名無し
友達がコウモリの軍団に連れ去られた。コウモリは群れにはなるが人間一人を連れ去るような真似はしない。ってことは十中八九
「魔法か」
「はい。コウモリに攻撃したらそのまま消えたから多分・・。私はとっさに気配を絶ったんだけどリプカは間に合わなくて・・」
「生き物系の魔法か。まずいな」
「私怖くて・・。何もできなかった。自分のことしか考えなくて、気配を絶って・・」
大切な人を助けられない気持ち・・・。わかるよ。痛い程。
「行こう。まだ間に合うかもしれない」
「ほんとに!?いいの?」
「ああ。そのかわり終わったらその猫もらうぞ。ほら立て」
俺は女の子に手を差し出す。
それを女の子はギュっと握りその勢いで立った。
「本当にありがとうございます!私の名前はオレンです。あの、あなたのお名前は・・」
名前か・・。俺は今まで自分を隠し生きてきた。名前は捨てた。7歳の頃。
だから名前なんてない。昔から。そしてこれからも。
「俺は名無しだ。好きに呼んでくれ」
「七石・・?」
「ナナイシではない。名無しだ。名無し!」
「ふなっしー?」
耳鼻科今すぐ言って来い。
「だから違う!なんだそのご当地キャラクターみたいな名前は。七石でいい」
「七石さん!よろしくおねがいします!」
オレンは眩しい程の笑顔を見せた。その笑顔は俺には眩しすぎたが。
七石。俺に名前か。まぁいい。友達を助けたらさっさと帰ろう。
「リプカ大丈夫かな・・。酷い目にあってないかなー。うぇーん・・」
さっきまで笑顔だったと思ったらまた泣き出した。なんだこの娘は。オレンって言ったか。何かこの娘と一緒にいると調子が狂う・・。俺とオレンは友達を探す為、先を急いだ。