第四話
リユンが自軍に戻ると軍の者が一人、フェリアードが駆け寄ってきた。
「リユンさんっどこ行ってたんすか?」
「まぁちょっとな」
はぐらかして周りを見渡す。
今日はなんだか騒がしい。
「おい、なにかあったのか?」
「ああ、なんでもモーント国の国王が死んだそうで」
『死んだんだ』
さっきのセレーネの寂しそうな顔が思い浮かんだ。
いやいや、セレーネの父親が国王のわけがない。
馬鹿馬鹿しい考えを振り切ってリユンは頷いた。
「そうだったのか、でもそれにしては盛り上がってるな」
リユンがそう言うと、フェリアードは楽しそうに声を潜めた。
「これがすごく面白い話なんですけど....」
「いいから早く話せ」
もったいぶるフェリアードにリユンは少し腹が立つ。
「なんとも、国王には隠し子がいた、という噂が流れてるんですよ!」
「隠し子?」
「はい!それでみんな本当にいるのかいないのか話してるんです」
ここはあくまでも基地で、娯楽は少ない。
リユンは勉強をしたので、本などが読めるが、軍の大多数は、勉強もしないまま軍地に送り込まれているため、こんな噂話でも娯楽になるのだ。
「くだらないな」
リユンは自分の部屋に戻った。
くだらないと言いつつ、リユンはなぜかこの話が胸のどこかにつっかえていたのだった。




