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彼らの永遠 4


遺髪ジュエリー。

イギリス、ビクトリア朝で作られたと言われているアクセサリー。

名前の通り髪をーーー必ずしもそうではないが、遺髪をーーー編み込んだり、含めたりして創られたもの。髪の毛は経年劣化がほとんどない。なのでその当時のままの髪がアクセサリーとして残っている。

考え方や受け取り方は人それぞれだ。何も遺髪だけと決まったわけではないし、生前作っていたとしてとそれはやがていつかは今はもう亡き方のものとなる。人間なのだから。

髪を編み込んでブレスレットにしたり、真珠や宝石と組み合わせてブローチにしたり。当然ながら美しいブロンドなら美しいブロンドのまま、艶やかなブルネットなら艶やかなブルネットのまま。そのものの存在を欠けさせずに残すそれは、かつてその時代から怪しげな雰囲気を抱きながら存在していた。

「うぇー……遺髪、かあ……」

「必ずしも遺髪ってわけじゃなかっただろうけど。髪なんて生きてる間何度も切るものだし。とはいえその当時は今よりも人毛は需要があったと思うよ。輝くブロンド、鮮烈な赤毛、砂糖菓子みたいな栗色。日本ならそうは行かないだろうけどより取り見取りだ」

「羅生門にもあるね、そう言えば」

二人に、というより背後でどん引きしている日代で遊ぶために鉢峰に言う。ここまで来れば乗ってやる。皿まで綺麗に食べてご覧にいれよう。

「ああ、あれは鬘だっけ。どこの国も考えることは同じだな。女の子が髪を切るっていいな。校舎の屋上とかでフェンスの向こう睨みながらカッターでじゃき! って切るの」

「……散らばるだろ……」

だいぶトーンダウンした声で日代が言う。元から引いていたのでそもそも高いトーンではなかったが、いやはや、申し訳ない。

「……え、なに、その湯川は御影を亡き者にして髪ももらおうとしてるの?」

「だから遺髪に拘る必要ないんだってば!」

殺すな、頼むから。いくら半分しか運命共同体じゃないからといって。

「御影の髪でヘアージュエリーを創る。……それを卒業制作の作品にしたいんだってさ」

湯川がデザイン学科の何コースかまでは知らない。けれどアクセサリーというのはどの時代でも需要がある。

実際毎年文化祭で行われるデザイン学科の物販は流石デザイナーの卵たちというのもあってクオリティも高く素敵なものが多いのだ。一般客も入れるようになっているのでそれを目当てに来るひともいる。人気目玉イベントのひとつだ。だから一口にアクセサリーといってもそれはたぶんミユキたちが想像するよりよっぽど手の込んだもののはずだ。

「一週間前キャンパス内歩いてた御影と擦れ違って、『あ、この髪いいな、そうだ卒制はこの髪使ってヘアージュエリーにしよう』って思ってその場で声をかけたんだと」

「なにその発想こええよサバンナのひとかよ。『あ、あの鳥美味そう、そうだ今日の夕飯は鳥の丸焼きにしよう』と同じじゃねえか」

「同じかなあ……」

サバンナのひとが何食べてるかは知らないけれど……。

因みにはじめて声をかけられた時鉢峰も隣にいた。家が同じ路線で数駅しか離れていないので最近は毎日途中まで一緒に帰っている。

「いやでも……いくら髪型に支障がないって言われても気持ちが引っかかるだろ。誰かに自分の髪渡すんだろ? こう、これでカツラ作ってくださいって渡すとかなら全然いいけどさ、自分から言い出したことじゃなくて相手から言われてるんだろ? しかもそれがブローチとかブレスレットになって残るんだろ? ……俺だったらそれはちょっと……抵抗ある……」

不審者じゃねえか、と日代。そうだよ、最初から最後まで不審者の話だよ。気分転換になってる?

「……ひとの髪見て『ヘアージュエリーにしよう!』って発想出来る人間がそう多くいるかどうかは別として……まあでも、御影の髪見て……御影の髪ならまあ、そういう考えの持ち主なら思わず創りたく……なるのかなあ。わかりたくないけど、なんとなくなら……御影の髪ならなあと」

「……」

髪を一房摘む。ディスプレイの青白い光を受け色を変える髪。……確かに血縁者以外で自分の髪と同じ色は、いや似たような色ですら見たことがない。一見埋没してしまいそうで、けれど絶対にそうならない色。自分の視界の端でさらさらと色を変え不思議な色に染まる髪。……。

俺もこのままがいい

かつて言われた、やわらかい言葉。

「……いつか無理矢理切りにかかりそうで怖いな。髪切り通り魔みたく」

「……叔父さんに言っとこう、夜道に気を付けてって」

「姪からいきなりそんなメールもらうなんて御影の叔父さんって気の毒だな」


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