Case1-4:虚偽の闘技場
月曜日の六限目は体育である。体育は選択科目で、柔道・剣道・テニス・ソフトボールから選ぶことになっている。
授業を終えて、更衣室で着替えを済ませ、教室へ戻ると既にそこで異変が起きていた。
担任の岡島先生がとても困った顔をしている。
その原因は女の子たちが騒いでいることだ。
チョコが、という単語が何回も聞こえた。
その騒いでいる女の子の中には深優もいる。
「深優、どうしたの?」
「あ、観月ちゃん……」
しょんぼりとしている深優も可愛いが、今はその理由を聞かなければ。
「あのね……クラスの女子のチョコが盗まれたみたいなの。全員分……二十三個」
「え?」
絶句する。一瞬だけ南極の海に叩き込まれたような感じが身体を走り抜ける。
「それと、こんな手紙が教卓の上にあったよ」
深優は一枚の紙きれを私に見せた。
恋する乙女の皆様方
数多の乙女の願いは既にわが手にあり。
真実を得んと欲する若き探偵よ。
これを取り戻したくば、五つの鍵を集め
わが試練に打ち勝て。
一つ目の鍵は虚偽の刃交える闘技場に求めよ。
なお、奇術師の助成は許可しない。
これを破るならば、乙女の願いは露と消えると知れ。
怪盗F
「上等です!」
私はつい大声を張り上げてしまった。近くにいた男子たちがぎょっとしているのが分かったが、気にしない。別に彼らにどう思われようが構わない。私は十六夜凛にとって一番の女の子であればいいのだから。
「せっかく凛のために作ったチョコを盗むなんて! 絶対見つけて懲らしめてやります!」
こんばんは、星見です。
第一部はヒロイン観月ちゃん(ちゃん付けかよ!)の視点で進みますが、第二部は凛の視点で進みます。
さてさて、『虚偽の刃交える闘技場』とはどこでしょうか?
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……