大切な子
この小説は神様を題材にしたお話です。
感じ的に無理だと思ったらすぐに戻ってください。
それでも読んでくださる方だけお入りください。
「いい悠ちゃん!!古い物を大切にしないと古神さまがおこっちゃうんだから!!」
女は古くなった本を段ボールにつめている俺に言いはなった。いきなり何を言い出すんだこいつは。俺、藍川悠哉は目の前の女。鈴原奏里の言葉を聞きながらため息をはく。というかため息しかでない。
「お前高校生にもなっても古神さま古神さまってなぁ…」
「だって古神さまって素敵なんだよ!!知的で着物きてて、眼鏡かけてて!!超イケメンなの!!そんなイケメン様が怒るところなんてみたくないの!!」
「…………古神さまって言ってる分にはいいけどここまで来たら末期だな…」
まるでみたことあるように話す奏里。
俺たち二人は俺の部屋にいた。そして奏里は俺のベッドを占領して「古神さま古神さま」と騒いでいる。全くもってうるさいことこの上ない。つか、ベッドかえせ。
「……お前はその神さまをみたことでもあるのか?」
俺がそう聞くと奏里はにっこりとそりゃあ超いい笑顔を俺に向けた。
「うん!!」
「……………さいですか」
俺はため息をはいた。こいつは分かっているのだろうか…。
「古神さま好き?」
「大好き!!」
目の前に…
「愛してる?」
「愛してるぅ!!」
お目当ての古神さまがいることに…。
「どんくらい好き?」
「うーんっと…悠ちゃんくらい!!」
にっこりまた笑った。よし分かった。こいつはまだ中学生気分なんだな。まじ襲うぞおい。襲わないけど。
「古神さまはね、昔私を助けてくれたの…」
奏里は優しく言った。とても大切そうに古神さまと。
「だから、今度は私が古神さまの助けになってるといいなぁって思うの。この気持ちつたわってくれてるかなぁ…」
ボフンっと俺のベッドに顔を埋める奏里をみる。
「大丈夫だろ」
「え?」
中断してしまっていた本の整理を再開する。
「悠ちゃん?」
「奏里の気持ちは伝わってるよ。痛いくらいに」
伝わっている。昔からずっと一緒にいたんだから。ずっと古神さまについて聞いてきたんだから。
「まぁ、想いすぎて重いかもしれないけどな」
「悠ちゃん…」
優しく笑顔でいうと奏里は真剣な目で俺に言った。
「そのだじゃれダサいよ」
一発拳骨を落としてやった。
「あらぁ?奏ちゃん帰っちゃったの?」
部屋に着物を崩して着た俺の母親、海神の娘で俺の父親である天神と結婚した人。
俺は奏里には内緒で入れているコンタクトを外して眼鏡をかける。服を脱いで着物を着る。
「奏ちゃんは今日も古神さま古神さまって?」
「母さん…」
水色のきれいな着物を着る母にため息をつく。
「ふふふ。本当に可愛い子ね奏ちゃんは。でもいい悠哉。絶対に神であることは言ってはいけないし、神の力を人間に使っちゃだめよ。神堕ちしてしまうわ」
「分かってますよ」
心配している母。
神堕ち。それは神が神であることを許されなくなること。つまりは神さま剥奪という意味で、神が神を剥奪されたら朽ち果てるまで神界の牢にいれられる。つまり殺されるということだ。神堕ちした者には首の後ろに黒い十字架が現れる。それが神堕ちした証拠になる。
「悠哉…」
「分かってますから大丈夫です。絶対に奏里には知られないようにします」
「そうしてちょうだい…………じゃないと…」
母はスッと目を細める。ピリピリとする空気は恐ろしい。何か強大な者にひきちぎられる感覚をおぼえる。
「悠哉のため、私達のため…奏ちゃんを殺すはめになるわ」
「……………」
「それは何故か…分かるわよね?」
もし、人間に神だとばれたときに神堕ちしない方法がある。それは、神だと知った者を殺すこと。
「神は人間を守るけども、殺しちゃだめとは言わない。」
「知ってます…」
「距離を置けともいわないけど………奏ちゃんが大切なら離れるのも一つの手よ」
この母の言葉は今までに何度も聞いてきた。初め聞いたときは「絶対にばれないし、離れない!!」って言い切ったけど最近は自信がない。
「…………考えておきます」
「えぇ」
母は俺の頭を一撫でして部屋から出ていった。
「はぁ…」
ベッドにダイブする。着物がシワになるが知ったことではない。
ベッドから奏里の匂いがする。優しく甘い香り。何故だか心が落ち着いてきた。
「奏里…」
あの奏里を助けるために小さな小さな弱い神の力を使った。そのときはまだ小さかったから軽い罰(一週間神堕ち)だった。軽い罰のせいで俺の首の後ろには黒い十字架がうっすら残っている。
あの時から奏里は古神さまというようになった。
「人間か…」
人が神になることなんてできない。その逆もしかりだ。
悠哉はゆっくりと目を閉じた。
「悠ちゃんおはよ!!」
「おー」
朝の登校時間。俺は奏里の家の前に待っていた。奏里が来たのを確認して俺は歩き始める。
「寒いねー」
「そーか?」
もう肌寒い季節になるのか…時間はあっという間に流れ流されていく。
「確かもうすぐ遠足あったよね?」
「あったなぁ…。なんかのミュージカル見に行くんだっけか?」
「たしかそうだった気がする」
他愛のない会話をする。いつも通りだ。いつも通りすぎるくらいいつも通りだ。
「……今日は古神さまってのが出ないな」
「…え?」
俺がそういうといきなり悩み始めた。なんなんだこいつは。
「あのね、昨日古神さまの夢みたの」
「へぇ…夢みたならもう少し騒ぐだろ、いつものお前なら」
「う、うん…でも…」
奏里は戸惑ったように俺の顔をみる。
「古神さまが…さ………どことなく悠ちゃんに似てる気がしたんだよ…ね」
「え」
似ているじゃなくて本人です。なんて言えるはずもなく、少し寂しく感じる。
「気のせいだろ」
表情にださずに俺は奏里の前を歩きだした。
少し寂しい気がした。
「そ、そうだよね‼だって悠ちゃんは悠ちゃんだもんね」
「…あぁ」
そのあと奏里は話題を変えていつものように話し始めた。
「じゃあ俺こっちだから」
「うん。帰り一緒に帰ろうね」
「おう」
俺は三組で奏里は五組。教室の前で必然に別々になる。
教室に入ればあいつがいた。
「はよー‼今日も一緒に登校か?」
がしっと腕を組んできたのは友人の荒峰朔也。
「朔也ぁ…ちっと頼みあんだけどよ」
「は?悠哉が?俺に?」
ポカーンとする朔也の頬をつねる。
「いだだだだっ‼何すんだよおい」
「あほずらかましてたからさ。いい目覚ましになっただろ?」
「いや元々目覚めてるし」
つねられた所をさする朔也を見ながら俺は自分の席に座る。朔也は俺の席の後ろだから後を追うように座る。
「で?頼み事ってなぁにかなぁ?」
「お前確か「夢渡り」の一族だよな」
「あ、そっち系の話ね。ここじゃタブーだから…うーんと、四時間目の体育時に聞くよ」
いつもはヘラヘラとしているくせして「そっち系」つまりは神とかの話になると朔也は異常なまでに警戒心が強くなる。
「りょーかい」
「おー。でも珍しいね。悠哉がそっちの話を学校に持ち込むなんてさ」
「まぁ…俺の余裕がなくなってきたって事だよ」
俺がため息をしながらいうとちょうど先生が教室に入ってきて、横に向けていた体を前に向けた。
「で?頼みってなんですかぁ?古神さぁま?」
「しゃべり方うざい。顔うざい」
「いや、しゃべり方うざいのは認めるけど、顔うざいってひどくね?」
朔也と俺は体育を抜け出し、人があまり来ないという部活塔の裏庭に来ていた。
「つか、お前よくこんなとこ見つけたな」
「サボるところ探してたらみつけたんだよ。部活塔の裏庭なんかに来る人なんていないからね」
近くにあるベンチに座る。
「ちょっと待ってて」
朔也は何かを始めた。
多分だが結界を張っているんだと思う。
「まぁ、念には念を…ね」
「念を入れすぎじゃね?」
「入れる分には悪くないだろ」
朔也は得意げに言いながら俺の隣に座る。
「悠哉の頼みってどうせ鈴原さん関係でしょ?」
「………おう」
朔也はやっぱり…と顔を引きつらせながら笑った。
「ホントに大切にしてるな、あの子のこと。けど間違っても、もう神堕ちだけはしないでくれよ」
「わかってるって。お前も母さんと似たようなこと言うんだな」
「心配だからだよ。前の軽い罰だってお前の親が神王に頼み込んだおかげで「神堕ち一週間」で終わってんだからな」
「……ああ」
「はぁ…まぁ本題に入ろうか」
また溜息をはきながら朔也は顔だけ俺に向けた。
「…奏里の夢を見てきて欲しい」
「は?なんで」
「…古神さまの夢みるんだってよ」
俺がそういうと朔也の目が鋭くなった。
「…悠哉、やっぱり鈴原さんは……」
恐怖を覚えるようなドスのきいた声。
「殺しておくべきだったんだよ、あのときに」
「朔也……怖いこと言うのはやめてくれ」
睨み付けるように朔也は顔を前に向けてしまった。
「だから人間は嫌いなんだよ」
「お前だって人間だろ」
朔也は俺に視線だけで睨んでくる。
「まぁ、ひとまず鈴原さんの夢を覗いてみればいいんだな?」
「ああ。変な気は利かせるなよ」
「はいよ。でも保証はしない」
それだけ言って朔也は立ち上がりどこかに行ってしまった。おそらく今日はもう授業に出ないだろう。あの少し子供っぽいところは相変わらずだ。けど何気ない優しさも変わらずだ。
「…風になりてぇ…」
空を見上げる。空は憎たらしいくらい青かった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
初めての投稿ということでドキドキです。
グダグダですが気に入って下さったら幸いです。