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Case1-1:風舞観月の学園生活Ⅰ

 私、風舞観月かざまいみつきは席に座ったままで、今日も多くの女子生徒に囲まれていた。今はお弁当の時間なんだよと言っても聞き入れてくれそうにない。

 別に私があっちの趣味を持っているとか、私の通う私立三田丘学園高校の生徒があっちの趣味の子が多いとか、そういうわけではない。

 彼女たちが私を周りに集まっている(包囲と言った方が的確かもしれない)のはわけがあるのだ。

「ねえ、風舞さん。あの人、十六夜さんだっけ。あの人の好きなものって何か知ってる?」

「十六夜さんと一緒にお風呂入ってたりするの?」

「あんなイケメンと一つ屋根の下。もしかして、もう大人の階段を?」

 などなど。

 彼女たちは皆、十六夜凛いざよいりんという人に興味がある子たち。

 今日はまだましなほうだ。

 昨日は凛の携帯アドレスを聞いてくる女子がいた。先週は自宅の前で凛の帰宅を待ち構える女子までいたのだから、最近ニュースでさかんに言われている、女子の肉食化というのはあながちウソではないのかもしれない。

 慣れてきたとはいえ、この女子たちを捌くのは最近うんざりしてきた。

「観月ちゃん、化学のプリント運ぶの手伝って!」

 救助の手を差し伸べてくれたのは、五島深優ごとうみゆ。この学校に転校してきて初めてできた友達だ。ツインテールが特徴の演劇部のエースで、明るい性格からクラスでは結構人気者である。しかも、帰国子女で外国語に堪能だったりするのだから、驚きだ。

 深優は小さな両腕で抱え込むように大量のプリントを持っている。

「うん!」

 小柄な彼女に重い荷物を持たせておくわけにもいかない。

 それに包囲網を敷いている女の子たちを突破する口実にもなる。

 ついでに言えば、彼女はドジっ娘だ。大抵肝心なところでドジを踏む、ある種天才的なまでの運命に恵まれている。そこがまた可愛いのだけれど。

「ちょっとごめん、深優を手伝ってくるね」

 と申し訳なさそうに言って、私は教室の外で待っている深優のところへと急いだ。


「観月ちゃんも大変だよね。毎日毎日、質問攻めにあって」

 プリントを届け終わった私と深優は学食でジュースを片手に、向かい合って座りながらおしゃべりをしていた。

 ここは避難場所としては中々に良いということを最近知ったのだ。何故か女子たちは大抵ここでは昼休みを過ごさない。

「うん、でも慣れたかな」

 まだ彼女と知り合ってからはそんなに時間が経っていないが、彼女はとても私と気が合う。というか、私が好きになれる女の子だ。

 少しふっくらした顔と穏やかな瞳が特徴で、とにかく名前通りに、とても優しい。

 五島深優とはそんな女の子だ。

「十六夜凛さんだっけ。確かあの、とってもカッコいい人だよね」

 凛の名前はもうすでに私のクラスでは誰もが知っている名前になりつつある。

「うん、確かに凛はカッコいいけど。でも、許せないかな」

「どうして?」

「凛が誰か他の女の子と仲良くしてるのはイヤ」

 むすっとする私の背中を誰かが叩いた。

「またこんなところで話し込んでたのか? ほら、観月も深優も。五時間目もうすぐ始まるぞ。岡島先生の授業」

 私の背後に立っているのは一之瀬由紀いちのせゆき

 大人びていて、可愛いというよりも美人な顔つきの彼女の特徴は長いポニーテール。私たち三人の中では一番のしっかり者。そして、一番背が高くてグラマラス。その胸を私にもちょっと分けて欲しいくらいだ。

「五分前のチャイム鳴ったの気付かなかった」

 私たちの周りでは生徒たちがぞろぞろと食堂を出て行っている。

「また観月は十六夜さんのことを考えていたのか? まったく、恋する乙女というのは……」

「でも、観月ちゃんが夢中になるのも分かるよ。だって、カッコいいし、優しいし、それに……」

「はいはい、深優もそこまで。まったく、観月も深優もほどほどにしときなよ? 男にのめりこむとろくなことないんだからね?」

 由紀はかなり男嫌いな子だ。何があったのかは分からないけれど、告白してきた男の子をことごとく振っているという噂があるくらいに。

 私たちは予鈴が鳴ったのを聞くと、慌てて教室へ向かって走り出した。

こんにちは、星見です。

バレンタインから遅れてしまった……! そしてバレンタインもらえなかった!(涙)いや、職場のせいだうんきっとそうだ。と勝手に結論付けます。


閑話休題。


探偵凛シリーズ二作目です。今回は前回冷遇しまくった観月の視点からお届けします。主人公も観月です。凛は今回出番が……多分前回よりかは少な目です。第三作目に続く布石も置いておきますので、それらも含めてお楽しみください。


それでは、また次回お会いできることを祈りつつ……

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