そのに:得意料理は、肉じゃがです♪byアヤノ
──ふと、気がつけばソコは見たことも無い部屋で。
どんな感じかと聞かれれば某猫型ロボット漫画の主人公のイエローニート(のび○君の事)の部屋に
少し似ている素朴な畳の部屋としか言う言葉が出てこない。
が、広さは結構なもので独り暮らしは勿論、二人暮らしでも十分に余るくらいのスペースはある。
小さなキッチンと押入れもあるみたい。テレビや冷蔵庫もちゃんとある。
「・・・て、そんな事よりココドコ?」
そして、僕は何故こんな見知らぬ部屋の中央に敷かれた布団で寝ていたのだろうか?
なんだか・・・体がダルイ・・・というか痛いし・・・
意外と大きな窓を見てみれば、外はもう真っ暗。
じっとしていても仕方が無いので、体が多少痛いのを我慢して
ムクッと体を起こす。
同時に今まで存在感ゼロだったドアから、コンコンとノックの音と共に女の声が聞こえてきた。
「あのぉ〜・・?起きてますかぁ??入りますよぉ?」
「あ、ああ開いてますよ!」
急にだったのでちょっと声が裏返った・・・恥ずかしい・・・
「じゃ〜・・お邪魔しま〜す♪」
が、そんな僕の心境を知ってか知らずか、ドアの向こう声の主はお構いなしに入ってくる。
・・な・・・なんだか一人で恥ずかしがってた僕がまた恥ずかしい(泣
「おはようございます♪もうお体は大丈夫ですか?」
なんてにっこりスマイルがとてつもなく似合う同い年くらいの女の子が
何個かオニギリを載せた台を持って中に入ってきた。ちなみにこの子も半端無く可愛い。
枝毛なんて一本無さそうな黒髪を後ろで縛っている。いわゆるポニーってやつ。
パチクリした少し大きめの瞳。とても透き通っていて僕のアホけた顔もよくわかる。
なんだかおっとりしている感じ。和風美人ってやつだ。
ってか、ホントに今日ゎ美女、美少女と良く会う。呪われてんのかな??
ま、別にいいけど。
「ぇ、ぁ、ぇと・・・大丈夫みたいです。」
「そうですかぁ♪白目をむいて、泡を口からふいていたからとても心配しましたよ♪」
大事に至らなくて良かったです♪と、言葉を添えて本日二発目の秒殺にっこりスマイル。
こんなの見たら、同性でも惹かれるだろうなぁ。
実際、異性の僕はかなりやばい。
って待て。僕はそんな惨めで悲惨で怪奇的な状態で寝てたの!!??
しかも、それって相当危なかったんじゃ・・・
「はは、じゃ〜気持ち悪かったでしょ?僕?」
「ふふ、そうですね♪かなり♪」
「そこは嘘でも、そうじゃないって言ってくださいよ!!」
自分から話題振っといてアレだけど、僕の心がたった一言でズタズタ・・・
しかも、こんな可愛い子に言われたらさらに攻撃力増。
「え?えと・・・多少気持ち悪かったです?♪」
「・・・」
「ん〜・・・・それなりに気持ち悪かったです?♪」
「・・・」
「む〜・・・・・ぁ!!・・兎に角、気持ち悪かったです♪」
「・・・もう、いいですよ・・・」
「あ!!分かりましたぁ!♪」
お?自信満々っぽい・・・今度こそ・・
「とても気持ち良かったです♪♪」
「とてつもない誤解が生まれるので、止めて?」
顔に似合わずなんて事口走るんですか、この子。
律儀に使ってた敬語も思わずどっか飛んでいったよ。
「ふふ、面白い方ですね♪」
「あなたほどじゃないですよ?」
「あ♪お腹空いてませんか?オニギリ作ったんですけど?」
・・・・スルーですか。
かなりの強敵と見た。
「ぁ、ありがとう・・・ってかココってドコ??」
折角なので、今僕が置かれている状況をオニギリを食べながら教えてもらう事に。
・・・おいしい
「ココですか?ここゎ鶴亀さんの部屋ですよ?」
いや、鶴亀さん知らねぇし。
極端すぎるだろ、その説明。
なんか疲れるなぁ〜この子・・・
「えっと・・・・じゃ〜なんで僕ココで寝てたの?」
と、聞くと彼女は可愛らしく、人差し指を立てて
首を傾げながら少し考え・・・
「玄関から一番近い部屋だったからですか?」
「そういう事じゃなくてぇ!ん〜・・・」
なんて言えば通じるんだろ・・・・
誰かヘルプ求む!!(泣
なんて、そんな願いが通じたのか突然、ドアが開き途轍もない勢いで誰かが入ってきた。
その子は僕をナンパ野朗から救ってくれたセビサツキちゃんだった。
忘れるはずも無いだろう・・・あんなインパクト強かったら・・・
しかし・・・なんだか彼女を見ていると自然と体が勝手に逃げようとしているのは何故??
「瑞樹ちゃん!!」
彼女ゎ目に涙一杯溜め僕にダイブしながら抱きついた来た。
「ちょ!?」
「瑞樹ちゃん!!起きた!?ほんまごめんなぁ!!ウチ手加減て良く分からんくて、たまにやり過ぎる癖があって・・」
凄い癖だな、ソレ。それが分かってるのにも関わらず、この抱きしめる強さは何??
むしろ締め付けられてる感じがするのは、僕だけでしょうか?(汗汗
でも、一部分はちょっと柔らかったり・・・・
ん〜・・・段々思い出してきたぞ・・・・
えっと・・・
「でもな!!今日のドドンガーはメッチャおもろかってン♪あぁ〜瑞樹ちゃんにも見せたかったゎ・・・」
・・・思い出し終了・・・・
ってか人一人、気絶させてもドドンガーは見るんだ・・・
ん?て事は・・・
「ここってもしかして・・・『七福荘』??」
「そうですよ?言ってませんでしたっけ?」
「聞いてませんよ」
「あ!そういえばまだ自己紹介がまだでしたね。私は黒峰絢乃っていいます♪宜しくです♪
大黒天の名を持っていてココでは料理担当させてもらってます♪」
この子は自分の不利になる時はスルーする性格らしい・・・
これがわざとじゃなくて天然なら国宝級だけど・・・
「ん??ちょっと待って?今、意味不明というか理解不能な言語が聞こえた気が・・・」
「何がですか?」
「いや・・・大黒天がどうとか・・・それにココってアパートだよね?なのに料理担当って・・」
「えと・・・私はそう言う説明とか苦手なのでサツキちゃんにパスです♪」
「ウチ!!??ウチも苦手やねんけどなぁ〜・・・」
とブツブツ言いながらもゴホンと一回咳をし、説明し始める。
ってか、いつまで抱きついてるんですか?
「んとぉ〜・・・瑞樹ちゃんはここの名前知っとるよなぁ?」
僕は頷く。
「うん。『七福荘』だよね?」
「そや。大正解。で、その『七福荘』の七福の意味はそのまんまで『七福神』の事をさしてるねん。
弁財天、大黒天、恵比寿、毘沙門天、福禄寿、布袋、寿老人の七人の神様。で、この『七福荘』では
その名前を使った部屋があるんや。ただ・・・」
「ただ??」
「その部屋を使う人はその名前にあった人じゃないと。つまり・・・その神様の生まれ変わりの人じゃないとアカンねん。」
「・・・・はい?う、生まれ変わりって・・・」
そんな夢、幻想みたいな話・・・
「信じられへんのも分かる。でも、ほんまやねん。例えばやなぁ〜・・・」
と紗月ちゃんは瞼を静かに閉じ、右手を天井に掲げた。
すると、目開けるのもやっとと言うぐらいの眩しい光が部屋中に覆った。
そして、一瞬にしてその光が消えたかと思いきや・・・
紗月ちゃんの天井に掲げられた右手には2メートルほどの・・・
「・・・や、槍??」
「ちゃうちゃう。矛や矛。どや?凄いやろ?♪」
片手で軽々とブンブンと矛をバトンみたいに振り回す女の子が一人(汗
「凄いというか・・・・どんな手品使ったの??」
ほんとビックリ。ミスターマリックやらプリンセステンコウ並に尊敬しちゃうかも。
ってかその槍・・じゃなくて矛・・・刃の部分良くみたら本物みたい・・
紗月ちゃんがこれもって暴れでもしたら日本。。いや地球壊滅も戯言ですまないだろうなぁ・・
紗月ちゃん・・・銃とか大砲とかくらっても死にそうじゃないもんなぁ
「手品ちゃうって!!これが七福神の生まれ変わりが持つ能力やねん。ちなみにウチは毘沙門天、武神の名を持ってるんや♪」
なるほど、それであの怪力と矛か。
でも、やっぱりまだ信じられないよなぁ〜・・・僕てそんな非現実的な話って全然これっぽっちも信じたことないし。
小さい頃もサンタとかってすぐに正体が父さんだって気付いてたしさ・・まぁ可愛く無い子供だったよ。
「ごめん・・・やっぱりそういうのは信じられな・・・・」
「ぅう・・・ひっく・・・」
「うぇ!!??ちょ、あ、絢乃ちゃん!!??」
なんで君が泣くの!!??めちゃくちゃ予想外なんだけど!!
「ふぇ・・・み、瑞樹ちゃ・・・が・・ぅう・・し、信じてくれないよぉ」
そりゃ、信じてないけど・・・だからって泣く事(汗
・・・ええい!!ままよ!!
「分かった!!信じる!!信じるからさ!!だから泣き止んで?ね?」
「ほ、ほんとですかぁ?・・・ぐす」
「ほんとほんと!!」
「良かったぁ♪」
・・・僕ってかなり情けない気が・・・
「ほんまになぁ〜♪」
・・・心の声を読まないでください、紗月ちゃん。
僕のプライバシーが!!
と、僕の主張も虚しくそんな事お構い無しと言わんばかりに紗月ちゃんは話を進める。
「兎に角やなぁ〜話の続きやねんけど・・・やっぱアパートに住むからには家賃を払わなアカンねんけど、
ウチラ高校生には結構難しい話やろ?」
「そりゃ〜まぁね・・・バイトとかしないといけないの?」
「ま、無理ではないけどなぁ。せやけど、ココ『七福荘』は別に金を払う必要は無いねん。」
「て、事は・・・タダ!!??」
「ちゃうて。ウチラはなんや??」
「何って・・・人間?」
「当たり前やろ!人間以外の何者やねん!!じゃなくて、さっき言ったやろ?」
「ぁ、七福神だっけ?」
信じてないけど・・・とは言えない僕。
言ったら、ある人がまた目からしょっぱい液体流しそうだし・・・
「そや。七福神ってのは人様に運を分け与える存在。つまり・・・それが家賃。」
「つまり簡単に言ったら・・・人様の役に立てと?」
「そうやな♪ウチはコレ使ってちょっくらアルバイトを♪」
と、陽気にブンブンとデンジャラスな矛を振り回す紗月ちゃん。
ってかなんちゅーアルバイトしてるんだか。
「ん?でもちょっと待って?僕はどうしたらいいの?僕は七福神の生まれ変わりでも無いし・・・」
「あれぇ?瑞樹ちゃんは弁天様と聞いていますけど?」
「え!!??弁天てそんな大それた・・・それに紗月ちゃんみたいな能力も生まれて今まで一度も使ったことも無いよ?」
「それについては後ほど説明しますです。そろそろ皆さんに瑞樹ちゃんの事紹介したいし・・・」
「あ、うん。そうだね。ココの管理人さんにも挨拶しないと・・・」
すると、紗月ちゃんと絢乃ちゃんが首を傾げて不思議そうに僕の方を見る。
「????何言ってるんですか?」
「何言ってるん??瑞樹ちゃん。」
「何って・・・だから管理人さんに・・・もしかして・・・『七福荘』にはいないの?」
「いるよ?今ココに。」
「え!!??・・・紗月ちゃん?」
と、僕が目を紗月ちゃんに向ける。
が紗月ちゃんの首が横にふるふると揺れる。
「違うの?じゃ〜・・・絢乃ちゃん??」
すると、絢乃ちゃんはニッコリスマイルを浮かべ・・・
「違いますよ♪」
「え?じゃ〜誰なの?」
と、聞くと二人は同時に一つの方向に人差し指を向ける。
その指先にいる人物とは!!
「・・・・僕?」
すると、二人は首を横に・・・・ではなく縦にコクコクと揺らした。