける。
「超絶かわいいロリっ娘になって、異世界転生したいぃぃ……」
ぼふっ、と大の字に手足を広げ、はぁぁぁ、と大きなため息をひとつ。
「なんで男は女の子じゃないんだろ……」
ソクラテスもびっくりな哲学だ。
彼のスマホに映し出されているのは、カラフルな髪のちいさな女の子たちが、水辺できゃっきゃうふふしているイラスト。
今し方ツイッターで回ってきたそれに、再び熱い視線を向け、もう何度目になるか分からないため息をつく。
「はぁ……君たちが羨ましい……」
だいぶ重症っぽい台詞に続けて、ふぁぁ、と大きなあくびが。
「……寝よ」
言って、彼は部屋の電気を消した。
『かわいい女の子になりたい』
その願いは、決して叶うことはない。全て、作り話でしかない。
そんなことは分かっている。
でも――
ゆっくりと目を閉じる。
明日は土曜日、正真正銘の休日だ。
気が済むまで、たっぷりと惰眠をむさぼるとしよう。
泡沫の――幼女になった妄想を、張り巡らせて。
願わくば……目覚めたとき、それが現実となっていますように、と。