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種田山頭火のおいしい俳句  作者: 種田潔
鰯さいても誕生日
7/26

しじみ: しじみ汁で晩酌を

ながれ掻くより澄むよりそこにしゞみ貝(昭和7年9月13日の句)

砂掘れば水澄めばなんぼでも蜆貝(昭和10年9月12日の句)

食べやうとする蜆貝みんな口あけてゐるか(昭和10年9月12日の句)


昭和7年9月13日の日記。

朝3時に起床した山頭火は、朝酒を独り楽しんでから、うまく炊けた御飯をたらふく食べた。

午後、「昼ご飯を食べてから、海の方へ一里ばかり歩いて、5時間ほど遊んだ、(略)蜆貝をとつてきて一杯やる。」

山頭火が掘ってきた蜆は椹野川ふしのがわのものである。この川の河口ではいい蜆が取れるのである。

この椹野川が流れる山口県周防地方では、蜆は主に朝夕の汁の実にするが、時には茹でて身をはずし佃煮にしたり、葱と酢味噌和えにしたりする。

「蜆貝をとつてきて一杯やる。」というからには、私なら葱と酢味噌和えにして肴にするだろう。しかし蜆汁で一杯やるのも捨てがたいし、第一胃に優しい。手間もかからなくてすむ。

「酢味噌和え」か「蜆汁」か、私は二つの選択肢を前にハムレットの心境に陥った。


昭和10年9月12日の彼の日記にこれに対する答えを発見した。

この日の午後も、山頭火は蜆堀りに出かけた。1時間かけて5合ばかりの蜆を掘った。蜆をいうものはずいぶん沢山あるものだと感心している。そして

「蜆汁をこしらえつゝ、(略)思はず晩酌を過して、ほんたうに久しぶりに、夜の街を逍遥する、」

蜆汁で一杯が山頭火流であったのである。

それにしても昭和7年が9月13日、昭和10年が9月12日と3年を隔ててたった1日の違いがあるだけで、同じように蜆を掘りに出かけ、蜆の句をものするとは、季節の流れとともに生きていた山頭火の生活がうかがわれる。


私の住む広島のスーパーに並んでいる蜆は、宍道湖のものが多い。

黒々として、ミネラル分の豊かなこの蜆の味噌汁は我家の朝の定番である。

宿酔の朝など、これさえあれば、今日も一日働こうと言う元気が出てくるものだ。

広島をながれている太田川でも蜆が取れる。

これは宍道湖のものと比べて粒が大きく、生息地の砂地が白いせいで殻が茶色をしているのが特徴である。

近所の川で蜆漁をしているのを時々見かける。

やや昔の話になるが漁師の一人は犬を相棒に連れていた。

ラッキーと言う名の黒いラプラドールで、潜水を特技とし、主人が蜆漁をしている傍らで、川に潜っては空き缶などをくわえて来て、川の環境美化に貢献していたと聞く。

しじみ犬とよばれていたそうな。


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