怖いものの話をしようか 4
大学メンバーは昨日誕生日を祝ってくれていた。チェーンではあるが料理に比較的強い居酒屋に集い、誕生日会という名の飲み会。酒は普通並みには飲めるが正直好きでも嫌いでもないので付き合い程度に留め、入学してから親しくなったそのメンバーでそれなりに盛り上がった。
が、当日は当日であるらしく、昨日ももらった「おめでとう」をまた何度ももらう。
「今日は御影さんと祝うんだろ?」
周知の事実過ぎて今日の今日まで触れられることがなかった話題だが、別に隠していたわけではない。
「そう。祝ってくれる」
須藤 知樹ーーーともきとともり、一文字違いというきっかけで話すようになった同じ学部の男。林場の次に得た同性の友人だった。四月当初寄った自分を家に送り届けてくれたこともある。
「どこかデートでも行くのか?」
「や、家で夕飯食べる。リクエストとかたくさん訊いてくれた」
「御影さん料理上手いもんなー」
納得したように須藤がうなずく。うらやましそうに目をじとっとさせた。
「いいよなあ、御影さん。やさしくて料理上手で。歳上には見えないけど幼くて小さくてかわいいし」
「うん、いいだろ」
「・・・・・・蕪木もぶれないなー」
「ぶれる必要がどこにもない」
「つええ・・・・・・プレゼント楽しみだな」
「プレゼント?」
きょとんとして須藤を見ると不思議そうな顔で見返された。
「え、あるだろたぶん。誕生日なんだし、一緒に住んでるくらいなんだし」
「・・・・・・」
そうかーーーと、心がすとんと納得する。
誕生日だからプレゼント。・・・・・・今まで縁がなさ過ぎて、そこまで考えが至っていなかった。
ああでも、去年は叔父と叔母がくれた。エプロンと料理本。もちろんこっちに持って来て使わせてもらっている。
彼女もなにか送るよと言ってくれていたが、その時なにも欲しいものがなく、今はいいから早く会いたいななどと言って有耶無耶になってーーーそのまま。それに対してなにも不満はなかったし、今の今言われるまで忘れていたくらいで、
「・・・・・・」
「・・・・・・どうした?」
「・・・・・・俺、今年・・・・・・みーさんにプレゼント・・・・・・あげて、ない」
「・・・・・・気にしてないと・・・・・・思う、ぞ」
・・・・・・いやまあ確かに今年の三月、自分がこっちに帰って来て早々色々あったのは確かだが。確かなのだが。
畜生、やらかした。こういう時、本当自分は『普通』を知らなくてーーー嫌に、なる。
(いやでも・・・・・・楽しむんだ)
私を選ぶなら不幸になるのは許さない。
自分の幸せを自分より強く願ってくれているひとがいる。大丈夫。なにも怖くない。
だから自分は、失敗して転んで反省して後悔して落ち込みながらーーー成功して立ち上がって自分を信じて誇りを抱く努力をして何度も立ち上がって、歩いて行けばいい。




