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そのぜろ:プロローグ・・・かな?byミズキ

僕って言う人間は生まれてこの方、一度も史上最悪の不幸と言うものに出会った事がない、あっぱれな人間だと思う。


それってつまりは、世間一般で言われる平穏で普通の毎日を送っていたって訳で。


それなりの不幸とその分対極の幸福はあったと思うし、兎に角バランスの良い人生を生きてきた。


確かにそんな人生に暇だとか不平不満は無いことも無いのだけど・・・


僕にはそんな運命っていうのを変える超能力やら不思議な力がある訳ではないのでどうしようもない。


それに、普通が一番だと自覚しているのは、何を隠そう僕自身なので


このまま、何事もなく幸福もあり不幸もありの人生を送って最後は温かい布団で静かに死にたいかな?なんて。


以上、僕の夢でした♪終わり。ちゃんちゃん♪


2年2組 水咲(ミズサキ) 瑞樹(ミズキ)



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 


「・・・・で?真面目に書いたのがソレか?」


「もちです♪」


相当ドスの聞いた声で、先生が僕に尋ねてくる。

何をそんなに怒っているのか、分からないけど・・・

そんなのお構い無しに明るく即答する僕。

ふむ、僕ながら素晴らしい作文だ。どっかのコンクールにでも持って行きたいな。

入賞間違いなし♪


っと、自己紹介が遅れました。

僕の名前は水咲(ミズサキ) 瑞樹(ミズキ)です。ぁ、読みにくいなんてのは言わないで。

年は最近17才になったばかりです。あと一年で大人の世界に堂々と仲間入りです。


只今、なんだか分かんないんだけど、突然職員室に呼び出されて・・・

何の用事かと思えば、先生は僕が以前書いた革命的素晴らしい作文を僕に差し出してきた。

で、音読しろと命令してきたので音読した訳なのだけど・・・

何故かご立腹のご様子。という状況である。


「じゃー聞くが、何故に『自然と人間の共存』と言うテーマが僕の夢に変わっているんだ?」


「書きたかったからですか?」


「俺に聞くな!!」


どうやら先生はお疲れの様子。カルシウムが足りないのかなぁ?

今度、牛乳くらい奢ってあげよ。それぐらいの経費はあるし。


「先生。あんまり怒ると血圧が。」


「・・・誰のせいだと、思っているんだ・・・」


「誰だ!!??先生を困らしているのは!!??」


まったくけしからんとどっかのオヤジみたいな台詞を付けくわえて

僕は職員室で叫ぶ。


「・・・もういい。教室に戻れ。」


何故だか先生は泣きそうだ。ここで黙ってハンカチを差し出せば僕も大した大人の仲間入りなんだろうが、

生憎そんなのは持ち合わせていないので、まぁ〜ドンマイ。


仕方ないので・・・無視して教室に帰ることに。

アディオス、先生。





「なんだったんだ?呼び出し。」


そうして、教室に戻ると少し仲の良い友達・・・仮にA君とでも呼ぼうか。

そう、少し仲の良い友達A君が話しかけてきた。


「A君!!??扱いヒドっ!!」


「だって陰キャラだもん♪」


命一杯の笑顔を向けてやった。

A君はショックを受けているものの、何故か頬が赤い。

きもっ!!


「・・・お前って、そんな性格じゃなけりゃ・・・完璧な"美少女"なのにぐじゅじけぶへらっっっっ!!??」


「・・・・殺されたい?♪」


「・・・も、もう半殺ひでふ・・・」


A君の身に何があったかはあえて言うまい。

ヒントは僕が肉体的制裁を与えたってぐらいだ。

ったく、どいつもこいつも。


あ〜〜・・・ちなみに素直で良い子のみんなには一応言っとくけど、僕は正真正銘の男だ。

決して、僕って言う一人称を使っている女の子ではないぞ。そこんとこ宜しく。


でだ。認めたくないが僕って世間の目から見れば、誰もが振り返る美少女らしいのだ。

なんて最悪、なんて不幸。さっきの作文じゃないけど、唯一不幸と呼べる代物かもしれない。

何の得も無いこの姿。さらには声も一般男子より高めだし、身長も・・・・高くない。


変な男共にはストーキングされたりとか、体育の時の男子更衣室での着替えとかをヤバイ視線で見られたりとか、

靴箱には、男のラブレターが入っていたり。

男としての自信喪失。プラス人生辞めたくなる様な事ばっかだ。


一体、誰がこんな姿にしたんだと叫んでみても、やっぱりその犯人は僕の両親だったり。

しかも、その両親は両親で僕を女の子として育てたかったんだとか・・・・

小学校ぐらいまでは服を母さんに買ってきて貰っていたのだが、全部が全部女の子用だった過去もある。

隣に住むのおばさんとかも僕が中学で学ランを着るまで、女の子だと思っていたらしい。

いい迷惑だよ・・・ほんと。


それでも、僕は作文通りまぁ〜それなりにと言っちゃなんだけど、普通の人生を送ってきたつもり。

わざわざ高い金出して整形したいとも思わないしさ。


そんな訳で、これからも普通の人生を送るだろうなぁ〜なんて物思いにふけっていたりしたのだが・・・




・・そんな思いは放課後、カッコ良く言えば疾風の如く見事に消え去った。




今日の授業が全て終わり、教室から次々と生徒が出て行く。

今から部活動に励む者や、何の用事もない奴など様々。

ちなみに僕は後者。居残りする理由がこれっぽっちもないのでそそくさと鞄を持ち、帰る。


家までの道をのんびり歩く。僕は結構こういった歩いている時の景色とかが好きだ。

犬を連れて歩くおばさんやお爺さん、ぺちゃくちゃと駄弁りながら歩く女子高生、

本屋で立ち読みしている人、颯爽(さっそう)と道路を走る自動車、たまに前を通り過ぎる野良猫、手を繋いで楽しそうな親子。


何の変哲も無いそんな景色。いつもと変わらない日常を僕はこの上なく愛している。

いや、愛しているとまで大袈裟じゃないけど、それに近いくらいの感情はあるかな。


なんてナルっぽい事を一人で考えながら、気がつけば僕は家の前に突っ立っていた。


いつも通り、ドアを開け・・・様としたが、生憎(あいにく)鍵が閉まってた。

母さんは買い物だろうか?と、いつも帰宅を出迎えてくれる人物を考えながら、鞄から鍵を取り出し

鍵を開け、家に入る。


「ただいまぁ〜・・・っていないんだっけ」


と、一人で悲しく突っ込みをしながら靴を脱ぎリビングへ向かった。

さっきのナルっぽい思考・・・声に出してなかったら良いけど・・・

もし、出てたなら危ない人だと思われただろうなぁ〜・・・

なんて考えながら、リビングのドアを開けた。

が、そこのは・・・・何もなかった。


「・・・・・はい?」


思わず声が出る。

ホントに何も無いという表現が相応しい状態だった。

つーか、テーブルは?ソファは?テレビは?冷蔵庫や家族分の食器、電子レンジは?

先週買ったばかりに絨毯や母さんお気に入りの壁に掛けていた絵は?

全部無い。どこにもない。何も無い。


「何の冗談?ドッキリですか?どっかで僕が驚く姿を見て笑ってるんでしょ?」


僕はそれが本能であるかの様に家中を走り回った。

洗面所、トイレ、客間、両親の部屋、物置化された部屋。

その全てに何もなかった。

今までと変わらないのは僕の部屋だけだった。


「・・・・まじで?」


うわぁ〜・・・泣きそう、僕。

思わず、棒立ちになる。

やばいってコノ状況。つーか親父や母さんはどうしたんだろう?

何か手がかりとか無いかなぁ〜・・・・大掛かりな泥棒って訳でも無さそうだし。

そう思い、もう一度リビングに戻る。

そしてもう一度リビングをまんべん無く見渡す。


「ん〜・・・・何も無いか・・・ん?」


が、部屋の真ん中に一枚の紙があった。ってかさっき気付けよ僕。

その紙はなんだか手紙みたい・・・


「読むしかないよね。」


折りたたまれていた紙を丁寧に開き、文字に眼を通す。

そこには・・・


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


やっほ♪瑞樹。学校終わったか?愛しのパパですよぉ♪


で、今のその状況。めちゃくちゃ驚いてるだろうと思うけど、


簡単に言えば、父さんが働いていた会社が潰れちゃったのさ。


さらには、俺にゼロが一杯ある借金もできちゃった訳。


その家とそこにあった家具などを全部売ったけど・・・


全然足りねぇや♪マズイね、こりゃ。


そんな訳で俺と母さんはその借金返済の為、ちょっと行って来ます。


暫く時間はかかると思うけど、それまで頑張ってくれたまえ♪


でだ。その暫くの間、瑞樹にはある場所に住んでほしい。


俺の知り合いに頼んだんだが、瑞樹にはソコに住んでもらいたい。


場所はこの紙の裏に書いてるから、大丈夫さ。


ま、そんな訳で転校もしてもらう。あ、もう手続きは済んだから安心しろ♪


瑞樹も瑞樹で大変だと思うが、達者でな♪


ぁ、早くその家から出てかないと怖ぁぁぁいお兄さん達がやってくるから、気をつけるように♪


以上。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「・・・・愛しのパパより♪・・・か。どうでもいいけど、大の大人が書く文章じゃないよなぁ。」


って、そんな事より!!借金!!??なんで会社の大した役柄じゃなかった親父が借金なんか!!

うわぁ〜・・・何これ?今度こそ泣いて良いの?

これこそ・・・


「・・・人生最大の不幸じゃん」


まさかこんなシナリオが用意されていたなんて・・・予想外にもほどがあるって。

いっそこのまま人生を回れ右して逃げ出したいよ・・・

漫画とかじゃないけど、マジでトホホって感じ。


まぁ〜でも兎に角。マイナス思考になっても仕方ないか。

早くしないと怖いお兄さんがやってくるらしいし。

えと・・・・これからどうしよう・・・・あ、住む場所か。


そう思いつき、紙の裏の地図をみる。

そこにはその住所と・・・落書きがあった。

地図などでは無く、落書き。どっかの文明の古代文字を解読するほうが簡単と思われる、地図らしからぬ落書きがそこにはあった。

今時、3歳児ぐらいでもこれ以上は描けるだろうさ。

ま、住所はちゃんとかかれているみたいだから近くまでは行けるか。

そこから人に聞けば大丈夫だろう。

住所には『七福荘(シチフクソウ』と書かれている。

変わった名前だなぁ。アパートかなにかなのだろうけど。


まぁ〜・・そうと決まれば、まずは荷造りからだな。

・・・と。う〜〜ん、なんだか楽しくなってきたのは気のせいだろうか?

コレって僕にしたら大した不幸じゃないのかなぁ?


「それならそれでいいけどさ。」


それから僕は隣のオバサンにガムテープや要らなくなったダンボールなどをたんまりもらい荷造りをし始めた。

心なしか鼻歌を奏でながら・・・

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