幕間:十六夜凛の受難
日曜日。
今日の僕の運勢は最悪らしい。そういえば、十三という数字は不吉とされているのだとか。イエス=キリストを裏切った使徒ユダが最後の晩餐で十三番目の席についていたことや、タロットカードの十三は『死』を意味するなど、様々な解釈がある。
次長から依頼された特別な案件を休日返上で片づけてオフィスにある自分専用の机に突っ伏していると、それを察知していたかのように僕の携帯に一本の電話が入った。時間は午後十一時。
次長からだ。
嫌な予感しかしない。
「あー、凛。ご苦労だ。また一つ仕事が増えたぞ、喜べ公僕」
あなたも公僕でしょう、と突っ込みかけたがやめておいた。
この人への突っ込みは自分で堀った墓穴に足を突っ込むことと同義だからだ。事態がややこしい方向にしか進まない。
「何でしょうか? とりあえず食事とっていいですか? 丸一日食事とってないんですけど」
「うむ、良いぞ。何なら酒でも飲むか? ああ、ワトミとかいうブラック企業が経営するチンケな居酒屋などではないぞ。青山にあるブルーダイヤモンドという高級店だ」
「勤務中に飲酒なんかしたら新聞に載りますよ」
「良いではないか、有名になれるぞ」
「どうぞご自由に。僕は遠慮させてもらいますから」
この時ばかりは観月の気持ちが分かったような気がする。
「で、一体どんな用件なんですか?」
「うむ、次長室まで来い。あまり公にしたくない案件なのでな」
深夜。次長室に入ると、まず目に入ってきたのはグレーのパンツスーツ姿の南雲小雪刑事だった。最近髪を切ったらしく、ボブカットにしている。
この人は次長が信頼している数少ない部下で非常に優秀なのだが、酒癖が悪い。どれくらい悪いかというと、酔っぱらったら正拳叩き込んで居酒屋を倒壊させるくらい悪い。せっかく美人でスタイルも良いのだから、もう少しお淑やかにすればいいのにと思っているが、口に出すとテロ事件が発生するので言えないのだ。
「やっほー、凛ちゃん! 久しぶりじゃない?」
「二日ぶりですよ。ところで、次長、話を伺いたいのですが」
僕は部屋の最奥にいる、上司に話しかける。
豪華なクッション付の椅子にふんぞり返っている、義父もとい十六夜煌次長はにやにやしながら話し始めた。
「ふむ、揃ったな。では、始めよう。実はな……」
悪だくみをしている顔だと見抜くまで、さほど時間はかからなかった。
「怪盗Fが日本に来ているらしいのだ。二人には、その捜査を頼みたい」
と、とんでもないことを口にした。
これが掲載される頃にはこんにちはでしょうか。星見です。
とりあえず仕事は一段落、これから先は書きまくるぞと勝手に燃えてます。ええ、自爆だけはしないように気を付けますとも。
新作の下書きが十個ほどたまっているのですが、私の胃袋と同じように消化不良を起こしていまして、まだまだこちらに載せるには時間がかかりそうです。
ではまた次回お会い出来ることを祈りつつ……