そのいち:ツンデレ候補ちゃうわ!!byサツキ
「ヘイ、彼女ぉ〜・・・・暇なら俺っちとお茶なんてどぉ?」
うわぁ・・・痛すぎて笑う気にもならない口説き文句だな、おい。
初めて聞いたってこんな台詞。
思わず昭和の人ですか?って聞きたくなるよ、ホント。
これでナンパ成功したら、ギネスブックに載るんじゃない?
「えと・・・・急いでるんで。」
それに対してなんてことを口走ってるんだかこの僕は。
これこそ本当にナンパされてる"女の子"が使うもんじゃないか。
もっと良い断り方は無かったのか、僕。
「そんな事言わずにさぁ〜・・・奢ってあげるしぃ」
と、いきなりナンパ男は逃げようとする僕の二の腕辺りを掴んできた。
ってか、痛ぁ!!キャラによらずなんて握力してんだよ、この昭和人!!
くっそ!!振り解けないぃ・・・
「ぉい!!放せっての!!それにだな、まことに残念ながら僕は男だ!!」
「お、男・・・?」
お?効果覿面?
さすがに男相手にナンパしたのはショックだったか?
と、安堵したのも束の間・・・
「そ!男なの。わかったら手を離し・・・・」
「・・・男も・・・・・興味アリ♪」
うわぁ〜い♪残念ながら、あっち系の人みたいだ(泣
ちょっと、ちょっとちょっと!!なんて心の中で某双子芸人のツッコミが聞こえてくるし。
それにしても、マジでやばいかもコノ状況。
このナンパ野朗、僕より数段力もあるみたいだし、逃げようにも捕まってて時既に遅しだし・・・
誰か助けてよ・・まじで。今ならお約束のスーパーマンやらヒーローとか登場しても、
ツッコミ無しで対応するからさ!!
そもそもなんでこんな状況になっているかと言うとだな。
それはそれは数時間前の事・・・・
「・・・・やっと着いたぁ♪けど・・・・」
電車、バスなどのちょっぴり近代的な乗り物に揺られて約5時間あまり。
僕は、今見慣れない地域の駅前に居たりする。
置手紙に書かれていた住所を頼りに大まかな場所を特定してここまで着たんだけど・・・
ここからがさっぱり解らない。
本当ならここから地図を使って目的地に行く筈なのだ。
が!その頼みの綱の地図が人類が滅亡しても解読不能な為、行き詰ってる訳である。
少し向こうの方に住宅街らしい場所が見えるけど・・・・あの辺りかな?
「あんの・・・くそ親父ぃ〜地図がキチンとしてたら迷わず直行なのにさ」
兎に角、立ち止まっていても仕方ないので、今いる場所をゆったりと歩きながら町並みを見渡してみる。
なんて言うか、前に住んでた所よりもちょっとだけ田舎っぽい感じはするんだけど・・・
なかなか良い場所だと思った。簡潔に言ったらぽわぽわしてて温かい感じのする町。
暫く歩くと商店街らしき場所には、人が溢れていて活気立っている。
商店街の入り口辺りにある看板には、『宝舟商店街』と書かれている。(変わった名前だなぁ
ところで、さっき遠目で見えた住宅街らしい所にはこの宝船商店街を抜ければ行けそうなので、
止まる事無く突き抜けていく。
食材店は勿論の事、本屋やCDショップ、雑貨屋や衣服店などもあったりするので、
この辺りのほとんどの人々は、この商店街を活用しているみたい。
例えばそうだなぁ〜・・・
と、目線が一軒の魚屋さんに止まった。
そこには美少女と言うよりは美女といった方が相応しい女性が魚屋のおっちゃんと大きな鯛をめぐり、争っていた。
「そこを何とかならない?今日、お客さんが来るのよ・・・ダメかしら?」
「てやんでい!いくらシズカちゃんの頼みであっても
タダでこの鯛を渡すわけにゃ〜いかねぇってもんだ。」
おいおい。タダで貰おうって頼んでたのかよ、あの女性もといシズカさん。
それはいくら何でも無謀なんじゃ・・・
しかし・・・彼女は自信満々にニヤリと笑い返す。
「ぁ、そう言えば知ってるかしら?最近、宝船銭湯の女湯でなんか生臭い覗き魔が出たらしいわよ?」
その言葉に一瞬ビクッっとする魚屋のおっちゃん。
シズカさんと呼ばれる女性は魅惑的な唇をおもしろい悪戯を考え付いた様にさらにニヤニヤ度が増す。
そして、どこからか写真を取り出しチラつかせる
「んなぁ!!??何故にそげな写真がぁ!!??」
「ふふ・・・・この写真、危うく落としちゃうかもねぇ♪私ってドジだから♪」
「く。・・・も、もってけ泥棒ぅ!!(泣」
「あら?いいの?今日ゎ気前が良いのね♪あ、あとその鮭7匹ほども頂けるかしら?」
「え?さすがにそれは・・・」
泣きそうなおっちゃん。しかし、シズカさんは追い討ちをかけるかの如く、
近場にいたオバサンにテテテッと小走りで走り寄り、
「先日の覗き魔って実はさかn・・・」
「どうぞ。お納めください。」
「ふふ♪」
なんてシズカさんは、明日のジョーみたいに白くなっている魚屋の主人を
完全に無視しているかの様に、ありがとう♪などとお礼を言い
上機嫌に鼻歌なんか歌いながら戦利品を受け取り住宅街の方に去っていった。
・・・なんかブラックな取引を目撃してしまった。
こんなの毎日、日常茶飯事的に行われていると思うとぞっとする。
僕も気をつけようと心に決め、先ほどの女性と同じほうに歩き出す。
そんなこんなで商店街を右左に観察しながら、ダラダラと歩く事30分。
やっとこさ目前に住宅街が見えてきた。
大通りみたいな道を挟んで、左右に家が並んでいる感じだ。
さらにその大通りは、ちょっとした上り坂になっていて、自転車などで上からノンブレーキで降りてきたら、
気持ち良いだろうなぁ〜なんて思わせるぐらい急すぎず、緩やかすぎずといった具合。
「・・・と。この辺りかなぁ?」
『七福荘』なんて変わった名前だし、人に聞けばすぐ見つかるかも。
5人ぐらい尋ねたら1人くらい知ってるだろう。
そう思い、近くに歩いていた恐らく買い物帰りに主婦の方に話しかける。
「あのぉ〜・・・突然ですいませんが・・・『七福荘』ってどこにあるか知りませんか?」
「ん?あらあらあらぁ♪これまた可愛らしい子ねぇ♪『七福荘』?ならこの坂の一番上にあるわよ?」
速攻で見つかった。これは予想外です。←ソフトバンクCM風
ま、それならそれに越したことは無いけどさ。
可愛いと言う一言に一瞬ピクリとした僕だったが、
不機嫌になるのを抑え、その人にお礼の言葉を一言交わし、坂を上り始める。
一番上まで半分くらい着たかな?ってところで・・・・
「へい、彼女(以下略)」
・・・で、今に至る訳だ。
ってか過去なんかを振り返ってる場合じゃねぇ!!
ほんとのほんとに誰かぁ〜!(泣
助けてくれたら、今ポケットに入っている最後の飴ちゃんを上げるから!!
「さぁさぁ♪俺と禁断の愛の巣へ♪ぐふふふふふh・・・ぐへらぁ!!」
と、ナンパ男が気色悪い笑い声の途中で意味不明な言語を叫び、前方へ飛ばされた。
どうやら、後ろから誰かに背中辺りを蹴り飛ばされたらしい。
太陽からの逆光で顔は判別にしにくいけど・・・どうやら少し小柄な女の子みたいだ。
女の子??マッチョなヒーローとか、どっかのぎゃるげー主人公とかじゃ無くて?
起き上がるナンパ男。
「へいへいへい!!いきなり蹴りかますなんて、いい度胸じゃ無ぇか?ああ?」
「うっさいわ、ボケェ!!こんな可愛ぇ美少女を拉致しようとしてはるボケナス野朗なんかに
蹴りかます前の挨拶なんか、いらんのじゃ!!」
「あの・・・僕は少女じゃなくて一応男・・・」
「もう安心してええからな。ウチがこんなボケナスへたれ野朗なんて、ボッコボコの
顔にタダで整形手術したる。」
聞いてないし。それにしても素晴らしくバイオレンスな女の子だなぁ。
言動も行動もどっちも。
ってか、大丈夫なんだろうか?僕より小さいし女の子だし、
何より相手のナンパ男が意外と強かったりするし・・・
そして・・・僕の立場は?
「てめぇみたいなガキンチョがこの俺っちに勝てるとでも?」
「はんっ。アンタみたいなボケナスへたれインキンタムシなんかに負ける気なんか、ミジンコも無いわ。」
そう言うとどちらも相手との間合いをシュタッとバックステップでとり、どっかの格闘技選手みたいに構える。
どうでも良いけど、バイオレンス少女がナンパ男のあだ名を一言言うたびに酷くなってない?
ともかく。二人は暫く睨み合う。
刹那───
「だしゃ───ッ!!」
と、ナンパ野朗が間抜けで雑魚キャラ的な叫びと共にバイオレンス少女に突進していく。
そして射程範囲に入ったのか容赦なく拳を繰り出す。
が、そのバイオレンス少女に直撃する事は無く、
片手で虫を相手にしているかの様に軽々とその拳を止めていた。
「な!!??」
「これで───終わりや♪」
そう言うと、バイオレンス少女は空いた方の拳でナンパ男の顔を一発殴る。
すると、どうだろう?おもしろいくらいにナンパ男は吹き飛び、
さっきまで僕がいた商店街のところまで坂道をゴロゴロと転がっていった。
って!!強っ!!なんか僕、素で解説してたけどハンパネェよ、彼女。
しかもよく見ればこれまた美少女だし。
短めの髪だけど、それがまた彼女に似合っていて可愛らしい。
とてもじゃないけど、大の男を一発殴って吹き飛ばす様な子には到底見えない。
と、僕が熱心に彼女の事を見ていたのか、その視線に気付いた彼女は僕に小走りで寄ってきた。
なんか小動物みたい。
「大丈夫やった?なんやさっきの奴に変な事されて無いかぁ?」
「あ、うん。大丈夫みたい・・・ありがとう、助けてくれて」
やっぱり命とまではいかないけど、恩人なので精一杯の笑顔と言葉を向ける。
「ぅぇ!!??・・・い、い、いやウチは当然の事をしただけやし!!」
何故か顔を赤く染め焦りだす彼女。
「そ、それに今日は誰でも良いから殴りたい気分やったしさ、あはは」
って、おい・・・・それはダメだろ普通に考えて。笑うとこじゃないって。
だとしたら、もしあのナンパ男が居なかったら見境無しに誰か殴ってたって事?
無差別殴り魔と遭遇したんですか、僕は。
なんて身の危険を感じ、警戒してる僕に彼女はさっきより落ち着いたのか安定した感じで
一度大きな溜め息をつき、「そんなことより・・」と前置きをそえて話しかけてきた。
「キミみたいな可愛い子、この近くに住んでたら嫌でも目に入って記憶から放れへん筈やねんけど・・
もしかしてこの辺りに住んでなかったりする?」
「あ、今日コッチに引越して来たから。多分アソコに」
と、坂の一番上に微かに見える建物を指差し僕は答える。確定は無いけど。
あ、ってか彼女まだ僕の事女の子だと思ってるみたい。
「アソコって・・・・もしかして『七福荘』!!??」
「ぇ?あ、うん。そうだと思うけど・・・」
「嘘ぉ!?じゃあじゃあ、キミが新しく引っ越してくる『水咲 瑞樹』ちゃん?」
「水咲瑞樹は確かに僕だけど?」
なんだかテンション高いなぁ〜。
ん?待てよ?今の反応的にもしかして彼女も・・・・
「やっぱ、そうなんやぁ♪ウチ、瀬毘紗月♪ウチもあの七福荘に住んでるねん♪」
ビンゴみたい。って事は何か?
僕は今日から毎日、この無差別殴り魔少女もといセビサツキちゃん(どんな漢字書くんだろ?)とのデンジャラスな生活を
送らないとダメなのか?
僕の人生の終焉も近いみたい(泣
と、僕が人生の儚さを悟っていると
サツキちゃんがそれにしても・・・と話しかけてきた。
「水咲瑞樹なんて名前やから、てっきり男やと思っててんけど・・・
まさか、こんな可愛ぇ女の子やったなんて。」
「あ、うん・・・その事なんだけど僕はおとk──」
「でも!!女の子で良かった♪ウチ、男って大大大大大──嫌いッやねん!
もし水咲瑞樹が男やったら・・十発くらい鉄拳食らわせやな気が済まへん!!」
・・・さっきの人生の終焉も近いって話、
冗談じゃないかも・・・(泣
このまま黙ってた方がいいのかな?・・どうしよ?
でも、同じ屋根の下、いつまでも隠し通せる訳じゃないし・・・・
───よし!
「あ、あのさ、非常に言い難いんだけど・・・実は僕・・・おとk・・」
「あ!!やばぁ!そろそろ『劇場版!超絶変態 ドドンガー 〜カップラーメンの逆襲〜』が始まる時間やん!
こうしちゃいられん!!」
そうまた僕の台詞の途中で急に割り込んできたかと思えば、僕の右手首を強引に掴み
グイッっと引っ張る。あんまり人の話聞くタイプじゃないみたいだな。
どうでもいいけど、なんて番組だよ。それに一体何したらカップラーメンに恨み買う様な真似を・・・
「ほな、超特急でいくで瑞樹ちゃん♪」
と、さっきよりも強引に人の力じゃアリエナイ位のスピードと怪力で僕を引きずり
走り出した。
って!!
「ぇ・・・ち、ちょ!!サ、サツキちゃ・・ちょっと・・まっ・・・・ああああああぁぁぁぁぁ──」
その後、僕は当初の目的地『七福荘』に着いた訳だが・・・・
結局、僕は気を失っており、気がついたのはこの一時間後となる。
宜しければ評価の方、お願いしますw