表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
種田山頭火のおいしい俳句  作者: 種田潔
鰯さいても誕生日
5/26

グリコ: グリコがうまい

うらうらこどもとともにグリコがうまい


昭和13年3月17日の句である。

この頃、山頭火は大分県を旅している。この日は朝湯朝酒を楽しみ、中津から宇佐へと向かった。

朝から一片の雲もない快晴だ。

宇佐で山頭火の目にとまったのは丘、白壁、宇佐餅を売る店。

宇佐餅とはなんだろうと思いネットで調べたところ、地元で作る紅白の餅を指すようだ。


さて、この項の主題のグリコは、この日山頭火が旅をしている大分の隣、佐賀県の出身である江崎利一が創始者である。

1919年(大正8年)、郷里の有明海沿いの堤防で漁師たちが牡蠣の煮汁を捨てているのを見てひらめいたそうな。

牡蠣に含まれるグリコーゲンを活用して、子ども達の体に良く、かつ喜んでもらえる菓子を、当時洋菓子として人気が高まっていたキャラメルに入れて作ろうと思い立ったということだ。


山頭火が子ども達と口にしたグリコの箱には、今もおなじみのばんざいしてゴールインするランナーのトレードマークがプリントされていた。

現在のものと違うのは箱に「文化的滋養菓子」といういかにも時代を感じさせるキャッチフレーズがあることだ。

山頭火がこどもとともに食べた約80年前のグリコの箱と現在のそれを比べて見ると、ユニホーム、バンザイと上げた手の角度、足の上がり方などが変化している。

特に万歳は昔のそれと比べて手の位置が下がってきているが、何故だろうか。

ちなみに今も隠然たる人気を持つ同じ江崎グリコ社の「ビスコ」は1933年(昭和8年)に発売されている。

食いしん坊の山頭火だって口にしただろうと想像するが、ビスコも句にして欲しかった。


山頭火と言うとまず酒で、甘いものなどは口にしなかったかのような印象があるが、実は甘辛どちらも来いの両刀遣いだった。

グリコ以外に以下のような甘味の句を彼は残している。


夜ふけの甘い物をいたゞく

さみしい夜のあまいもの食べるなど

甘いものも辛いものもあるだけたべてひとり

お祭りの甘酒のあまいことも

すすめられてこれやこのあんころ餅を一つ

秋の日かたむき餡パンたべてもう一ト山

みんないただく甘露水私もいただく

今日の乞ふことはやすくておいしい汁粉屋の角まで

旅の或る夜はお彼岸団子のうまいこと

けふは仲秋すゝきや団子やお酒もちよつぴり

秋晴れおいしい団子をいただく岩に腰かけて

もなかおいしやひとつでたくさん

春のくばりものとし五色まんじゆう

日向はぬくうて子供があつまる回転饅頭

まんぢゆう、ふるさとから子が持つてきてくれた

まんぢゆうたべたべ出船の船を見てゐる、寒い


ここらでやめておくが、これだけでも彼がいかに甘味好きであったかが分かるだろう。


さて、グリコというと忘れてならないのが「一粒300メートル」のキャッチフレーズだ。

私の小学校時代、グリコは運動会に絶対に忘れてはならない秘密兵器だった。

なにしろたったの一粒で300メートルである。

小学校の運動場のトラックは大きめに見積もってもせいぜい200メートルだったろう。

徒競走やクラス対抗リレーの前になると、ポケットに忍ばせていたグリコを一粒口に含み、体中にみなぎるエネルギーを感じながらスタートラインに立ったものだ。

効果はもちろんてきめんで、小学校時代を通じて運動会の花形だったのは、忘れられない思い出だ。

私の人生で唯一栄光に包まれた瞬間だったと言っていいだろう。


グリコとは何の関係もないが、この昭和13年3月17日の日記に「ふんどしに異変」とある。

彼のふんどしに如何なる異変が起こったのか。

未解決の謎だ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ